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第七話 デート



 はたから見れば、きっと俺たちは初々しい男女のデートに見えているだろう。


 近すぎず、遠すぎずの距離で歩く。手を伸ばせば、すぐそこにメラニーの手がある絶妙な距離。


 とりあえず、メラニーは引っ越してきたばかりとのことなので、日用品や雑貨を見にいく事になり、近くの大きめなショッピング施設に入ることにした。

 ここなら必要なものは全部あるだろうし、映画館や、ゲームセンター。食事ができるレストランも入っている。


 そわそわした落ち着かない気持ちを抑えて、俺は普段通りに振る舞う。



「えっと・・・どこから見ていこっか?何がいるの?」



 メラニーはというと、俺の問いかけが聞こえなかったのか、口をポカンと開けてキョロキョロと辺りを見回していた。


「メラニー?」


 はっ!とやっと俺の声が届き、何?と聞き返してきたので、やっぱり何も聞こえていなかったらしい。



「もしかして、こういうところ初めて?」


「あ、あぁ。前に住んでた所は、何もない田舎だったから。こんなに沢山のお店が詰まっている施設は見たことがなくて・・・・えっと、いる物リスト書いてきたの」


スッと取り出したメモを受け取り見ると、そこには洗剤や食器。他にも衣類などが書かれていた。


「そっか!じゃぁ順番に見て回ろうか」



♢♦︎



 今回の買い物で、少しメラニーのことがわかった気がする。


 メラニーは、可愛いものが好きだ。


 可愛いものを見つけると、それに吸い寄せられるように走っていく。

 


「レオ!見てみて!」


 ホワイトドラゴンの大きなぬいぐるみを両手を大きく広げ抱き上げるメラニー。


「ぷっ・・・ふふふはははは」


「ふふふ」



 冷静でクールな印象なのに、今は普段からはあまり想像できない普通の女の子らしくはしゃぐ姿が可愛いと思う。 



 ゲームセンターに行って、クレーンゲームをしたり、映画も観た。


 こんなに遊んだのは久しぶりで、楽しい時間があっという間に過ぎていく。


 メラニーも俺も両腕には沢山の紙袋をぶら下げ、デートは終盤を迎えていた。



「最後にここみてもいい?」


「まだ買うのか・・・」


「だって、部屋何もないんだから仕方ないじゃない」



 そういって、食器や雑貨が売られている店に入ることにしたが、俺には一つ疑問に思うことが心に引っかかっている。


 メラニーが選んでカゴに入れている日用品が、全て一人分だったからだ。

 

 ここだけじゃない。


 他の店でも、選ぶもの全てメラニーが使うだろうという物ばかり。

 引っ越してきたと言っていたが・・・

  


「・・・メラニーってもしかして一人暮らし?」

 

 俺の質問は当たっていたようだった。メラニーは少し寂しそうな表情をして微笑む。


「私、親いないから」


「え・・・」


「別にいいの。前世も似たようなものだったし」


 

 話が少し長くなるからと、俺たちは店を出て近くのベンチに腰掛けた。

 少しの間沈黙が流れると、小さく息を吐き、メラニーが話し出す。


「この時代に生まれた時私の髪は黒かったらしいの。メラニーはその由来・・・でも1歳になる頃には今の髪色に変色していったみたいで、それを気持ち悪がった両親はお金だけ私に渡してコミュニケーションは取らなくなった。・・・家族なのは形だけで、私に家族なんて居なかったわ」


「それで、一人で引っ越してきたのか」


「うん。あの家にいても腐るだけだったし、もっと都会に行けばレオのことも見つかると思って・・・本当に会えるなんて驚いたけど」


「俺もびっくりしたよ。突然その・・・・・・・・・・」


 脳裏に、メラニーがキスしてきた場面が浮かび、顔が一気に熱くなった。


「どうしたの?」とメラニーが覗き込む。だ、だだ、だめ!!今は見るな!と俺は必死に顔を隠すと、何とか話題を変えるためにもう一つ気になることを聞いてみた。



「前世も似たようなものって言ってたのは?」



 俺には前世の記憶がない。

 だから当然メラニーの前世もどんな子だったのか覚えていない。


 まず、精霊術師とか言われても、全然パッとしない。

 本当にそんな人いたの?おとぎ話の中のことじゃないの?というレベルだ。

 だから、その辺りも聞いておきたかった。


「前世の話は、少し長くなるかもしれない・・・時間大丈夫?」


「俺は平気。いいよ・・・教えて」


「・・・・わかったわ」



 一息おき、話を続けるメラニーの表情をいろんな感情が混じった一言では言い表せない・・・そんな横顔をしていた。




「私の両親。母親は光精霊の元の住民で、父親が闇精霊側だった。私がまだお腹の中にいる時に、父は『反逆者、裏切り者』そう言われ罰を受けて亡くなり、私は光精霊の元の村で生まれ育ったわ。両方の血が混じった私はみんなから穢れた血と呼ばれ、迫害され、母は次第に弱って自殺したの。・・・・・それでも私は光精霊の契約適合者だったから、殺されはしなかった」


「そんな・・・・」


「生殺しよね。いっそ私も殺してくれたらって思った。でも私に希望をくれた光をくれた人が現れたの・・・・それが前世のレオだった」




♢♦︎



「お前、怪我してるの?こっち来れるか?」



 山の傾斜で足を滑らせ、動けなくなっていた私に手を差し伸べてくれたのは、ショートの黒髪に左側に赤メッシュが入った金眼の少年だった。



「手を伸ばせ!」


 差し伸べられた、彼の右手を掴むと勢いよく引き上げられ元の道に戻ることができたが。

 すぐに立ちあがろうとした時、やはり足を思い切り挫いたみたいで激痛が走り、その場に座り込んでしまった。


「足見せて」


 私のズボンの裾を捲り、怪我したであろう箇所に懐から出した薬草を塗りつける彼の顔を、私は不思議に眺めていた。

 だって、穢れている私にこんなにも親切に接してくれる人なんて、今までいなかったから。


 じっと見つめていたので、当然視線を感じた彼は



「何でこんな境界線付近を彷徨いてたんだ?」


 と尋ねた。


「お前、その服装からして光の民だろ。こんなところ彷徨いてたらこっちの奴らに殺されてしまうぞ」



 彼のいう通り。私は白い衣に身を包み、彼は黒い衣を身につけている。

 なので、私と彼は敵同士・・・ということになるし、ここはその土地の境だ。


 戦争間近のお互いの状況で、きっかけさえあれば簡単に戦いが始まる・・・そんな不安定な状態だった。



 処置が終わり、めくった裾を元に戻すと「ほい、終わり!」と笑顔を向ける。



「・・・・・どうして、敵である私を助けたの?あのまま放っておいたら良かったのに。私を助けても、あなたに何のメリットもない」



 ボロボロの私はきっと、見た目も酷いものだろう。白金の髪はボサボサに伸びて、前髪は顔を隠してしまっている。


 彼は私の前髪に手を伸ばし、ゆっくりと耳にかけると。私の顔は太陽に照らされ、光が瞳に飛び込んでくると思わず眩しくて目を細くした。



「可愛い」


「──────・・・・・え?」



 聞き間違いだろうか・・・?


 今、可愛いって言った??


 いやいや、そんなはずない。だってこんな手入れもできていないのにそんな・・・



「こんなに可愛いのに、髪で隠しちゃうなんて勿体ないよ。それと・・・メリットがないって言ったっけ?」


「・・・??う、うん」


「じゃぁ僕からのお願い聞いてよ」


「お願い・・・?」



 彼は両手で私の手を握り、優しい笑顔をして



「僕の・・・友達になってください」



 と、そう言った。






 


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