二巡目2
-------賭の人生---------
4歳、まだそんなに物心が付いていない頃。
ちょっとした事故で怪我をした。
といっても、いつも通り解決はされた。
サイレンの音。
ゆっくりとまた目を開く。
色々な機械が所狭しと、それでいて綺麗に整頓されて天井や壁に付けられている。
あ、救急車か。
何度か乗ったこともあってよく知っている。
2順目の今の状況を確認しようと目立たない程度で周りの確認をする。
両腕にある軽めの圧迫感。
体が動かないように固定されていて、そんな自分・・・賭さんの周りには3人の男性がいた。
一人は、顔をうつむかせて自分の右の手を握っている。
後の二人は、機械を見ては何か書き込んでいる人とそれを聞いてどこかへ電話をしている人。
「賭・・・大丈夫かい?もうどこも痛くないかい・・・?」
1巡目の時にも見た、そして聞いた声。
手を握っていたのがそれ、賭さんの父親だった。
「うん、いたくないよ・・・。なんでここに居るの?」
「お前が骨折したって聞いたんだ。幼稚園で余所の子とちょっとあったって聞いたから。」
幼稚園で、友達と何かあって骨折。
そうか、左の手の圧迫感はそれか。
応急措置で固定されている。
「で、どうする?お前が許せないというなら相手の子をどうにだってできる。」
不穏なことを言ったように聞こえた。
相手の子をどうにだってできる・・・?
どういうことだ?
「どうにだってできるって、どういうこと?」
子供らしく何も知らない風でそう訪ねた。
「相手の子ともう会いたくないなら退園させることもできるし、町から出て行ってもらうこともできるんだ。お金ならどれだけでもあるから。」
お金ならどれだけでもある・・・か。
「いいよ、退園させなくても。」
「どうしてなんだろうな・・・賭け事には必ず勝てるし、良い嫁さんだって見つけられて、今までに悪い事なんて無かった。それなのに、なんでお前ばっかり不幸に・・・。」
泣いている。
握られた手がより強く握りしめられる。
その手の上にぽつぽつと涙が落ちてきた。
「大丈夫、あなたのせいじゃないです。」
自分の父親じゃないが、どこかで会った気がする。
そんなまだ不明瞭な親近感からそんな言葉が口から漏れた。
こんなこと、今までに一度だって感じたことがなかった。
すると、自分の乗せた救急車が止まった。
病院に着き、後ろのドアが開かれた。
救急隊員の人たちとは別の数人がそこには居て、自分をベッドごと病院内へ運んでいった。
あの父親は救急隊員の人たちと一緒に別の所から病院へ入っていった。
と、賭さんの父親も病院へ入ったと同時に瞬きをしたように一瞬暗くなった。
直後、またあの和室にいた。
「どうです?12の頃の虚様は?といっても覚えていないと思いますけど。」
見た目は同じなのにどこか違う雰囲気になったルメスがそう言っていた。
一瞬自分に向かって言っていると思ったが、違う。
自分のを体験しているのは賭さん・・・。
きっとそれは賭さんに言っているのだろうと分か・・・った・・・?
確かに今この部屋には自分とルメスと賭さんが居るはずだ。
なのに、ルメスが話しかけているのは自分だった。
自分だとは言っても自分ではない”自分”。
目に映る光景には、ルメスともう一人、”弐口 虚”の姿をした誰かがいた。




