第0章 プロローグ
俺の名前は高井理。日本に住む30歳男だ。
30までずっと童貞だったが、会社の同僚の美人の人とお付き合いすることになり、無事童貞も卒業した。
結婚しようとも言っており、プロポーズもし、同棲を始めたところ。
そんなウキウキな生活が待っていると思っていたところ、彼女が重篤な病にかかった。
原因不明の高熱が出て、ほとんど起きられない。
新種のウイルスかと思われ、国立病院に運ばれ、即入院となった。
その担当医がマッドサイエンティストで、新種のウイルスとわかると、いろんな薬を試してみたくなった。何より、新種のウイルスなんて珍しいので、貴重な実験体として彼女を使うことにした。本来であれば、その人の腕であれば、すぐに治せる可能性が日本の中で一番高かったため、預けたのだが、サイコパスなスイッチが入ってしまい、わざと治さなかった。
そのせいで彼女は死んだ。
仕事にも行けなくなり、鬱病になり、絶望に浸る主人公。そんな時、ニュースで担当医が逮捕されているのを見る。理由は、患者を実験体と称し、わざとなおさず、病状を悪化させたことによる、悪質な殺人未遂。それを悪びれもせず、男はニュースに映っている画面に向かって、主人公の悪口を言い放つ。
「あの男はバカだなあ!どうせ治るわけなかったんだ!だったら諦めていろんな実験をして薬の可能性を考えた方がいいじゃないか!あの女は貴重なサンプルだったのだよ!」
その言葉をニュースで聞いてしまった主人公は、「この世界はなんて理不尽で、残酷なんだ。女神のような人が現れたと思ったら、その人が病にかかり、人に殺されたようなもの。俺の人生は小さい頃からずっとそうだった。小学生の頃、いじめられていた時だって、ご褒美がもらえる、仲良くしてもらえると思った矢先に裏切られて、騙されてボコボコにされた。だからもう人は信じないようになっていた。どうせ裏切られるから。でも今回ばかりは違うと信じたかった。女神のような彼女の笑顔を一生守りたかった。でもそれも叶わなかった。もう俺には何もない。この先もう何もいいことはない。この命を自分の手で終わらせよう」
そう思い、ビルの屋上から飛び降り自殺した。
一刻も早くこの残酷な世界からおさらばしたかった。
ビルの7階から飛び降りている間の時間は永遠に感じた。その間にいろんな走馬灯を見た。
願わくば、次の人生は彼女と平和に暮らしたい。
よくある異世界アニメみたいなファンタジーな世界で無双する生活なんていうのがいいな。人間関係のストレスもなく、好きに自由に生きられる世界。
もう大切な人を失わないで済む、力が欲しい。
そう考えている間に、地面が猛スピードで近づいてきた。
ゆっくりと目を閉じ、人生を終えた。