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したごころ①

 もしその通りにすれば、アナベラはジェーンどころかロンまで悪く言うのは明白だった。けれど遠慮の言葉が出てこない。包み込むロンのぬくもりが心地よくて手放せない。

 父親という人がいたら、こんな風に寄り添い守ってくれるのだろうか。

 おずおずと手を握り返し深くうなずいたジェーンに、ロンは心底うれしそうに頬をほころばせた。




 今日はこのまま上がっていいとロンに言われ、ジェーンは救護室からまっすぐロッカーに向かった。なんだか鼻がムズムズする、と思っていたら鼻水が出てきた。これも生理のせいかしら。


「生理厄介過ぎる。女の子って大変だなあ」


 自分にあてがわれた六四八番ロッカー前で、ズビズビと鼻水をすすりながら着替えていると後ろから声をかけられた。


「あらあ、倒れたんですってねえ。鼻まですすっちゃって。私がなにかしたかしら?」


 もうその声だけでうんざりする。しかしやつれた顔を見せるのも癪で、ジェーンは笑みを塗り固めて振り返った。そこにいたのは案の定アナベラだ。


「いえ、急に鼻がムズムズしはじめただけです」


 どんな反応を期待していたのか知りたくもないが、ジェーンがそう返したとたんアナベラからにたにた笑みが消えた。「あっそう」と澄ました顔で去っていく。

 ジェーンは首をかしげたが、鼻水がいよいよ垂れそうになって慌ててポケットティッシュに手を伸ばした。


「あれ、ラルフさん? どうしたんですかこんなところで」


 私服に着替えて通路に出ると、ラルフがマスク越しでもそわそわしているとわかる面持ちで立っていた。彼はすぐに駆け寄ってくる。


「お前を待ってたんだよ! お前あのあとだいじょうぶだったか? 具合悪くなってねえか?」

「いた! ジェーンこのばかやろう! そこ動くな!」

「ジェーン! だいじょうぶ!? 倒れたんだって!?」


 そこへレイジとクリスまでやって来て、先にいたラルフを押しのけるようにしてジェーンを囲んだ。

 整備部への連絡はロンが入れてくれていたらしい。心配してくれる先輩たちに、ジェーンはあいまいな笑みを浮かべる。


「もうだいじょうぶですよ。休んだらよくなりました」

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