コンテンツ45―スピードコンテストにエントリー
工房から出て来たジェイド。
「ロワート。まもなくフローターが到着します。少し建物寄りでお待ちください。」
「そうか。やはり早くにやって来たな。……ジェイド、私はドックに入っている。お客さん達の案内を頼むよ。」
「かしこまりました、ロワート。」
しばらくするとガルシアのフローターが到着した。
2人とAnn達が出てくる。
「おはようございます。お待ちしてました。さぁ、皆さんドックへご案内します。」
「おはようジェイド。今日は皆んな一緒よ。」
「おはようジェイド。グロビアさん達はドックなの?」
「はい。お待ちかねですよルイス様、ガルシア様。」
ドックに入ると照明が小さなメインルームだけに点いていた。
マットがシートを勧め、
「おはようルイス、ガルシア。おはようジック、ソディナ。その後調子はどうだい?」
ジックとソディナは声を揃えて、
「万全の調子です。異常有りません。」
「今後のメンテナンスはマットに任せるといい。ジックとソディナを1番知っているメカニックだからな。さぁ、コーヒーでも飲みながら少し話そう。」
ルイスは奥のドックに佇むケイドが気になって仕方がない。
「ルイス。ケイドを紹介する前に、お楽しみの話を。」
「ルイスは早くケイドの所に行きたそうね。」
「まぁ聞いてくれ。ノアーナ星では、年に数回、フローターや宇宙船の色々なコンテストが有る。ケイドには、近く始まるスピードコンテストにエントリーしてもらおうと思ってたんだが、いかがかね?」
「ルイス、あなたの得意分野じゃない。エントリーするべきよ。私もサポートで同乗したいわ。」
「うん、それも名案だ。もちろんAnn達の同乗も許可されている。オートとマニュアルのエントリーグループと、Annによるオート操縦のコンテストも有る。今回はAnnのではなく、君達のスピードコンテストだ。」
「あら、ジックはマニュアル操縦も可能です。Annのマニュアル操縦のコンテストは無いの?」
「Annのマニュアル操縦のコンテストは今まで無いんだ。俺のジェイドもそうだが、オート操縦のみ。今後は規制が厳しくなってくるからってのが主催者の理由。」
「主催者って?個人なんですか?」
「いや、ビブレスとゴレイナ、バドラードのメカニックの組合だよ。ガルシアは今までミクラットに乗ってて知らなかったのかい?」
「私は航行に関しては興味無かったからなぁ……。マニュアルでも操縦は出来るけど、ルイス程じゃないしさ。」
「エントリーで良いのかな?ルイス、ガルシア。Annはジックとソディナ。……私が組合に手続きしてしまうがどうかな?」
「ガルシア、いいの?」
「ケイドにしばらく乗りっぱなしで訓練ねルイス。」
「ありがとうガルシア。ジックとソディナも一緒ならエントリーするわ。……お願いしますグロビアさん。」
「成績によっては賞金が出る。それに私とマットの名にも箔が付く。楽しみにしますよ。……さて、ケイドを紹介するとしよう。マット、説明を頼むよ。」
「はい、ロワートさん。……ドックの照明ON!」
ドックの照明が明るくケイドを照らす。ウロムナ金属の青黒い機体が浮かんだ。
ルイスは声に出せない程の感激ぶり。走ってケイドに駆け寄った。後からマットとガルシア、Ann達が集まった。
「ルイス。中へ入って、君の音声認識の登録を。」
言うとマットはハッチから入るよう勧めた。
「ガルシアには、サポートとしての音声認識も可能だから、一緒に入ろう。」
メインルームでは所有者ルイスの音声認識と、サポートのガルシアの音声認識を済ませた。
「ジックー、ソディナー。中へおいで。君達にはデータの同期を頼むよ。」
「装備は全て最新の物。睡眠カプセルと洗浄カプセルを2台。これはルイスだけじゃなくガルシアも同乗する場合を想定した。今回はロワートさんの設計がほとんどだけど、何より凄いのは、姿勢制御にフライホイールを同期させている事なんだ。これは飛んでみれば分かる。ルイスの希望通り、コクピットは左右同じものを設置して、メインとサブの切り替えが可能。音声認識で様々な操作に対応している。」
マットが事細かに説明している。
「俺とロワートさんで試運転をしたところ、スピードはかなりの宇宙船になった。それでコンテストにエントリーを考えたんだと思う。ロワートさんにしては滅多にやらない行動なんだ。よっぽどケイドの完成度が高いんだと思う。」
ハッチから出て来た皆んなだったが、ルイスがメインルームのグロビア氏の所に駆けて行った。
「グロビアさん。素晴らしい宇宙船を作って頂き感謝します。それでこの宇宙船の代金を聞かせてください。」
「分かった。今後のメンテナンスはマットに任せている。その報酬は別だぞ。で、……」
グロビア氏は金額をモニターに表示した。
「ルイス。ガルシアと鉱石採掘してくれたおかげで発注が安価で済んだ。君達のパーツ調達の手伝いも有った。ここの金額で了解してもらう。サインを頼むよルイス。」
モニターをコツコツと指差すグロビア氏。
グロビア氏から提示された金額は破格であり、ルイスは確認し直した。
「グロビアさん。この報酬額では豪華なフローター程度です。もう一度確認を。」
「だからそこにサインをもらえれば決済が済む。それだけだよ。マットへの報酬も加味した。彼も合意の上だよルイス。あとはコンテストで上位入賞でもしてくれれば私らの株が上がるってものだ。楽しみにしているよ。」
「あ、ありがとうございます、グロビアさん。」
ルイスはそのままモニターにサインすると、決済完了の表示。
「コンテストエントリーは今日中に済ませる。日程やルールは明日にでもデータがケイドに送信されるよ。早く慣れる事だ。……さぁ、飛んでおいでルイス。」
ルイスとガルシアはワイワイ話しながらソディナを連れてハッチに入って行く。ジックは外に駐機のフローターでガルシア邸まで行く事になった。




