パスト、零橋終時のハロー異世界
零橋 終時、世界随一の名家零橋家の現当主。
自分たちがまだ向こうにいたときのさらに16年前のとある事件の生き残りでもある。
当時の零橋家には、分家などはなく、終時とその妻、そして一人娘だけであった。
その日は、何ら変わりない一日だった。
零橋家は、先々代が立ち上げた一大メーカーを持っておりその時から終時が会長を務めていた。
そんなお家柄とは裏腹に田舎の中でも孤立したような一軒家にすんでいた。
いつも通り会社へ向かう。
会長とは言っても、特にこれといった仕事はなかった。
大きな取引の時に、自分自ら赴く。
それぐらいしかない。
この日は大きな仕事もなく、自宅へ帰った。
いつも通り妻が私を迎えてくれた。
夕食の時間だったため、娘は食卓で待っていた。
ただ今思えば、娘の目にはただならぬ雰囲気があった。
夕食を終え、自室へ向かった。
部屋に入り扉を閉め、鞄を置き、いすを引いた。
すると、一つ乾いた発砲音。
ありえない、ここは日本だぞ?
かつて訪れた海の向こうでは時たま聞いたことがあったが、日本ではあり得ない。
しかも、その音の近さは確実に家の中。
冷や汗が頬を伝う。いやな予感がする、妻か娘。もしくはその両方が撃たれた?
そんな考えが思い浮かんでしまい、体がリビングへと勝手に向かっていった。
頭の中は、ひたすら娘と妻の無事を祈っている。
リビングの手前まで来て、しまった。と思った。
あまりにとっさの行動だったために対抗手段など用意していない、その上音を立てすぎた。
気がつかれてしまう。
だが、そんなこと気にしている場合じゃない。
音を出さないように部屋の中へ入ることがでいた。
妻は撃たれていた。
心臓を一発、おそらく即死であった。
思わず泣き出してしまいそうだった。
今すぐ力のなくなってしまった妻を抱きしめ、大声で泣いてしまいたかった。
だが、娘は?
娘がどこにも見当たらない。
見渡す限りリビングの中には妻以外何者も居なかった。
音に気をつけて部屋の中をくまなく探すもやはり居ない。
娘は無事なのか?
幸い二発目の発砲音は聞こえていない。
まだ生きている。
どこだ、どこだ?と探すのに夢中で音を立ててしまっていたことに気がつかなかった。
二発目の発砲音が聞こえた。
それも至近距離から聞こえた。
それに胸の違和感。
手で胸の辺りを触ると、大量の血が付着した。
発砲音は背後からだった。
撃たれたことに気がつくととたんに痛みが走る。
口からも血が出てくる。
これが死ぬと言う感覚・・・
足の力も抜けてしまいうつ伏せの形で倒れる。
気がついた頃には血の水たまりが広がっていた。
残りわずかな力を使って、妻の元へ向かう。
ようやく妻の元へ迎えたかと思うと、狭くなった視界に娘の足が映る。
「無事だったのか・・・速く逃げッ」
三発目の発砲音、直後頭が熱くなった。
三発目の弾丸は、私の脳幹を貫いた。
そこからの記憶はあまり残っていない。
ただ、死後数秒間、聴力は残っているという説が確かだったのか最後に娘の一言が聞こえた。
「やっと解放された・・・」
何のことかは分からなかったが、ここで意識は完全になくなった。
ひどくうるさい機械音。
そこら中で何か大きな機械が動いているような。
待て、死んだはずだ。
そんなはずはない、開けられるとは思わなかったが目も開くことができた。
視界に広がるのは、機械で満たされた都市だった。
「ようやく目が覚めたであるか。」
腰に3本の刀を提げた男がそこにはいた。
終時の話は何かの機会があれば




