一ノ島 犬牙の冒険譚(2)
犬牙のここに来るまでの話を2話に渡って書きました。
そして次からは、町編スタート
「おい!おまえ!名前はなんだ!?」
歩いて出ていくなり早々に目の前に見えた銀髪の少女は言った。
「こら、ラフ!さっき名前は教えたでしょ!」
「そうですよ、ブラフ様。先ほどイティス様がおっしゃいました。」
「いいのだ!こういうのは本人に直接名乗らせのがいいのだ!」
目の前の銀髪の少女、金髪の女性、そして赤髪短髪の男は3人で声を抑えて話していた。
もちろん丸聞こえなのである。
「ごめんなさいね、犬牙ちゃん。アタシから紹介するわね、この銀髪はブラフマーっていうの、アタシはラフって呼んでるの。」
さっきの頭に入ってきたのはこのイティスと呼ばれてた男か。
「そうかよォ、じゃあ俺もラフって呼ばせてもらうぜェ。でよォ、ここってどこなんだよォ?」
さっきからこの金髪のことだけは名前で呼ばずに金髪と呼んでいた。
きっとなにか理由があるのだろう。
追求はしないでおくことにした。
「そうね、ここはあなたのいた世界とは違うわ。それにあなた、能力使ってきたわね?」
「あァ?能力だァ?そんなのもん・・・いや、あれのことか」
きっとさっきまでの狼化のあれだ。
なんだ?俺は人狼にでもなっちまったのかァ?
-----大丈夫。犬牙ちゃんの狼化は人狼になったんじゃないわ。
-----その力は戦闘狼。超五感と狼のような力が使えるって訳よ。
「あのぉ、すみませぇん。犬ちゃんはぁ、どうしてこんなところにいるんですかぁ?」
「け、犬ちゃん!?・・・」
「そうだ!なぜおまえはこんなところにいる!?いったい何者だ?」
目の前の銀ぱ、ラフは言った。
「俺にもわかんねェ、何が何だか。」
「そうね、アタシにもちょっとわからないわね。私がわかるのはきっとなにか強大な力のせいね。もしかして犬牙ちゃん、ここに来る前本とか触ったかしら?」
「あァ、触ったぜェ。そしたらここにいた。ってか何でそんなことわかんだよォ。」
「あら、ごめんなさいね、アタシは知識を統べる者って呼ばれてるの、能力は・・・っと、ここからは有料よ、でもそうね、アタシの店で働いてくれるって言うなら教えてあげてもいいわよ。」
「おい、犬牙よ、こいつの能力はな・・・」
そこまで言いかけたとき、横に立っているイティスと金髪が二人揃ってラフの口を押さえた。
「んん~!!」
「こら、ラフ!言っちゃだめよ!言ったときは・・・わかるわね?」
「そうですよ!言っちゃだめですよ!!」
「ん~!!」
「なに?なに?もうわかったから離せですって?しょうが無いわね」
そういうと、二人はラフの口を押さえてた手を離した。
「そうよ、で、どうする?アタシのお店で働く?」
「おォ、働くことは別にいいけどよォ、何の店やってんだァ?」
「バーよ、バー。名前はオールマイティアっていうのよ。」
「そうか、バーか。じゃあ、わかった。働かせてくれ。あとよォ、衣食住ぐらい保証して欲しいぜェ」
「あら、それだけ?別にいいわよ。そうねぇ、じゃあこれから向かいましょうか。犬牙ちゃんには多分またここに来ることがあると思うから、そうねぇちょっとあなた来なさい。」
イティスがそう言うと金髪が近づいてきた。
それから二人が少し耳打ちをすると
「犬牙ちゃん、あなたがここに来るときはね、彼女が指笛を吹いたとき。わかったわね?」
「お、おぅ。わかったぜェ。そうだ、店だ。それってどこにあんだ?」
「あなたが狼で走って数時間と言ったところね、そうね、犬牙ちゃんには道も覚えて欲しいから狼の状態で走ってみましょう。」
「でもよォ、狼って言ってもよォさっきは気がついたらあァなってたんだ。」
「あら、そんなの簡単よ?イメージをするだけ。そうね、わかりやすいようにイメージ送ってあげるから待ってて」
そういうと頭に一つのイメージが流れ込んできた。
それは狼。狼のはずなのだが3Mを優に超える。
そんなイメージ。
「そうね、その状態で戦闘狼!とでも叫んでみなさい。」
「お、おぅ。わかったぜェ。ウ、戦闘狼!!」
そう言った瞬間。
体がすさまじく膨張した。
体中が熱かった。
と同時に感じるあふれんばかりのエネルギー
「犬牙ちゃん、できてるわよ、その感覚忘れないようにね?」
「おォォォ!!これか!すげェ!力があふれてくるぜェ!」
「ありきたりの台詞だな。」
「ありきたりの台詞ですね。」
「ありきたりの台詞ね。」
目の前の三人は揃ってそう言った。
「ま、まぁいいじゃねェか、それよりだァ!イティス!速く案内してくれェ!新しいこと知りたくてうずうずしやがる!」
「あら、ずいぶん楽しそうね、じゃあ直ぐにでも行きましょうか。じゃあ、ラフ達、アタシ達はもういくわね。」
「あぁ、また会おうイティス。」
「また今度ですイティス様~、それに犬ちゃんも!」
「おうよォ!」
そうして俺はイティスと一緒に森を駆け抜けた。
力の使い方と道を覚えるために数時間でいけるところを丸1日かけて。
森の中を抜けて町へ着いた。
「犬牙ちゃん、疲れたでしょう?今日は店に行かずに屋敷で休んでちょうだい?屋敷は直ぐ近くだから。」
「おォ、ありがてェ。イティス、ところで飯なんかはねェか?」
「そうね、もう夜も遅いし屋敷で食べましょうか。」
そうして俺は人の姿に戻り、イティスと二人夜の西洋風の町中を歩んでいく。
ものの数分、そのぐらいで屋敷に着いた。
「で、でけェ・・・俺はここに住んでもいいのか?」
「いいわよ、犬牙ちゃん。そのかわりしっかり働いてもらうわよ?」
そうして屋敷の中に入っていく。
それから数年、すっかりこっちにも慣れて向こうの事なんて忘れていた。
そしてここに来てから数年と2ヶ月。それが今だ。
「っていう訳だァ、わかったか?透ゥ」
「あぁ、ありがとう犬牙。それにしてもおまえ壮絶な人生歩んでんな。」
「本当にな。」
「あとさ、話を聞いた感じこっちと向こうの時間の流れは違いそうだな」
「そうだなァ、たった今言われて気がついたよォ。そうだ、なんでオメェは町に向かうんだ?」
そりゃあもちろん、町に向かう理由は
「俺の力のことを知るためだ。そのために図書館に行って調べようと思ってな。」
「なァ、それよォ、イティスのとこに行ったら速くねェかァ?」
そういわれて俺はじっとブラフを睨む
ギロリッ
するとブラフは急いで目線を外すとこう言った。
「と、透、お、おまえを試したのだよ!!ほ、ほら私神だし?忘れるなんて事あるはずが無いじゃ無い・・・?」
俺と犬牙は二人声をそろえていった。
「「ありきたりな台詞だな」ァ」
「そ、そうだな、ならさっさとイティスの店に向かおうじゃ無いか?」
まだ若干動揺をしている。
「あ、すまねェ、ちょっと用事があって乗せていけるのは町までだァ。でも店にいるんなら合流できると思うからよォ。」
「そうなのか、では、町からは私が案内しよう。アトルは町へ出たことが無いからな。」
「すみません、ブラフ様。私が何も知らないばかりに。」
アトル、この場合おまえは謝らなくていいんだぞ?
そう思っていた。
「アトル、君が謝る必要は無い。この場合はな誰も悪くないんだ。」
「ブラフ様がそういうなら」
そんな話をしていたらまもなく町が見えてきた。
そこは西洋風の町並み。
あまり歴史について詳しくは無いが文明レベル自体は1世紀前ぐらいであろうと思った。
「それじゃあよォ、透、ラフ、それにアトル・・・だよな?またあとでな。」
「おぅ、またあとでな犬牙!」
「またあとでね、犬ちゃん!」
俺たちがそう言ってる間にブラフは進んでいた。
「おい!ちょっと待てよー!」
「待ってくださいブラフ様――!!」




