魔王城跡国立図書館 3
「クソッ、とにかく犬牙を・・・うっ」
口の端から血をこぼしながら壁伝いに犬牙達を探して回る。
だが、今俺居る場所は全く知らない場所。
この魔王城(元)内を闇雲にさまよってしまう。
このままでは、早い内にあの二人に追いつかれてしまうだろう。
それにあのフェルガーノの“我が神と同じ力”というのがどうにも気になる。
漫画とかそう言うのだったら大けがをしてもあたかも何もないように働き始めるのだろうが、現実はそうも行かないらしく痛みが邪魔してうまく頭が回らない。
「今はどの辺を歩いてんのかわかんねぇ・・・」
ドゴォ!
突如壁が壊された。
「そこにいたか。」
その声の先を見ると壁を蹴って壊したであろうフェルガーノが居た。
威圧をしながらゆっくりと近づいてくる。
速く逃げないと、そしてはやく犬牙達とあわないと。
そう思いその場から逃げ出した。
フェルガーノは相変わらずゆっくりと近づいてくる。
それに少し遅れて三上君がやってきた。
その手にはやはり一冊の本。
俺が逃げる際目の端で三上君がその本を開くのが見えた。
「李徴さん、お願いします。」
と聞こえた。
すると、一つの大きな陰が自分の背中を大きくえぐった。
「ガハッ!あぁ!!」
痛みで思わずうずくまってしまった。
その痛みの中自分に攻撃を仕掛けてきたモノがなんだったかを目にした。
それは一匹の大きな虎だった。
「李徴さん、ありがとうございます。お帰りください。」
そんな三上君の一言でその虎は消えてしまった。
「透さん、真実はちゃんと口にした方が良いですよ?相手が誰か分かっています?」
「真実はちゃんと口にするも何も・・・先に攻撃したのは・・・フェルガーノ、お前じゃねぇかよ。」
俺はうずくまり無様な格好でそう言ってやった。
すさまじい激痛で涙が出る。
痛みをこらえるのに必死でもうこれ以上何かをしゃべるような余裕は無い。
「つらそうだな。解放されたければその力の経緯を教えろ。」
「なら、最初からよ・・・暴力に訴えないでそうやって・・・聴け・・・よ・・・」
だめだ。
もう意識が持たない。
一体この世界に来てから何度目の気絶なのだろうか。
俺はこのまま殺されるのだろうか。
わからない。
所詮今自分の命は相手の手のひらの上だ。
あ、もう限界だ-----
そこで俺は意識を手放した。
「おィ!どうなってんだァ?場所が分からねェ!臭いをたどろうにもどうにもほんの臭いが邪魔する!」
いち早くあいつのところに行かないとヤバイ気がする。
意図的に邪魔をされているかのように透の場所が分からない。
誰か自分の知り得ない何かから警告を出されているように透の元へ行かないといけない気がしてならない。
「ねぇ、透の居場所は分かったかしら?」
「ちょっと待ってろよォ。すぅーーー、はぁーーーーっ」
今一度、深く深呼吸をして全神経を嗅覚に集中する。
とても分かりづらいが居場所が分かった。
だが、俺たちの足ではその臭いを追っている内に消えてしまうだろう。
あまり人の多いような場所で使いたくは無かったが、しょうが無い。
「鳴実、俺が戦闘狼で追うから直ぐに背中に飛び移れ。」
「えぇ、分かったわ。この状況じゃ周りの事なんて考えてる余裕はないものね。」
「じゃあいくぜェ!戦闘狼!!」
勢いよく体が膨張し、直ぐにそれが収まる。
森の中でやったときは大人数を乗せるためだったので、巨大な体躯だったが、今はスピードを重視だ。
2メートルあるかどうかくらいの狼に変身をした。
「鳴実、いくぜェ!」
間に合うかは分からないが今はとにかく透のところに全速力で走る。
が、その臭いの元に近づけば近づくほど鉄くさい臭いがする。
いや、これは・・・血か?
いやな予感はどうやら的中してしまったようだ。
段々近づいていくと、血だまりがあった。
だが、そこに透の姿は無かった。




