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芽生えるナニカ②

 だったら、ストーカーまがいの熱狂的ファンかと考えると、言動は真に迫っている。

 まさかそれも演技?


「いやあんな苦しい言い訳して逃げる子がロン園長や医者まで騙せるかよ! 俺と激似のアザつきチョコ好きのやつと間違えてるんだろ? 怖っ! そんなやついたら怖いわ普通に!」


 ひとりツッコミなんかしてみたりして、浴槽に腕を預けて項垂れる。


「でも一番わかんないのは俺だよな」


 突然抱きつかれ、知らないはずのことを言い当てられれば、誰だって薄気味悪く思ってもいいはずだ。なのにダグラスの心は、ジェーンのことをちっとも遠ざけようとはしない。


「むしろなんか、ばあちゃんみたいな安心感があるんだよな。ずっとそこで暮らしてたわけじゃないのに、妙に懐かしくて、ホッとする……」


 まぶたを下ろした暗闇の中に、目をうるませたジェーンの顔が浮かぶ。頼りない外灯に照らされた彼女の白髪は月のように儚く、瞳は星のように揺れていた。


「ばあちゃん家……。そうか。電話してみるか、母さんに」


 実家にまだ小・中学校の卒業アルバムが残っていれば、ジェーンの記憶の正否がわかる。うまくいけば、彼女の本名だって判明するはずだ。

 ひとつの指標を見つけて、ダグラスは力強く湯船から立ち上がった。


「や、やめてください……!」

「逃げるなよ」


 物々しい話し声が聞こえたのは、ダグラスが風呂から上がってキッチンへ向かった時だった。

 ジェーン?

 扉越しに届いた声がジェーンのものに聞こえて、ダグラスは中に踏み込む。すると、ディノにキッチン台に押さえつけられているジェーンの姿が飛び込んできた。


「ディノ、なにやってるんだ」


 ふざけ半分だとしても目に余る光景に、ダグラスは険しく顔をしかめる。しかしディノはちらりと一瞥いちべつをくれただけで、ジェーンを囲い込む手を下ろさない。


「ダグラス……っ、わわ……!」


 ジェーンはすがる目をダグラスに向けたが、それを塞ぐようにディノに密着されて身を縮込ませた。


「おい、やめろ。彼女困ってるだろ」

「あんたには関係ない。部屋に行ってろ」

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