信じ込むこと。
続けること数時間。
やっと10セットが終わった。
「ふぃ~、やっと終わったぁ・・・」
体中が痛いが、身についているとありがたい。
筋肉痛がするところを手でなでてみる。
ごつくて厚い胸板に、がっちりとした腕、もうすでに結果が出たらしい。
「勘違いするなよ?それもイメージの結果なだけだから現実はひ弱なままだぞ。まぁ、それで銃ぐらいは扱えるだろ?」
言われたとおり、銃を両手で構えて模造人間の胸の辺りを狙って、引き金を撃つ。
バンッ!
最初と比べると、反動があまり強くないように感じた。
一応力が付いていると言うことで良いんだろうか。
銃口からは、白い煙がうっすらと立ち上っていたが、火薬臭さはなかった。
撃てたことだけで満足してしまって、気がつかなかったが、俺が撃った模造人間は、苦しむ様子こそ無いが、胸の辺りからまるで噴水のように血を吹き出していた。
あぁ・・・
傷口は、いやになるほどリアルで、目も向けたく無いが血の出方だけが演出が激しすぎて、どこか嘘くささを混じる。
まぁ、嘘なんだが。
「ふん、狙いは悪くない。だが、確実に殺すなら頭を狙え、さぁ、銃の次のステップだぞ。」
「次のステップ?撃てたら終わりじゃないのか。」
「お前、能力をマスターするって言う根本を忘れてないか?」
しまった!
筋トレに集中して、その上銃を初めて撃ったという感覚から忘れてしまっていた。
「はぁ・・・先が思いやられるな。じゃあ次やることの説明をする。想像した物にアタイ・・・じゃないな。力を込めるようなイメージをして、もう一度撃ってみろ。」
力を込めるイメージ?
よくわからん、握りしめろって事か?
俺は、よく分からなかったから馬鹿単純に強くグリップを握って模造人間を再び撃つ。
バァンッ!
さっきも見たような光景が広がった。
「お前はアホか!握りしめただけでどうなるよ!?力って言うのは能力を込めるって言ってんだよ!?それくらい分かれよ!」
全力で怒られた。
あぁ、そういう意味だったんだな。
だけど、能力を込めるイメージね・・・
分かんねぇ・・・、また馬鹿単純に銃身に込めるって言うより弾丸に込めるイメージなら行けそうだな。
そのイメージでまた模造人間を撃つ。
バァンッ!
音は鳴った。
煙の上っている。
それに確かに当てたはずの人形がない。
「できたな。それでいい。それがいい。お前の能力の使い方はそれだ。銃ができたら次は刀の方だな。さっきの刀を出してみろ。」
そういわれて、言われるがままにさっき想像したのと同じ刀を出す。
「早いな、慣れって奴か。今度は試し切りだ。やれ。」
相手は人形だ、そう分かってはいるもののやっぱり気が引ける。
銃は俺の感覚として、間接的な武器で罪悪感は少なかった。
だけど、今度は、自分の手で直接やらないと行けない。
アニメとかで、よく見る物でかっこいい!とは思っていたがこんなにもプレッシャーがすごい。
怖い、それが実際に切れる物を持った感覚。
銃の時よりも怖い、それでもやらないと行けない。
刀を振り上げ、上段から振り下ろす。
首の付け根からあばらの下までを切り抜けるイメージで。
フッ
ブンッ見たいな音は立てずに、しっかりと振り下ろす。
高校時代には剣道部だった。
なんとなくの剣の振り方は分かっている。
だが、真剣ともなると使い勝手は違う物である。
刀は切りきれずに中途半端に首を切っただけであった。
よく考えれば当たり前だ。
人体にだって、他の生物にだって、骨がある。
簡単に断ち切れるとは思っていない。
「違うぞ、そんなイメージがあるから切れない。骨は切れる物、そう信じ込め。お前は人間だろ?信じ込むことにこそその本質はある。」
信じる・・・か。
変な言い方をすると、自分で自分をだませって事か?
骨は切れる、骨は切れる。
そう盲目的に信じ込むことにした。
骨は切れる、骨は切れる。
今度は、居合い切りの形で、下から上に切り上げる。
居合い切りなんてしたことないが、信じ込めば何とかなりそうだ。
ふぅ・・・
深く息を吐き、
すぅ・・・
大きく息を吸う。
そして、息を吐きながら刀を切り上げる。
刀は、体を通り過ぎていたが、切れていないように見える。
「あれ?きれてな・・・」
切断面を滑るように、体の一部がずるっと落ちてきた。
これを本当に俺がやったのか。
「現実じゃそんなことは起きないけどな、精々骨の間を切り離すぐらいだな。じゃあさっきと同じように能力をイメージしろ。」
また、イメージ。
だけど、さっきみたいには行かない。
刀はそれ一つで攻撃ができる。
奈良どうするべきだ?
どうすれば、刀に能力が込められる・・・
「どうした行き詰まってるのか?なら今度はアタイのイメージで行こうか。」
「お前のイメージってどういうことだ?お前の考えって事か?」
「まぁ、そんなところだ。」




