女騎士は国を発つ
最初は女の近衛騎士の話。
新しい命が芽吹く季節、肌をなでつける風は少し冷たい
私の目を嫌でも覚まさせる
もう少しくらいこの場所に居たかったが、出立の時は迫っている。
荷物を持ち、愛着のあるこの部屋を去る。
城の検問所に近づき、顔見知りの部下を呼ぶ。
この国を発つ前に一つ、部下に頼み事をする。
「この手紙を姫様に届けてくれ」
「姫様に? ああ、別れの手紙ですか。 直接渡すのが照れくさいのですね。」
部下はからかうように言う。
「まあ、そのようなところだ。」
そして、また問われる。
「しかし、本当に良いのですか? 姫様に一言も告げず行ってしまわれて。」
「ああ。 姫様はお優しい方だから。
私が発つとなれば、引き留め続けて、この国から出してはくれないだろう。」
私が苦笑しつつ応えると、部下は納得したように笑う。
そのあと、また少し憂いを帯びた顔で私に言う。
「しかし、ロドアス様まで離れてしまわれると、姫様は大層悲しむでしょうね。」
「大袈裟だよ。そう長い旅にするつもりはないからね。それに、姫様を慕う者は多いから、
大丈夫だろう。
まあ、私がいない間、姫様を頼んだよ。
それから、その手紙もね。」
「そうですね。姫様は我々がおまもりします。 それから、お手紙は必ず姫様にはお届けしますよ。
それでは ロドアス様、 一日も早いご帰還を願っております。」
さて、暇乞いはすませた。 私は少ない荷を持ち、歩き出す。
少し歩き出したところで、後ろを振り返る。
私は、からかい好きの部下へひとつ念を押しておく。
「その手紙、見ないでくれよ。」
指をさし告げる。
「私は悪筆なんだ。振るえるのは剣ぐらいでね。」
こう脅しておけば大丈夫だろう。
次は部下と姫様付きの侍女の話。