牛と模様と牧草
でかい牛のケツがあり、その尻尾は無邪気にハエを追い払っている。おやおや、尻尾かと思ったら後ろ足だった。器用に臀部を叩いていた。その後ろ脚はなんとなく前足にも見える。牛は珍しいことに前足を臀部に移動してハエを叩こうとしている。ハエは逃げるのが早く、牛の足では追っつかない。今度は右前足でハエを仕留めようとしている。最終的に左前脚と見間違えそうな尻尾でハエを仕留めた。
牛の模様はホルスタインの物で、黒い部分が池の様にも、穴のようにも見える。その穴の中に身体がずぶずぶと入っていく。しかし穴だと思っていた物は実はコケで、白い部分が水のようにも見える。私はコケの密集地帯から這い出て水の中に飛び込む。そこから地面の芝生にしがみついて陸上に上がった。緑色の地面から牛を見ると、ただの白と黒の模様に見えた。果たしてどの色が一番体の表面を閉めているのだろうか。
牧草地帯を歩いていくと芝草が足に絡まって、気が付くと足が緑色の草に絡めとられている。草原は大きな髪の毛のように渦を巻いて茂っている。ところどころヘアピンのようなものが見えている。地肌は肌色の土のようにも見えた。青く見えるのは草の密集地である。赤く見えるところは草が抜け落ちているところだった。
毛のように草が風になびいている。中には風の流れに逆らって突っ立っているものもある。くせ毛みたいなものだろう。
先ほどの牛はのんきに別のハエを追い回している。ハエが交尾でもしていたのか重なっていて二匹になった。ハエは重なっていてもわからないので気づいたら四匹に増えていた。さらに分かれて八匹になっていった。だんだんハエの方が多くなってきて、しまいにはハエの大群が雲のようになり、牛の体にとまった。そのままホルスタインの模様になり動かなくなった。