コンテンツ18―2人の理想のAnn
「マット。ただいま戻りました。リストのパーツは全て調達出来ました。しかも、今回はガルシア様のご友人のおかげで安価で揃いました。」
「ミクラットのパーツ調達の時の友人の情報を聞いて出掛けたの。当てになる仲間だから大丈夫。変な品物は無いはずよ。」
「へぇ。ガルシアにはビブレスの情報ルートが有ったんだ。どうりで詳しい訳だ。ありがとう、ルイス、ガルシア。ジェイドは脇で待機モードね。」
「待機モード?Annはいつも動いてるんでしょ?」
「いや、用が無ければ待機モードで側に居てもらう。消費エネルギーの節約の為。あとは待機中にデータ整理をしているよ。それから、ジェイドと会ってからの君達の行動データも、ジェイドのフィルターに合わせてメモリーしていると思うよ。」
まさかと言わんばかりの表情で、顔を見合わせるルイスとガルシア。
「色々と余計なメモリーされてそうねガルシア。」
「ええ、仲良くし過ぎるのも良く無いわルイス。」
「何を2人共、眉間にシワを寄せて考えているんだい?」
今日は珍しく、グロビア氏がコーヒーと紅茶を持ってきた。
「ルイスさんガルシアさん、シートに掛けてお茶でも飲みながら少し話そうかね。マットのコーヒーはこっちのテーブルに置いておくよ。」
「すみません、ロワートさん。自分がやる仕事なのに……。」
「今の仕事の依頼は君がメインだからね。で、Annのカスタマイズの設計はどうかね?」
「はい、あとは現物との取り合い部分の採寸をして終わりです。今はセンサー系統を色々考えてるところです。」
「マット、仕上げた図面を見せてみなさい。」
何やらピリピリした空気感に、ルイスとガルシアは顔を見合わせている。
「マット、この図面で一旦は良しとしよう。あとはAnnの状態と相談しなければな。……ルイスさんガルシアさん……。」
「グロビアさん、ルイスとガルシアと呼んでください。」
「では。ルイス、ガルシア。2人のAnnを明日ここへ持ってきてくださいね。起動して主の登録を済ませたら、フィルターを緩めてもらわなければなりません。」
「分かりました。明日早い時間に参ります。」
「マット。多分設計の手直しが有る。取り合い部分の採寸では済まないから、用意はしておく事。」
「はい、データ整理をしておきます。ロワートさん。」
「マット、私達はAnnをここに運ぶだけで良いかしら?」
「インゴットをもらってきたし、パーツの調達に出掛けてくれた。もう十分だよ。直ぐにでも仕上げられる準備が出来てる。あとは時間を掛けないで作業を終えるよ。」
「それでは私達はこれで戻ります。ルイス、Annの積み込みを明るい内に済ませなきゃ。帰りましょう。」
「では、また明日。グロビアさん、お茶ご馳走さま。」
2人はフローターに乗り込むと上昇、飛び立った。
「ところでマット。ルイスの宇宙船だが、どんな依頼なんだい?」
「はい。ルイスはAnnに操縦のサポートをさせたいらしく、コクピットに2台同じユニットを組んで、操縦の交代や操作の分担が出来るパネルが良いそうです。形はこだわってませんでした。なので、一般的な、コクピット、メインルーム、貨物室やカプセル、洗浄カプセル。推進機関は2つの推進機関として、出来る限り軽量化する。といった感じで、イメージは有りますが、設計図に起こせるかどうかまだ自信無いです。」
「やはり操作系はマニュアルメインのポジションが希望なのか。マット、今回はフライホイールの姿勢制御を使う。マニュアルもオートも安定した航行が出来る。」
「ええ、ルイスはマニュアルとオートの両方が目的で、Annに操縦させる事も考えている様です。なのでAnnのカスタマイズにはメモリーもフルで、アームも4本を考えています。ガルシアのAnnはアームは2本、物を分析するトレイが欲しいそうで、センサーの設置が大変です。」
「2人共、それぞれの個性なのだな。」
「ガルシアの両親は研究者で、天文学等でサポート出来るAnnが良い様です。宇宙に出て遠い星を観測するのが好きなのだとか。」
「どちらもアームのセンサーだけは手を抜かない様に。微妙な操作に反応出来るアームが必要だ。」
設計図をマットに返すと、
「マット。今の時点での設計は満点だ。だがな、実際とは全然違うのだと言う事がこれから分かる。良い経験になる。……して、私はどうすれば良いかな?宇宙船の原案に取り掛かるかね?」
「ロワートさん……。本当に宇宙船の依頼、受けていいんですね?」
「ちょうど今の私は、手が空いてるだけだ。私は助手として手伝おう。設計ミスは命に関わる。分からない事が有ったら直ぐ言いなさい。宇宙船の事はまだ彼女達には黙っておいてくれ。時間が掛かる仕事だ。設計図が出来た辺りで話すと良い。」
「ありがとうございます、ロワートさん。」




