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ロンの真心①

「ダグ、外にはなにがあるんですか」

「きみを傷つけるものがいっぱい。俺から引き離そうとするやつもいる。外に行っても傷つくだけ。きみが苦しむだけだよ……」

「傷つく……苦しむ……」


 にわかにアナベラに突き飛ばされた衝撃、冷たい罵声、驚く清掃部員たちの視線を思い出し、目をぎゅっと閉じる。ジェーンは母を求める幼子のように、ダグの背中を掻き抱いた。


「いやです。もう傷つきたくないっ。苦しい思いをしたくない……!」

「うん。わかってるよ。だいじょうぶ。全部俺に任せて」


 息も奪うほどきつく締めつけてくる腕に、ジェーンは安堵を覚える。そのままうなじをついばむ甘いしびれに、そっとまぶたを閉じた。




 どこか郷愁を誘うメロディが流れていた。甘い夢からふと意識が浮上して、ジェーンはぼんやりと天井を見つめる。

 これは帰りの音楽だ。ガーデンはまもなく閉園らしい。

 そんな時間まで眠ってしまったのかと思わず壁を見たが、そこに窓はない。あたりを見回すと白いベッドがいくつも並び、午後五時になろうとする壁かけ時計の隣で、スピーカーが音楽を鳴らしている。

 時間経過のわかりにくい地下空間では、窓の代わりにスピーカーを設置して、音楽で昼夜を表現していた。

 どうやらここはロッカー室の並びにある救護室らしい。


「わたし……」


 まだ鈍く痛む頭に手をやり記憶をさかのぼろうとした時、扉の開く音がひかえめに響く。見ると紙袋を手にしたロンがいた。


「ああ、よかった。目が覚めたんだね」

「ロン園長、私どうしてここに……」

「廊下で倒れているところを見つけて運んだんだ。ラルフくんからね、昨夜の報告を受けて昼休みにきみの様子を見にいこうと思ったんだけど」

「それじゃあロン園長が助けてくださったんですか。すみません、ご迷惑をおかけして」


 ロンは丸イスを持ってきてベッド脇に座り、微笑みを浮かべながら首を横に振る。


「いいんだよ。生理の上に昨日の対応で無理がたたったんだろうね。でもそのお陰でガーデンは今日もつづがなく開園できた。きみには感謝しているよ。ありがとう、ジェーンくん」


 慈しみを湛えるロンの感謝に、ジェーンの頬もほころぶ。だがひとつ、耳慣れない単語があって首をひねった。

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