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買い物の本命は④

「そう、ね。ダグのこと好きなのは確かなんじゃないかしら。人としても、男性としても。でもなにか悩んでる。だから今すぐ告白してつき合うって感じではないわ」

「悩んでる? なにをっスか?」


 カレンは静かに首を横に振った。

 ダグラスとプルメリアは互いに気があるが、告白する段階までには至っていない。それを知ったジェーンの胸には、安堵よりも息の詰まるような苦しさが雪崩れ込んだ。

 両片想いなら私に出る幕はない?

 ダグラスはもう手を伸ばしてはいけない人?

 学友だったカレンとルークだって、ダグラスとプルメリアを応援したいに違いない。


「……私は、ジェーンを応援するわ」

「えっ」

「いいんじゃない。ダグとプルメリアはまだつき合ってないんだし」


 カレンの思わぬ言葉が聞こえた時、信号が青に変わった。一斉に動き出す人々に合わせ、カレンは歩き出してしまう。

 反応が遅れたジェーンも、押されるようにしてあとを追う。あっと思った時にはカレンとの間にどんどん人が入ってきて、彼女の姿が隠れそうになった。

 慌てて駆けるも、交差点を縦横無尽に渡る人々の波に流される。荷物が重くて思うように進めない。

 どっちに行けばいいんだっけ?

 人波越しに信号機が明滅をはじめる。


「こっち」


 その時、力強く手を引かれた。


「ディノ!」


 黒髪を揺らし、淡々と歩く見慣れた長身にジェーンは安堵の息をつく。ディノはまるで人波の流れが読めるかのように淀みなく、ほとんどまっすぐに交差点を渡っていく。


「ディノ?」


 けれど、彼の歩調は駆け足でなければついていけないほど速かった。呼びかけても振り返ってくれず、どこかピリリとした空気をまとっている。

 怒ってる?


――気に入らないな。あんたが俺以外の男に興味を持つのは。


 にわかに、ソファでからかわれた言葉がよみがえった。あんなウソ、真に受けるほうがどうかしている。ジェーンはすぐに頭を振って思考を散らす。

 ルークの言う通り、ディノは騙されやすい私をおもしろがってるだけだ。


「あれ。カレンとルークは……」


 赤信号になる寸前でなんとか渡りきったジェーンは、そこで待っているはずのふたりがいないことに気づく。

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