08
side 天宮 琴音
「天宮さん」
「はい」
私の友達である天城日菜さんの彼氏さんの鷹宮優斗さんが話かけてきました。
「あんまり気にしなくていいよ」
彼は神崎さんの態度のことを言っているのでしょう。
「そうそう、叶翔はいつもあんな感じだから気にする必要は無いよ」
天城さんも私を気づかってくれます。
「っていうか、日菜も勝手に叶翔のこと教えたらダメだろ」
「……だって、天宮さんなら大丈夫かもしれないって思ったんだもん」
「でも叶翔だけはしっかり許可が取れなくても、せめて話だけはしておかないと」
「……ごめんなさい」
落ち込んでしまった天城さんを鷹宮さんが優しく声をかけながら頭を撫でています。
それが嬉しかったのか天城さんの顔が笑顔になりました。
とてもいい関係だと思います。
ここで、私は気になっていたことを聞いてみます。
「……あの」
「どうしたの」
「どうして神崎さんだけは話を通しておかないといけないんでしょうか?」
私の質問に二人は考え込んでしまいました。そしてしばらくして鷹宮さんが答えてくれました。
「それはまだ話せないかな」
「どうしてですか?」
「それは二人の関係がまだ浅すぎるからだよ」
「?」
私は鷹宮さんの言っている意味がわかりません。
私の表情から感じ取ったのか鷹宮さんが教えてくれます。
「少なくとも叶翔は天宮さんに心をほんの少しも開いてないんだよ」
わかってはいましたが、人から言われるとかなりダメージがありますね。
「どうして私には心を開いてくれないんでしょうか?」
私はどうすればいいのか聞きたかったのですが返ってきた答えが予想外のものでした。
「叶翔は天宮さんだけじゃなくて、この学校だと俺が知ってるなかじゃ俺と日菜以外には心を全く開いてないよ」
「それはどうしてですか?」
「……それは俺が言っていいことじゃないよ。もし知りたいなら頑張って叶翔から聞いてくれ」
「……わかりました」
私はとても難しそうですが頑張りたいと思います。
「最後にひとつアドバイスをしとくよ。まずひとつは強引に聞き出そうとせずに少しづつ距離を縮めていくように。2つ目は叶翔の昔のことと、家族などのことを聞かないこと。最低限このことだけは守って欲しい」
「1つ目は分かりますけど、2つ目はどうしてダメなんですか?」
「理由は言えないけどこれを無理に聞き出そうとすると、良くて二度と心を開かない、最悪一生避けられるようになる」
「ッ!!」
「俺たちは付き合いが長いから大丈夫だけど天宮さんは叶翔から話してくれるまでは待ったほうがいいよ」
「わかりました」
「じゃ、俺たちは帰るけど相談したいことがあったらまた言ってね」
「今日はありがとうございました」
「じゃあね」
「バイバイ」
そう言って二人は屋上から出ていきました。
「神崎さんはどれだけの闇を抱えているんでしょうか」
その彼女の声は誰にも届くことはない。