新遊具対決②
「このように幅広い年齢層に遊んでもらえますわ。水の滑り台はもちろん圧縮空気壁で加工済み。濡れることはありません。冬はライトアップして、より撮影を楽しんでもらえるはずです」
歌うようになめらかな提案を披露して、アナベラはレイジに高圧的な笑みを向ける。部長の肩書きを持つだけはあった。彼女の魔力は高く、創造速度も速い。
新遊具においても家族連れという明確な対象者を見据え、シンプルながらも長く愛される展開を考えている。
ジェーンはおそるおそるジャスパーとブレイドの反応をうかがった。
「ガーデンらしい遊具だな」とブレイド。
「ああ。滑り台は雲の城の脇にもあるが、人気の衰えない遊具だ。もうひとつあっても悪くはないだろうし、こっちは写真スポットとして差別化もされてる。最近ポラロイドカメラが流行ってて、映えることが人気なんだろ?」
「それは知らん」
素っ気ないブレイドの返しにもめげず、ジャスパーはロンに同意を求めた。
「うん。そうらしいね。僕も若者の流行を調べたんだ。とにかく色鮮やかで派手とか、かわいいのがいいらしいよ」
のほほんと答えるロンの言葉で、ジェーンはそれが採用の決め手だと知る。アナベラは横暴にふんぞり返っているだけではない。実に狡猾だ。
アナベラの魔力、話術、先を見据える思考力に怯み、ジェーンは張り詰める胸を押さえる。と、そこへ米神を軽く小突かれた。
「ビビんなよ。俺らの案だってすげえだろ。胸張って、お前はふたつ目の部屋を創れ。いつも通りやれば十分だ」
口角をつり上げにっと笑ったレイジに、ジェーンは笑顔を返す。
萎縮した心が、レイジの注いでくれた信頼でふくらんでいく。アナベラに感じた不安と恐れはどんどん小さくなり、吹き渡る風を塞ぐことは叶わない。
「クリスは三つ目の部屋と全体の造形だ。ミスるなよ」
「それはこっちのセリフですよ。足引っ張らないでくださいね、レイジさん」
いつもの軽口、いつもの調子、いつもの三人で、時間を忘れて語り合ってきた感覚がジェーンを包む。半分ほど空いた更地にレイジ、クリス、ジェーンは大きく広がって向き合った。
「いくぞ」




