コンテンツ6―ブロントとの出会い
翌日……。
ルイスは、今日はシューロン図書館に寄って宇宙船に関しての書籍を探しに来ていた。
年代物のデスクにいる司書に声を掛ける。
「あの、本の閲覧をしたいのですが……。」
「IDカードをこちらにかざして下さい。……えー。タイラー様ですね。この入室許可証をお持ちになり、入口に立てば自動で開きます。出る時も同じ様にして出て下さい。入室許可証をお持ちのままでは外に出られません。必ずお返し下さい。」
完全事務的長話にルイスは呆れた。あまり面倒な事が嫌いで短気である。良く聞いていられたものだ。
「宇宙船、宇宙船……えーと、全く何処の棚かも分からない。」
すると横から声を掛けられた。
「どの本をお探しです?ここはノアーナで1番の蔵書の図書館です。簡単に目当ての本が見つかる事は有りませんから。さ、何をお探しで?」
ノアーナ星RJ計画管理部のスーツを着た男性だった。
「あ、宇宙船に関する本と、その設計や構造の本を……。」
「ほぅ。女性にしては珍しいですね。メカニックをされてるとかですか?」
「い、いえ。これから少し勉強したくて。」
「そうでしたか。専門書は3列目から奥。宇宙船関係となると、確か3列目の右から幾つかの棚が全部そうですよ。」
「詳しいんですね?」
「なぁに。ここの蔵書のほとんどは読んでいますから。とは言っても内容の記憶は無いですがね。」
「ありがとう。助かりました。」言いながら手前から3列目の1番右の棚に向かったルイス。
これがルイスとその男性、ブロント=カーレイが初めて出会う瞬間だった。
棚を見て歩くルイス、何番目の棚まで見るつもりだろう。既に何冊か手にしている。
(あまり借りすぎても読み切れないから、この半分にしよっと。ガルシアからも本を勧められるかも知れないもの。)
厚い3冊を抱えて出てきて、司書に貸出を頼んだ。
「もう一度IDカードを提示して下さい。……はい、3冊の貸出ですね。期限は1冊5日、3冊なので15日後が返却期限になります。」
そう言うと司書は図書館の専用のバッグに入れて手渡してくれた。基本的に、ノアーナ星の書籍のサイズは大きく厚い。ルイスが選んだのは、輪を掛けて厚く重い3冊で、かなりの荷物になる。
(時間が有ればここで読んでも良いんだけど、ビブレスに行くし、重いけど仕方ないわね)
「重そうですね。外まで持ちましょうか?」
中で会ったブロント=カーレイだった。
「これはかなり読み応えがありそうだ。持ちましょう。で、どこまで運びます?」
「あ、駐機場のフローターです。」
図書館のバッグはそのままフローターまで運んでもらった。
「ありがとうございました。助かりました。」
「いえ、礼には及びません。お気を付けて。」
ブロントはルイスのフローターが飛び立つのを見送った。
(マ、マニュアル操縦⁉︎ シューロンでは将来取り締まりの話が有るのを知らないのか⁉︎……にしても女性なのに珍しいな……。しかし、探している本といい、それもまた珍しい。フローターで来るとは、この辺の女性では無さそうだ。)
多分ブロントの一目惚れ、とやらだろう。気になって気になってしょうがない様子だった。
ビブレスに着いたフローターのルイスは、ビブレスの同じ駐機場に着陸する。
(さて、今日はどうしようかしら。先ず失礼の無い様にドアモニターから。どうせAnnが出るんでしょうけど。結果は前と同じ。それからまた入口探しね。)
また歩きながら考えているルイスであった。