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初めての遠出③

 そうこうしているうちに、カレンはプルメリアから話を振られ、会話に加わる流れになってしまった。ルークも「そうそう!」と手を叩き、バカをやった仲間を思い出しては笑う。

 プルメリアもカレンもダグラスも、笑っていた。けれど共有できる思い出のないジェーンは、笑えない。時々相づちを打つものの、どこまでいっても遠い場所の知らない人々の他愛ない話だった。

 突然、世界から弾き出されたような寂寞せきばくの思いに駆られる。

 なにもダグラスたちだけじゃない。ジェーンはディノともロンとも、レイジやクリスとも誰とも、昔を懐かしんで笑い合うことができない。

 都合の悪い現実から目を背けるように、まぶたが重くなってきた。心の隅には申し訳なさも残っていたが、自分が起きてても眠っていても大して変わりないように思えた。

 夢の中でダグが待っていてくれたらいいな。

 その言葉のむなしさに気づきながら、ジェーンはまどろみに逃げ込む。


「……起きて……起きて……」


 ゆるやかに揺すられる感触とともに、甘いささやきが耳をくすぐる。

 この声はダグね。

 まぶたを閉じながらジェーンは笑みを浮かべた。もうちょっとだけ眠っているふりをして、彼を困らせたい。


「どんな夢見てるんだ? そんな顔されたら起こしにくいなあ」


 あなたの夢だよ。だからちゃんと迎えにきて。


「どれどれ。なんだ、まぬけ面だな」


 えっ。今の意地悪な声は誰? どうして私とダグの家に他の人がいるの?

 ジェーンは慌てて夢を手放す。意識が浮上するせつな、どこからか男の子の声が響いた。


――ねえ。……はいつお目覚めになりますか?


 ハッと息を飲み、目を起こした先に愛しい紫の瞳があった。びっくりして瞬きするダグに詰め寄り、ジェーンは口早に尋ねる。


「今、今、ダグの他に誰かいましたよね? それに男の子の声もっ」

「えっと、今喋ったのはディノだけど?」


 ダグが指さすほうを見ると、ルームメイトのひとりディノが堂々と立って見下ろしている。その横には荷物を棚から下ろすルークとカレン、プルメリアもいる。

 ジェーンは声にならない悲鳴を上げた。やってしまった。夢を現実と混同するだなんて!

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