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一巡目。

賭 6  虚 3


「賭様、6.虚様3でぇす。では、その年齢のお互いの人生体験を、どうぞ。」


いきなり視点が暗転した。

だが、それは一瞬のこと。

直後、見覚えのない暗い部屋でひとりうずくまって泣いていた。


-------------虚の人生------------------


・・・。

6歳の誕生日。

そんな日に、父親が消えた。

借金を残して夜逃げをした。

よりによって、僕の誕生日に・・・。


「いや、待て泣いてるのは俺じゃねぇ。ってことは・・・これが虚の人生・・・か。」


頬を伝う俺のものじゃない涙をぬぐい、立ち上がる。

重い。

6歳から早々重かった。

こんな小さいときからこんな人生を歩んでいたのか。


「それに今の声、虚の…。こんな風に進んでいくのか、迷惑なゲームだな。」


一人部屋の中でそう口に出した。

にしても、借金を残して夜逃げ・・・。

もしかして、俺のスタートの所持金って・・・。

そういうことか、確かに俺の小さいころは2000万くらいあった気がする。

もっとも、俺は何もしていなく、両親がギャンブルで買った金額の何割かずつを貯めてくれてる。

幸運な両親なんだろうけど、普通の家庭に生まれたかった。

これの考えようによっては俺の不幸だな。

直後、電話がなった。

おそらく虚の家の電話であろう。

部外者である、自分が出るのもどうかと思い母親が電話をとりに来るのを待った。

だが、1分経ったかどうかぐらいで留守電録音に切り替わった。


 ピー。

 弐口さん?早く借金返してもらわないと困りますよぉ。

 期限はとっくに過ぎているんですからね。

 明日、取立てに伺いますけど、返済できないなら差し押さえしますので。

 借金、利息込みで5500万。

 でわ、また伺いますね。


その口調は軽く、胡散臭さがすごい。

なんで、虚の親はこんな奴から借りたんだろうか。

たぶんだが、どこへ行っても相手にされなかったんだろう。

って、おい待てよ。

借金いくらって言ったか?

利息で500万増えてる・・・。

一度でこんなに借金が増えるなんて虚の人生は桃○郎電鉄かなにかか?


と、借金が増えたのを確認するとまた目の前が暗転した。


今度もほんの一瞬で、視界が戻ったらカジノで案内されていたVIPルームだった。


「流石に俺が不幸不幸言ってるのが申し訳ないような人生だったな・・・。」


思わずため息が漏れる。

部屋をチラッと見渡すと、虚は目をつぶって寝ているようだった。


「あなたぁも、夢を見るように入っていましたよ。ふふっ、よだれが垂れていますぅよ。」


そういわれて、あわてて袖で口元をぬぐった。


「さぁて、虚様はいつごろ目を覚ましますかぁね。」


俺はどのくらい“アレ”を体験してたんだろうか。

でも・・・あれ?

どんな人生を体験したんだっけ。

すぐ忘れるものなのか“アレ”は。

本当に夢みたいだな。


-----------賭の人生------------


この時もすでに不運だった。

クリスマス直前の事だった。


車の音。

自分の周りには明らかにおかしな、顔を隠した男が多数いた。


「はいはい、怖くないからね。」


自分を抱きかかえてる男が子供をあやすようにそう言ってきた。

たしか、それは・・・そう。

目だし帽だ。もともとは他の用途があったはずがこういう事件で使われすぎて数が少なくなっているとかって聞いた。

それにしても、この状況は・・・?

サイコロの目は、3だった。それに、あの管理人の言ったとおりなら賭さんの3歳のころの人生。

自分の思う限りこれは、誘拐・・・のはずだ。

そうして、今の状況の整理をしていると助手席に座っていた男が電話をかけ始めた。

その際なにか小さな基盤が丸出しの何かを携帯のマイクに当てながら


「お宅の息子さんは預かりました。今から指定する口座に5500万を振り込んでください。お宅の財政状況だと少なすぎるくらいの金額ですね。警察に話したり、今日中に振り込まなかったら息子さんはバラバラにしてお返ししますよ。」


といった。

脅迫電話。

賭さんの身の上話は何も知らないが、これが3歳の体験。

不運だったとはチラッと聞いていたが本当だったんだ。

電話の向こう、賭さんの両親から返答があった。


「今すぐ振り込むよ。なんなら警察にも言わないし、食事に招待するよ。」


思わず耳を疑った。

声からしておそらく父親であろうその声は、振り込む上に食事に招待するといった。

僕は、これは確実にはめようとしているとわかった。

それなのに、この誘拐している集団は。


「おい、どうするよ。今すぐ振り込むって言ってやがるよ。」


「振り込むことは振り込むだろうけど、食事に招待するって言うのは罠としか考えられないんだけど。」


当たり前、そんなもの信じるほうがどうかしてる。

が、おそらくリーダーの男が。


「いいじゃねぇか、食事に招待してくれるって言うなら乗ってやろうぜ。子供を返す手間も省けるしよ、ついでに何か盗んでいけばちゃんとした取り分になる。」


この人は、その・・・。

アホ・・・?

車は、途中でUターンしていき、その途中形態で口座を確認していた女が


「ほ、本当に入ってるよ!?」


と、驚き、自分を抱える男に見せた。

自分の行動で、変わるといっていたがこの年齢だと何をすることもできない。

そして、1時間もたたないうちに車が止まった。

僕を抱いている男は、やけに子供慣れしているのか心地がよかった。

リーダーの男が大きな豪邸の門を叩いた。

あらっぽく、門を殴るように何度も叩いているといきなり、門が開きはじめた。

開ききるよりも前に、電話の向こうで聞こえた声が聞こえた。


「いらっしゃい。警察にも連絡していないしお金も追加で渡しても良い。それに・・・息子はなんだか気持ちよさそうだし、そのまま抱えててくれ。さぁ、誘拐の際にも入っただろうが、正式に招待するよ。」


息子が誘拐されたのに寛大な人だった。

彼の後を歩いて、大きなお屋敷の中にぞろぞろと歩いていった。

屋敷内は、見たこともないくらいに豪華で、日本には明らかにそぐわなかった。

さすがに、メイドとか執事とかはいなかった。

すると、すぐ大きな机とたくさんの椅子が置かれている部屋に着いた。

よく演出で見るような食事を大人数でする部屋。


「好きな席についてくれ。そうしたら食事の前に少し話をしたい。かまわないかな?」


この状況でどんな話をするつもりなのかはまったく見当もつかなかった。

自分を抱きかかえた男が


「話をするのはかまわないが・・・その、本当は通報をしてたりしてないのか?」


当たり前の質問だ。

誘拐犯の当たり前というのもおかしいが。


「安心してくれて良いよ。通報はしていないし、もう要求分は払っただろう?5500万も何に使うかは知らないが、これを期に新たな人生を・・・」


と、そこまで言いかけると時間が止まった。

直後にスッと目の前が暗くなった。



「お?虚君、やっと起きたか。どうだった?俺の3歳の頃は。」


「賭さんこそ、そ・・・そのどうでしたか?」


「どうだったも何も、すごい経験だと思ったよ。不幸だと言ってるのがアホらしくなるくらいに。」


いや、僕の人生は置いておくとしても、賭さんの人生は不幸なのだと思う。

きっと、そうきっと不幸な彼を常に救っているのはあの寛容な父なのだろう。

あの時は、そうだった。

きっとこれから体験する中でもそうなのだろう。


「賭さんの人生も、僕に負けてない・・・ですよ。あ、あんな体験を・・・あ・・・れ?どんな体験を・・・・した・・・?」


まるで夢だったかのようにうまく思い出せなくなっていた。


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