1話~召喚は突然に~
教室で授業を受けながら、僕はこれからの休み時間をどうやり過ごすかを真剣に考えていた。
ふと前の席に目を向ける。その席に座っていたのは山田 秀勝。良い名前だな、僕の女みたいな名前とは大違いだ。この名前と、僕が言い返せないせいで、僕はこいつとその取り巻きたちにいつもいじめられている。いや、いじめなんて生ぬるいものじゃない。何かこの日常を変えてくれないだろうか。
その瞬間、教室の床が光り輝き始めた。とっさに顔を手で覆う。聞き取れないほど多くの叫び声が響いていた。
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手をおろしてまず目に入って来たのは、大理石のかべと、床に描いてある模様。どちらも学校にあって良いものではない。周りの生徒達も騒ぎ始めた。「キャー」「何処なんだここは!」「異世界転移か?」「ヒャッホー」「皆落ち着け!」
前のは分かるけど後ろの二人は‥‥、まぁ置いておこう。最後のは美河君だね。さすがだ。皆静かになった。
と、そこで場に似合わない高い女の人の声が響いた。
「勇者様方、まずは話を聞いていただけませんか?」
「勇者ってなんだよ!」「ていうか、あんた誰だよ!」
「私はこの国の王女、リナ=ルーテシアです。皆様はこの世界に召喚されました。突然の事でまだ皆様混乱されていると思いますがまずは謁見の間にて、私の父、国王の話を聞いていただきたいのです!」
「皆、まずは話を聞いてみよう!」
また、美河君の声、もう生徒の中で主導権を握っている。
「ありがとうございます。それでは私に着いてきてください。」
ぞろぞろと後を着いていく
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謁見の間と言うからもっときらびやかな部屋を想像していたけど、思ったより質素な部屋でいい印象を受けた。玉座らしい場所には、優しそうな男性が座っていた。
「うむ、よく来てくださった。勇者様方。
儂はこの国の王、クルド=ルーテシアである。
ここはサリシアと呼ばれる世界、勇者様がいた世界とは別の世界のルーテシアと言う国じゃ。
今、この世界は魔王復活によって滅ぼされるという危機に直面しておる。
そこで、我々は古代から伝わる『勇者召喚の儀』によって、魔王に対抗しうる力を持つと言われる勇者を召喚したのじゃ」
王様はそこまで一息で言うと、ほっと息をついた。
「待って下さい!
僕たちは戦いなどしたことがありません。そんな魔王などと戦えるわけがない!」
美河君以外に喋る事の出来るひとは居ないのだろうか?
「それについては心配はいらん。
伝承によると勇者様方は召喚された際に、神様から特別な力をあたえられているはずじゃ。
心のなかで『ステータス』と唱えてみるのじゃ」
僕も確認してみる。
(なっ?)
基準は分からないが、それでもこれが低いのは分かる。
(はぁ‥、ここでもきっと僕はいじめられるんだ。期待した僕が馬鹿だった。)
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次回ステータス確認です。