一ノ島 犬牙の冒険譚(1)
犬牙の背中に乗って,風を切るスピードで走っていても町までは数時間かかるらしい。
そして、俺たちを乗せて走っている今は通常出せるスピードの半分にも満たないらしい。
おい、犬牙おまえはいったいどこまで進んでいくんだよ・・・
友人が少し遠く感じた。
だが、これからわかるであろう俺の力次第では犬牙においつけるかもしれない。
そして町までの数時間の間、走りながら犬牙は俺にここに来るまでの経を話してくれた。
卒論も何もかも終わり、やることが無くて困っていたんだ。
そしてふと俺は思いたっちまった。
「外国にでも行くかァ・・・、気分転換にイタリアにでも」
一度思い立ったら俺の行動は、早い。
その日のうちにプランを立てて荷物もまとめた。
「今のところ1週間ぐらい行こうかと思ってるはいいけどよォ・・・どこに行くかなァ」
某オカルト掲示板で、俺はイタリアにそういうところが無いかを調べてみたんだ。
20xx/xx/xx
45 名無しさん
今度、イタリア旅行にでも行こうかと考えています。
イタリアにオカルトというかそういうちょっとした気分転換とかにいいところってありませんかね?
20xx/xx/xx
46 名無しさん
>45 イタリアですか。イタリアならポンペイと言うところがおすすめですよ。
20xx/xx/xx
47 名無しさん
>46 さん、ありがとうございます。それってたしか、噴火によって消滅した都市ですよね?では、行ってみたいと思います。
20xx/xx/xx
48 名無しさん
>47 楽しんできてください。
ということで俺はイタリアのポンペイというところに行ってみたんだ。
そこへ行くまでの道のりには何ら変わりは無い海外旅行だったんだ。
携帯などのそういう機械類はすべて日本においてきた。
だから、透たちとも連絡は取れない。
誰にも相談しないでその場の勢いでこの旅行をしているが、心配とかはしていないだろうか?
いや、でもきっと透の事だ。俺が今海外に来ている事なんて気がつくだろう。
・・・
そして、ヒッチハイクなどを繰り返し、ポンペイに着いた。
ポンペイという都市は、ヴェスヴィオ火山の噴火によって埋もれてしまった。
今回来たのはその遺跡だった
そこの遺跡の重要なところは有料だったが見ることができた。
「おい、そこの少年!君は旅行者かい?」
「おォ!おっちゃん、そうだぜェ!ちょっと気分転換をしようと思ったんでなァ、日本からはるばる来たってわけだァ!」
「お!ジャッポーネか!そりゃあちょうどいい!どうだ?ひとつ思いで作りに遺跡発掘の手伝いしてみないか?」
「まじか!おっちゃん!!初対面なのに太っ腹だなァ!いいぜェ!手伝わせてくれェ!」
そんな現地の気のいいおっちゃんのおかげで、俺はポンペイ奥地、まだ未発達のエリアを一緒に発掘調査をさせてもらった。
「おっちゃん、俺、実はよォ、ネットでここにはオカルト的な噂がァあるって聞いたからなんだよォ。なか知ってるかァ?」
「噂・・・か。噂と言えば確かにあるな。」
「その噂っていうのは何なのか知ってるかァ?」
「うん、よくは知らないが、この町を滅ぼした噴火なんだが一説には人の仕業だ。なんて言われてるんだ。突拍子もねぇ話だろ?」
「あぁ、確かに突拍子もねェな。でも、人の仕業かァ・・・そんなもんただの人間には出来ねェだろうによォ。」
「でもそんな噂が出るって言うことは何かしらそういう者が残っていたとかそういうことじゃ無いか?」
「あァ、確かにそうだよなァ。もしかしたらこの発掘でなんかわかるかもしれねェなァ、こりゃァ気合い入れてやらねェとな!」
「あぁ、そうだなジャッポーネ。びしびし頑張ってもらうぞ」
「おゥよ!」
それからはただただ土や石などで埋まった場所をただただツルハシとかを使って地道に発掘をしていったんだ。
「いまのところよォ、なんもねぇなァ。」
「そりゃあ、この発掘自体何年も続けられてるんだからな。」
ガツッガツッ
土をひたすら掘っていった。
ガツッガツッ
目的なんてねェただただ何か見つかればいい。
そう思ってひたすらに掘った。
ガツッガツッ
ボゴォッ
なにか空間を見つけた。
「おい!おっちゃん!こっちにきてくれェ!」
「どうした!ジャッポーネ!何かあったか!!?」
「空間だァ!空間があるぜェ!ちょっと手伝ってくれ!」
「わかった!応援を呼んでくる!」
そしておっちゃんが数人の応援を呼んでくれた。
そして空間にたどり着いた。
そこはとにかく暗かった。
だから応援の人がライトを持ってきてくれてそれで照らした。
そこは、異様な雰囲気のする少し広めの部屋だった。
「おっちゃん、なんだよここはよォ。」
「わからん。こんなところがあっただなんて信じられん。」
「まァ、少し調べていこうぜ。でもよォおっちゃん。もしなんかあったらいけねェ。他の奴らには外で待っていて欲しいんだァ。」
「あぁ、それもそうだな。わかった。待っているように言ってくるよ、ちょっとまってろ。」
「あァ、よろしくなァ。俺はそれまでちょっと調べてみる。」
「あぁ、わかった。くれぐれも気をつけろよ?ジャッポーネ」
「あァ、わかってらァ。」
そうして少しの間、おっちゃんとは別れて一人で調べ始めた。
手元のライトで回りを照らした。
その部屋の中心には、一つの本があった。
その本を手に取ろうと足を進めた。
カツッ
何かを蹴る音。俺の足に何かが当たった。
そこをライトで照らすとそこにあったのは、白骨。
「ッ!!?」
この時代のことだ。何もおかしいことは無いだろうとそう思うことで一瞬焦ったがなんとか気を保った。
少し深く呼吸をして、改めてその本に目を向ける。
その本はどこか見慣れているような気がした。
そしてその本を手に取った。
「おィ、おィこれよォッ」
触って気がついてしまった。
どこか見慣れているような気がしたのはきっとこれだった。
その本は人の肌で表紙が作られていた。
吐き気。
みぞおちに強烈なパンチを食らったような衝撃。
「はぁ、はぁ・・・」
ゴクッ
生唾を飲み込む。
確かにその本は気持ち悪い。
そうは思ったが、その内容が気になった。
だから、めくってしまった。
その本は自分の知らない言語だった。
そりゃそうか、日本語で書いてある本がこんなところにあるはずはねェ。
だけどおかしい、なぜだかその本の内容がわかる。
字が読める。
ガタノトーア。
その言葉が気になった。
もう1ページ、また1ページとめくっていった。
わかった。あの噂は本当だった。
このポンペイに起きた噴火。それはこいつの仕業だ。
そしてこの部屋はそいつを召喚するための儀式部屋。
「おィ!おっちゃん!この本ヤバイ!」
そう言って、本を閉じて振り返った。
そこにおっちゃんはまだいなかった。
それどころか全くもって身に覚えの無いところにいた。
「おィおィおィ、こいつァどうなってんだァ。もう訳がわからねェ」
周りを見てみるとそこは
木。
木。木。
森だった。
????????
頭が混乱している。
何が起きた?
何が原因だ?
いや、原因はきっとこの本。
・・・
本はどこにも無い。
「まさかよォ、あの本。あそこに置いてきちまったのか。」
手がかりすらも無くなった。
きっとあの本さえあればここから帰ることも可能だろうと思った。
そして今、その手がかりすらも無くなった。
今するべき事。
「人を探さねェとなァ。」
人を探す目的で森をひたすらに歩いた。
「金髪!それにイティス!いつになったらわかるんだ!」
人の声が聞こえた。
人だ。
直ぐにその場に走って向かった。
ん?速い。
自分の足が、五感が確実に強くなっていることがわかった。
なにがあったんだ?と思い立ち止まった。
そこに映る影は確実に人の物では無い。
犬、いや狼のようだった。
また訳のわからない状況。
そんなこんなで立ち止まっていると
「おい!そこに誰かいるのか!?」
さっきの声だ。
その直後、何かが飛んできた。
それは頭をかすって横の木にめり込んだ。
それは石だった。
--なんつゥ馬鹿力だよォ!!
そして俺の耳がとらえたのは3人の足音。
なんだ?一人だけじゃ無かったのか?
-----安心しなさい。アタシが説得してあげるから。
-----それにあなた、転移者でしょ?名前は・・・犬牙ちゃんね。わかったわ。
-----こっちで説明はしたから、ゆっくり出てきなさい。
突如頭に何かが入ってきた。
その言葉に逆らうのはまずい。
さっきの石のことだどんなやつがいるかなんて想像もつかねェ
そして、その言葉に従ってゆっくりと俺は歩いて行った。




