ディファレント、魔王城跡国立図書館-犬牙&鳴実 2
もう一つの方ずっと書いてたw
50分!?ただでさえここに来るまでに1日。
戦闘狼を使えば簡単だが、今は人目がある。
流石に町のど真ん中を走り抜けるわけにはいかない。
「おい!待てよォ!人が多くて走り抜けることもできねェんだ、50分じゃ、片道すらも無理だッ!!」
ラフをここに連れてくること自体は簡単だ。
問題は距離と人目。
「そこの娘、イティス様から何かを授かっているだろ?それを出せ。」
確かに、鳴実はイティスからトランプを受け取っている。
だが、それがどう関係する?
ただのトランプだぞ?それに鳴実が何か受け取って言うのをなぜ知っている?
「えぇ、確かに預かっているわ。それをなぜ貴方に見せなきゃならないの?」
言ってることは正しいが、今その反応はあまり良くない。
「ふっ、気がついてなかったのか。君の能力はまさしくそれだ。そのトランプ、奇跡の法術士だ。」
そんな能力聞いたこともない。
それに、トランプが能力だったとしてなんになる?
「そのデッキからモノクロのジョーカーを出してみろ。そしたら今から投げるコインにぶつけてみろ。」
鳴実はデッキの一番後ろから2枚のカードを出して、そのうちのモノクロのカードだけを手に取った。
それを確認すると、1枚の金貨を投げてきた。
言われたとおりにそれにカードをぶつけた。
すると、モノクロのカードの絵柄がなくなった。
「絵柄が消えたわね。で?どうなるって言うの?」
「そのカードをそいつに渡して見ろ。」
指を指されたのは俺。
そして絵柄の消えた真っ白なカードを受け取った。
「受け取ったが何だってんだよォ?」
「犬牙・・・?どこよ?」
「どこってよォ、目の前にいんだろォが!」
「ねぇ、犬牙をどこにやったの?」
「おい!だからここにッ!!」
「そいつは目の前に居るはずだぞ、動いてなければな。」
訳分かんねェ、俺はここに居るのに認識されてねェ。
ふと、手に持つカードに目を向ける。
カードの柄が戻っている。
・・・
分かった。
俺はさっきまでの絵と同じ事になっている。
認識されてない、となると、この事象が能力?
いや、正しい能力はおそらく、能力の譲渡。
完璧な形での譲渡。
カードを手放せばどうなるんだ?
ジョーカーを足下に置いた。
すると、
「犬牙!そこに居たのね!」
周りから認識されジョーカーの絵柄は戻っていた。
ジョーカーが体に触れている内は発動する、離れると解除される。
ジョーカーの絵柄は能力を表している。
「うまくいったな?それなら動けるだろ?」
たしかにこれなら行けるが、一人しか無理じゃないか?
「そして、この娘は人質として預かっておく、では、行け。」
「おいまて!そいつも連れて行く!」
「行け。それとも皆揃って葬るべきか?」
鳴実は表情を一切崩さずに
「犬牙、よろしく。私は大丈夫だから、力があるって事はもしもの事があっても時間稼ぎぐらいはできるから早く行って、時間がもったいない。」
「あァ・・・すまねェ!」
足下に置いたジョーカーを手に取った。
その場で狼化し、全速力で駆ける。
ここに存在するのに存在しないように、音も気配も何もかもが起きていない。
これなら大丈夫だ、もっとスピードを上げる。
普通なら風圧で自身が傷つくはずだがそれすらもなさそうだ。
もちろん何者にも関知すらされないので、敵対の者に会うことはなかった。
そして走り続けて10数分オールマイティアの前に付いた。
息は切れ切れ、休憩しなければ走れないだろう。
カードをどうするべきか、今のままでは姿が見えない。
どうすれば良い?カードを置けば良いのだが、周りの目があるためいきなり解除はできない。
そう考えていると、扉が開いた。
「一ノ島君で良いのかな?入ってきなさい。」
どこか見覚えのあるタキシードを着た現世人が扉を開いてくれた。
俺のことは・・・見えてないよな?
「おい、イティス本当に一ノ島君とやらは居るのだな?」
「安心して居るわよ。ちゃんと使ったのね、カードをテーブルに置いて。」
認識していたのはイティスの方だったようで、この本人は見えていないようだった。
言われるようにテーブルの上にカードを置いた。
「君はそんな派手な髪色をして・・・君は現世人だろ?若いからって調子に乗ってると後で痛い目を見るぞ?」
そんなことを話している場合じゃない。
「それを言ったらこいつらも奇抜な色してんじゃねェかよォ!それよりだ!ラフ、付いてきてくれ、図書館までよォ!」
「図書館・・・ってことは、あいつかぁ・・・分かった直ぐ行くがそんなに疲れてたら帰れないだろ?終時、行けるか?」
「行けるけどよ、じゃあコイツでも食ってろ」
終時と呼ばれた男があめ玉を投げ渡してきた。
俺は会ったことがないが、イティス達の接し方から長いつきあいなのは分かった。
この飴だって親切心だと思って良いだろう、受け取った飴を口に放り込む。
「疲れたときには糖分が必要だろ?手持ちはそれだけだが今は大丈夫だろ、じゃあ行けるか?」
糖分を摂取して、少しは落ち着いてきた。
「ありがとなァ!おっちゃん!」
「若いってのはいいねぇ・・・」
おっちゃんとラフが立ち上がった。
立って初めて気がついたが、おっちゃんの腰には日本刀があった。
アトルは、寝息を立てて寝ていた。
「中じゃ危険だし、アトルも起きてしまうからな、外でやろう。」
「中じゃ危険ってなにやんだァ?それにおっちゃんがなんかしてくれんのかァ?」
外に出るときにイティスからジョーカーを受け取り外に出る。
俺の予想では刀だ。きっとその刀を使う!
どうやるかは知らないけど
「説明はまた今度するとして、じゃあやるけどあんま時間持たないから早く行ってくれると助かる。」
いったい何をしてくれるんだ?
わくわくしながら見ていると、やはり腰の刀を抜いた。
そして、上段に構えると扉を切った。
流石にそれは予想していない。
そして切られた扉がゆがんでいる。
「早く行け。一回通ったから間違いない。」
歪みの向こうは、見づらいが魔王城のシルエット。
これが、おっちゃ・・終時さんの能力…!
すげぇ、こんな力があるのか…
「おい、いつまで見とれてるのだ?早くいくぞ。」
「お、おぅ!」
来るときは10数分かかったのに帰りは一瞬。
それにカードを見ていると、絵柄は戻っていた。
ラフが認識していることからカードの力がなくなっている。
それに気が付いたのは歪みの向こうのことで、イティスに問うのは無理だった。
ディファレントはもうちょっと続くよ。




