3人遠征初日。
メルバゴ鉱山。
その山はオールマイティアの居る町の隣の町のそのまた隣。
隣町自体は、そこまで遠くは無いのだが問題はそこからさらに隣町までの距離。
森の中から町へ降りてきた道よりちょっと短いくらい。
しかも、町中を犬牙が狼になって移動するわけには行かない。
なので、3日間かけてメルバゴ鉱山まで行くことになった。
「ここまではあっという間だったけれど、ここからすごく遠いって本当?」
「あァ、流石に町の中で全力疾走するって訳にはいかねェからよォ。だいたいでも三日ぐらいはかかるはずだぜェ。イティスは多分そこら辺理解はしてると思うから時間に関しては1週間ぐらいの猶予はあるはずだぜェ。」
早く行けって急かした割には割と時間の猶予はあるそうだ。
にしても本当に遠い、現世では車とか電車とか飛行機とかあるおかげで移動には困らなかったがいざこうなるとすごく便利だったんだなと思ってしまう。
「本当に元の世界っていろいろ便利だったんだな。」
道のりは遠いものの日差しはあまり出ていなく風通りの良い町なので比較的疲労感は無かった。
1日目は特に何も無く、ただただ隣町を目指して歩くのみだった。
ただ一つだけ言うならタキシードのような黒い服を着た男とすれ違ったくらいだ。
夕方頃には宿を借りた。一人一部屋ずつ、それぞれ別の部屋で各一枚ずつよく読めない文字の書かれたカードを渡された。
俺と鳴実はこっちのお金など持っているわけでも無く、お金には余裕がある犬牙が3人分を出してくれた。
だが、しっかり返してもらうつもりらしく
「別によォ、何時までに返せってことは言わねェけどよォ確実に返せよなァ?」
一人3ウェル。
日本円にして450円らしい。
つまりは1ウェル150円だ。
今日泊まる宿は3ウェルで晩飯付き。
安すぎないか?
日本感覚だとそう感じるんだがこちらでは当たり前なのか?
この中で一番この世界のことを知って居るであろう犬牙に聞いてみた。
「なぁ、犬牙この宿屋って安すぎないか?」
「えぇ、確かにそれは私も思ったわ。」
「それにはよォ、理由があんだよォ。」
そういって犬牙はこの宿屋の安さの理由を教えてくれた。
どうも、この世界にも魔王とか言うのが居るらしくその魔王が優しすぎるらしく宿代のなんと75%負担してくれているらしい。
だけど、どこの宿屋も75%OFFというわけでは無いらしく。
今居るこの元王都に隣接している6都市以外は対象外らしい
そして現状魔王城というのは無いらしい。なんでも、皆が暮らしやすくするために城を国立の図書館にしているらしい。
機会があればちょっと見てみたい気もする。
「へぇ~、じゃあ今その魔王様っていうのはどこに居るんだ?」
城を国に贈与したというならその本人はどこに居るんだろう。
まさか洞窟とか?
「魔王・・・か、今どこで何してんのかとかはよォしらねェな。」
犬牙も知らないらしい。
そう話をしていて外を見るともう辺りは暗くなってきていた。
こころなしか、腹も空いた。
「腹減ったし、飯食べに行かないか?ここで食えるんだろ?」
「あァ、俺も何度かここに泊まったことはあるからよォ、案内するぜェ」
「ねぇ、不思議に思ったのだけれど犬牙はこっちの世界に来てどのくらいなの?」
「もう数年になるなァ。」
「そう、じゃあ貴方も死んでるのね?」
「いや、鳴実犬牙は死んでないぞ。俺らは死んでこの世界に来た転生者、犬牙は生きたままこっちに来た転移者だそうだ。」
「なるほどね。」
「もういいか?じゃァ行くぜェ」
3人は犬牙の借りた部屋を出て、食堂へ向かう。
ってか、この宿屋くっそ広いな。
迷っちまいそうだ。
歩いて数分。
まぁまぁ、歩いた位置に食堂があった。
現世でのレストランみたいに、メニュー表があった。
だけど、こっちの文字なんて知らないわけで俺と鳴実は全く読めなかった。
だけど、さすがの犬牙は読めるらしく、現世の食べ物と味の似ているものを頼んでくれた。
食事も終わり、片付けはセルフらしく、食器を持って返却口へ行く。
そこで、食器を受け取ってくれるエルフと、ここに入るときに渡されたカードを回収していく人が居た。
どうやら、あのカードは食事券的なものらしかった。
それからは3人それぞれ部屋に戻り今日は寝た。




