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バーベキュー!②

 シュヴァン湖のほとりにあるキャンプ場は、広大な森と隣接していた。そこから目を上に移すと、かすみがかった空に雄大な山が青くそびえ立つ絶景を拝める。

 その峰々はいったいどこまで連なっているのだろう。ジェーンが見渡す限り、山脈は遥か彼方までつづいていた。


「ジェーンちゃんは森の噂って知ってるっスか?」


 そこへレモンジュース片手に、ルークがふらりとやってくる。心なしか剣呑な色を帯びた彼の目にひるみつつ、ジェーンはそばの森をちらっと見やった。


「森って、あの森ですか?」

「そお。一度入ったら出られない迷宮の森っス」


 ぞくりとしたものが肩を震わせる。ルークは声を一段と低くして、獲物に忍び寄る狩人のようににじり寄った。


「森に入るとコンパスは狂い、電子機器は謎の故障を起こす。焦って戻ろうとしても、行けども行けども出口が見えない。そしてふと、気づくんス。『あれ。この木さっきも見たぞ』と。ループから抜け出せない遭難者はやがて気が狂い、最期は――」


 言いながらルークは自分の首を締める仕草をしたかと思うと、ワッ! と大声を出して迫った。


「きゃあ!」


 ジェーンは思わず悲鳴を上げあとずさる。と、足がイスにつまずき体が大きく傾いた。とっさに目をつむったジェーンだが、力強いぬくもりに支えられる。

 ハッと見上げるとディノに抱きとめられていた。


「ディノ……」


 ディノはなにも言わずジェーンをそっと離し、鋭く眼光を飛ばす。その先には、カレンに「やり過ぎ」と頭をはたかれて苦笑うルークがいた。

 迷宮の森の話はウソだと気づき、ジェーンはムッと唇を曲げた。


「ルークまでからかわないでください。ウソつきはディノだけで十分です」

「俺をあいつといっしょにするな」


 いっしょでなければなんだというのか。心外だと言わんばかりに腕組みするディノに、ジェーンはぽかんとした。


「いやループは確かに言い過ぎだけど、コンパスとかが狂うのは本当なんだ」


 そこへダグラスが訂正を入れる。ジェーンは驚いた。どういうことかダグラスに目で問う。


「このへんの土には磁鉄鉱じてっこうが含まれているらしくて。その磁力がコンパスや機械を狂わせるらしい」

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