接続
「さあ、いくぞ」
「はい」
緊張の一瞬。金属でできた義手・金属鎧を腕につける時が来た。アルフレッドが持ってきたそれは、ゼノアの残っている右腕よりも一回り大きかった。指の関節の部分は鋭利な角度がついている。実際の腕とはもちろん異なり、アーティファクトっぽさはあるが、人体の形に似ているように作られており、指の本数などの構成も人体と同じで、非常に精巧に作られている。
この金属鎧のすごいところはただの義手であるということ以上に、魔力を使って神経と接続できることだ。
神経を繋ぐ瞬間は非常に嫌な感覚が起こる。魔物を倒した時に体から出てくる魔石を鉄に溶かし込み、俺の体を流れている魔力の回路からメタルメイルにも通るようにし、自分の意思で動かせるように脳からの信号を伝わるように接続する。この世界では普通の脳の信号伝達も魔力が使われている特別な神経系をしているらしい。だから魔法を使うときに発する魔力と神経を通っている信号は同一のエネルギーにより発せられる。
神経をつなぐ瞬間は強い痛みを生じるらしい。だから、ゼノアは緊張していた。
「いくぞ」
ゴクリ。息を呑み覚悟を決める。
アルフレッドがゼノアの左肩の肩口に金属鎧を近づけ、接触させる。
バチッ! 次の瞬間、ゼノアの全身に雷が落ちたような衝撃を受けた。
「ぐおおおおおおおお!」
病院のベッドの上でゼノアがあまりの痛みに叫び声をあげ、暴れ回ろうとするのをアルフレッドと奥さん、娘も一緒に押さえる。
「がんばって、ゼノア!」
カリーナもゼノアの右腕を押さえながら、応援の声をかける。
「……ハァ……ハァ……ハァ……」
5分後、やっと落ち着き、正気を取り戻した。
「大丈夫? 結構悶えてたけど」
カリーナが心配し、顔を覗き込む。
「……ハァ……ああ。なんとか耐えた……ハァ…ハァ……神経をつなぐってこんなに痛いんですね……ハァ……」
ゼノアは肩で息をしながら、ゆっくりと答えた。
「うむ。この痛みは大人でもなかなか耐えられん人が多いよ。その中では君はすごく頑張った方だ。歴戦をくぐり抜けてきた冒険者でもこの痛みに耐えられなくて、外してくれってお願いする人もいる。それでも君は耐え切ってみせた。とても優秀だよ」
ゼノアが想像を絶する痛みを我慢している間にかいた汗を拭き取りながら、励ますアルフレッド。
「腕が欲しいという、相当強い覚悟を感じたよ。相当冒険者になりたい気持ちが強いんだな。これなら今後危険なクエストに行っても、立ち向かえるはずだ」
今まで何百人もの冒険者を見てきたアルフレッドがそこまで言うのなら、とゼノアも少し安堵する。
「ありがとう、アルフレッドさん」