買い物の本命は③
だが浮かれた心は、ルークの正確無比な狙撃にずばりと射抜かれた。図書館や銀行よりお菓子の材料が本命だったなんて、バレてはいけない。
全力の笑みで誤魔化す。
「そそそそうなんですよ! 自分用に? なんか急に作りたくなりまして……!」
ところが、ルークの口角はみるみるにんまりと持ち上がっていった。
「なるほどねえ。ダグ先輩にあげるためのクッ――」
「わああああ!? ダメッ、ダメですルーク! それは内緒です!」
「え、なに、ダグにクッキー? いつの間にそんな仲になってたの」
慌ててルークの口を押さえた努力もむなしく、下段からカレンがひょこりと顔を出して食いついた。しっかり聞かれている。
まさかと思い後方のディノを見上げると、若葉の目がまっすぐジェーンに注がれていた。
「ねえ、それってつまりダグが好きってこと?」
百貨店を出て、スクランブル交差点の赤信号に捕まったジェーンは、カレンからすかざす質問にあった。
好きかと聞かれただけで熱くなる顔ではウソもつけない。素直にうなずく。
「そうなのね。ね、どこを好きになったのか聞いてもいい?」
ひかえめな問いかけだったが、カレンの声は興奮を隠しきれていない。
まさかイチャイチャしてる記憶を夢で見たからですとは言えず、ジェーンは目をさ迷わせる。
意識はジェーンのために歌とダンスを披露してくれたあの日にさかのぼる。頬をなでた手の感触を思い出すだけで、トクリと胸が鳴る。
「ダグラスがいると安心するんです。それに私のこと気にかけてくれて、やさしくて……。あと、王様役がかっこいいです……!」
「あー。罪な男っスねえ、ダグ先輩」
心なしか引き気味のルークに、ジェーンは自分の高揚っぷりを自覚して口を押さえる。だが、人に話してますます加速するダグラスへの想いは止められない。
たとえ彼が、
「でもダグってプルメリアのこと……」
カレンの言う通り他の女性を見ていたとしても。
「それなんスけど、プルメリアはどう思ってるんスか?」
ルークの質問にジェーンは心臓をわし掴みにされる思いがしたが、好機でもあった。自分の足を見つめながら耳をそば立て、固唾を飲む。




