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鳴実と透の二度目の出会い。

町。

その町は、よく絵画で見るような西洋風。

タイルで敷き詰められた地面、石造りの建物。

そんな中、一軒だけその風景には似合わない建物があった。

その名前は


“オールマイティア”


その店は、見たところいわゆるBar. というやつだ。


「ここが、イティスの店だ。」


ここが犬牙の話の中でもあった“イティス”というオネェの経営するバーか・・・

ブラフが合鍵を持っていたようでそれを使って扉を開けると


「おい、イティスいるか?」


声をかけたが返事はない。

ちょっとまて、合鍵を持たせてるってどういう関係だよ。


「おいブラフ、何で合鍵なんか持ってんだよ!さっきまで持ってなかっただろ!」


「あぁ、確かに持ってなかったな。だから作ってやったぞ感謝をしてもよいのだぞ?」


そんな簡単に合鍵作られちゃたまったものじゃあねぇな。

この世界においてセキュリティはそんなにガバガバしていていいのか・・・

いや、相手がブラフだからか。


「あぁ、感謝はしないが、そのイティスさん?ってのはどこだ?」


店の中にはいなそうだな、そう思い周りを見渡すとこちらに向かってくる人影が二つ。


「あら、ラフじゃない。思ったよりも早かったわね。」


片方は赤髪、短髪の男性。

犬牙の話を聞いた限り、彼がイティスという男だ。

だけど、もう片方の女性がわからない。

・・・ん?

あれ?なんだか見覚えがあるような気もするが・・・

だれだっけな?割と重要だった気がする。


-----あなたが透ちゃんね?


突如、頭の中に声が響いてきた。


----あぁ、俺が透で間違いない。それより、これって犬牙の言ってたやつか。


-----あら、おどろいたわ。まさか、返答ができるなんてね。

-----アタシの“知識の逆流”に返答ができるなんて透ちゃん、なかなかに才能があるわね。


----才能・・・か。なぁ、ひとつ聞きたいことがある。


-----聞きたいことって何かしら?質問しだいでは答えられないかもしれないけどね。


----その横の女性って誰なんだ?初対面なはずなんだが、妙に見覚えがあるんだ。


-----そのことね、それならあたしの口からいう必要はないわ。わかるから。


----え!?わかるって!?は!?


切れた。いや、接続を向こうから切られた。

それより、わかるってどういうことだ?


「おい、おまえだれなん・・・」


そう言い掛けた俺よりも少し先に


「あなた、どこかで見たことがあるわ、それもつい最近なきがする。」


「あぁ、俺もおまえを見たことがある気がする。」


さっき俺が言い切る前にあとから言われたので言い直してやった。

でも、本当に見覚えがある。

もしかして、俺がここに来たことに関係があるとか?


「なぁ、互いの見覚えを解決するためにもさ、まず名前を教えてくれ。」


「あら、そう言うのってあなたが先に答えるのが筋ってものじゃあ無いの?」


くっ、こいつめこちらが下手に出ていることをいい気にしやがって。

だが、俺は紳士だ。紳士だから口出しはしない。


「たしかにな、こっちから名乗るのが普通だったな。俺の名前は肆 透だ。あんたは?」


「私は六瀬 鳴実よ。それより、肆 透?本当にその名前で間違いないの?」


質問の意図がよくわからない。

俺は母親のおなかに居たときから今までだってずっと肆 透だ。

それ以外の何物でも無い。


「質問の意図がよくわからねぇが、俺は肆 透だ。俺は元いた世界で死んでここに居る。」


「あぁ、そう。貴方が肆 透だったのね。名前を言われて思い出したわ。確かに貴方は私が殺した男で間違いないわ。」


俺の時が止まった。

おい、待て。今なんて言った。

“私が殺した”だと?

そう考えると同時に俺はその女。

六瀬 鳴実の胸ぐらをつかんでいた。


「おまえか!俺を殺したのは!おまえのせいで!」


鬼気迫るような勢いで言葉を吐いた。

今までの、ここに来た理由はコイツのせいなんだと思った。

だがしかし、六瀬 鳴実は一切表情を変えること無く


「そうよ、貴方を殺したのは私。だけど、正真正銘、正当防衛だと私は思う。そして、付け加えるなら貴方を殺したのは私の意思じゃあ無い。」


「たしかによ、正当防衛なのは確かだ!俺がおまえを襲ってそれに反撃したってだけだもんな、だけど待てよ!“貴方を殺したのは私の意思じゃあ無い”ってどういうことだよ!確かにあの時はあんたに殺された!だが、あのときの動きは素人目にも慣れていたって事がよくわかったよ!それなのに、私の意思じゃあ無いってどういうことだ!」


「そのままの意味よ。もっと言うなら会社からの命令?まぁ、信じられないと思うけど。」


「なんでその会社は俺なんかを殺す依頼をしたんだよ!第一その会社ってどこの会社だ!言ってみろ!」


「あら?いっていいのかしら?」


「あぁともよ!早く言ってみろよ!」


「いいのね、じゃあ言うわ。貴方の殺害の依頼をした会社、その名前は“アノゼア”。貴方も勤めていたその会社よ。」


は?

待て待て待てよ。

俺はあの会社に恨まれるようなことをしたのか?

いや、していないはずだ。


「アノ・・・ゼア・・・?へ・・・?なん・・・で?俺・・・は・・・理不尽にもクビにされただけじゃ無くて・・・、その上俺は会社に殺された・・・?」


「私も詳細はよく知らないわ。私自身が手を下した貴方に言う台詞じゃないかもしれないけど。」


「俺が何をしたってんだ・・・」


「だから言ってるでしょ、詳細は知らない。」


「ふむ、だとすると向こうの世界にあるそのアノゼアという組織が原因と考えて間違いないだろう。」


ふと話に割り込んできたのはブラフ。


「さっきから気になってたんですけど、向こうの世界とか現世とかって、何の話をしているんですか?」


その次に純粋に、ただ純粋に質問をぶつけてきたアトル。

そうか、アトルは、向こうの世界を知らないのか。


「あら、アトルちゃん、3人はちょっと話すことがあるみたいだから先にお店に入って待ってましょ。向こうの世界のことはアタシが教えてあげるから。」


そういって、ちゃんと3人で話す場を与えてくれたのはイティスだった。


「でだ、透はおまえ、いや鳴実によって殺害されこの世界に来た。そしてその殺害はアノゼアという組織からの依頼である、と。間違いないな?」


「たしかに、間違いは無いわ。」


「そして、鳴実。おまえはなぜこの世界に来たのだ?いったいどうやって?」


「私がこの世界に来たのは、彼と同じ。死んだからよ。でも、部屋の中で勝手に死んだわ。心当たりはそれね。」


「なるほどな、鳴実。君も死んでこの世界に来たのか。」


俺を殺したこの女も死んだ?

なぜ?


「ちょっとまってくれよ!なんでおまえは死んだんだよ!?誰かに殺されたって言うのか??」


「透、さっきコイツが言ってただろう。部屋の中で勝手に死んだと。」


「すこしだけ付け加えさせてもらえるかしら?」


「あぁ、かまわないが?」


「そう、ありがとう。っと言っても私の死に方について何だけど、多分それは人為的。いや、相手が人なのかわからないから人為的って言うのもおかしいわね。」


「というと?」


「私が彼、肆さんを殺害してから私は会社に報告に来いって事で社長に会いに行ったの。だけど社長はいなかった、代わりの人が居たわ。私の知り合いよ。そして彼、魚崎さんって言うのだけれど社長から預かったと言って一つの箱を渡してきたの。」


「箱?何が入ってた?」


「宝石だったわ。小さな宝石、それも加工される前の。」


「それに他の特徴はあったか?」


「特徴ね、色は赤だったわ。それを見ていたらなんとなくだけど意識が吸い込まれるような感覚があったわ。」


「そうか、意識が吸い込まれるか。それなら十中八九魔術のたぐいだろうな、それも付加結晶エンチャントジュエル。」


「その付加結晶ってのはなんだよ?」


「透、少しは落ち着いたのか。そうだな、付加結晶、これは魔術の付与された鉱石のことを言う。その特徴としては砕けやすい、、そして砕けてしまうとかけられていた魔術は消え、鉱石の持つ元々の色が完全に無くなり透明になる。」


「でも、不思議ね。今の話を聞く限り砕けたら効果は消えるのよね?」


「その口ぶりからすると、鳴実。君はその石を砕いてしまったんだな?」


鉱石?って事は石だよな?

そう言えば、どこかで赤い宝石を見た気が・・・

あ・・・もしかして、


「なぁ、ブラフ。」


「なんだ?透。」


「多分なんだが、俺が会社で倒れたとき同じようなものを踏み砕いてしまったんだ。」


「なるほど、付加結晶には砕かれて初めて効果が出るものがある。とするとだ、死んだ原因じゃ無くてこの世界に来た原因がその宝石なんじゃ無いか?そうすれば、筋は通らないか?」


「なるほどね、それなら説明がつく私が死んだ理由。それ自体はイティスから教えてもらたもの。」


「なら、その付加結晶は破壊時発動型と見て間違いない。そして、それは魔術にかかったものが死んだときに発動する。ということか。だとすると」


「俺「私がここに居るのはあの会社のせいってことか」ね」


顔を見合わせる。

息が合った。初めて。

コイツは俺を殺した女だ。

だが、その実アノゼアのせいだとわかった。

この女が死んだのもだ。

思わず息が合ったことに俺は笑った。

彼女は呆気にとられていた。


「ふふ、ははは。俺を殺したやつと息が合うなんてな。」


「その“俺を殺した女”って呼び方やめてもらえる?」


「じゃあ、なんて言えばいいんだ?」


「名前でいいわ。鳴実、それでいいわよ。」


「そうか、じゃあ鳴実。おまえが俺を殺したことは変わらない。だが、おまえが死んだ理由と俺が殺された理由は関連性がある。


「そうよ、関連性はあるわ。それはアノゼア。」


「そうだ、あの会社だ。俺はあの会社を許さない。それに絶対何かがある。」


「それについては同意見ね。」


そう、だから


「だから、おまえのことは許す。その代わりと言っちゃ何だけどあの会社を、俺たちのことの解決を手伝え。」


「そんなことは言われなくてもそのつもりだったわ。」


「・・・そうか。」


「二人とも、話はもういいか?」


「あぁ、大丈夫だ。」


「それじゃあ、私もこのお店は今日からだし、よろしくね。肆さん。」


「透でいい。鳴実。」


ガチャッ


音を立てて両開きのドアが開く。


「もう話はいいわね?それじゃあ、時間は早いけどお店開店するわね。」


俺たちは店に入る前に一悶着あったがなんとかなった。

今の何もわからないままじゃ俺を取り巻く事を解決するのは不可能だろう。

だから、今はこの世界で力をつけよう。

そう決心してオールマイティアの扉をくぐる。


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