手紙を預かった侍女は
侍女と少し姫様
あと、この国の立地を
手紙を受け取った侍女は、騎士と別れ姫様の部屋へ向かう。
朝は早く、王族の居室は清閑としている。
少々早いが、今朝は忙しくなる。
侍女は普段よりも早く、朝の支度を始める。
それにしてもと、侍女は思う
――ロドアス様が、詩歌や文物に明るいのは聞いていましたが
こうして書を認めているのは初めて見ますね
この王国、東側に大きな港湾をもち、海峡を挟む南北の交易所となっている。
港湾を北西に、緩く傾斜を昇ると山々に囲まれている。
山々からは蛇行した河川が下り、肥沃な土壌をもたらしている。
古くから、豊かな土地として栄えたこの国は、
商人が集う一大商都であった。
陸路海路をもち、東西南北を結ぶ通商路の交叉点となり、
世界各地から文明、文物が集うこの国は「学術の都」「大陸一の商都」として栄華を極めている。
そのため、この国の王族・貴族が文物に明るいことは一種の威光となり
威光を求める者や野心家は誰しもが優秀な文官を求める。
剣を持つ者であっても同様。
将軍、軍を統べる役職になるためには学が必要になる。
では、若くして近衛騎士団長を務めるかの者が
東西の文物に明るいとは自明のことである。
侍女は朝の雑務を終え、一息つきつつ、
そろそろ姫様を起こそうと、寝台へと向かう。
「姫様、おはようございます」
"姫様"と呼ばれる少女は身じろぎをする。
目を閉じ、まどろむような顔で、ううんと唸る。
「姫様、今朝は忙しくなりますから、そろそろ――」
侍女が声を掛け続ける。
姫様はようやく目が覚めたようで、寝台の上で伸びをする。
そうして、眠そうに侍女へ尋ねる。
「おはよう、ソフィー。 今朝は、なにか、あったかしら?」
「おはようございます。
姫様、今朝は王陛下と王妃殿下の皆様と朝餉の予定がございます」
「あ!そうだったわ。遅れないようにしないと。
ごめんなさい、ソフィー、お願い」
「はい。大丈夫ですよ、時間は十分あります」
よかったと姫様は笑む。
侍女は眠そうな姫様の身支度を進める。
そうして、侍女は手紙のことを思い出す
――姫様以外は見てはいけないのでしたね
お手紙は朝餉のあとゆっくり渡しましょう
侍女は朝に弱い姫様の支度を進めていく
次は、姫様の朝食