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英雄幻想  作者: 三ツ葉
第一章 星剣の担い手と幻想
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第一章 『試験の相手』

更新しました!いやぁ、更新されていませんって文言がもう恐くてねぇ、やっとできましたよ。

こちらもぜひよろしくお願いです。

 『魔力』。この世界全体に認知されている誰もが持つ目に見えないエネルギー。しかし、フィクションのような魔法が使えるという意味での魔力ではない。どちらかというと、体内を流れる生命エネルギーであるという考えが一般的だ。


 魔力は人それぞれ個体差がある。総量が多い人、少ない人。大抵の一般人は後者の『少ない人』に分類されている。


 別に少ないからといって日常に支障があるわけではない。魔力が電気の代替物になってるなぞどっかのマンガか小説の読み過ぎだ。魔力はそんな便利なものでは欠片も無い。多くは使用する機会にすら巡り会わないだろう。


 さて、次に『多い人』はどうなのだろうか、という疑問が出てくる。


 恐れられる?差別される?迫害される?


 答えは、否、である。


 ハッキリ言おう。そんなのは全く無い。これっぽっちも、蟻が通る隙間もないほどに。

 たかが総量が他人より多いからというだけで迫害などバカの所行だ。そんな奴は生きる価値など皆無としか言い様がない。


 まあ、あくまで『一般人』としての括りでの話しなら、と付け加えられるが。


 期待したか?あり得ないだろう。迫害がない世界なぞどこを探しても見当たらない。

 考えてみろ。もし、マンガか小説を読んだときどれか一つでも差別が、迫害が、諍いが無い物語(ストーリー)があったか?例え、話を盛り上げるためだろうが、どの世界にもあっただろう?


 肌の色。宗教。人種。はたまた気にくわない。挙げればきりが無いほどに人間というのは争いの火種を見つけるのが得意だ。まるで、そのことだけに特化した生物のように。


 愚かで、醜悪で、救いようがないほどに他者を、自分以外の生物へ攻撃をする。何と憐れで、滑稽な生き物なのか。


 おっと、脱線してしまった。何が言いたかったかというと一般人なら差別などは無いが、魔力を利用する奴らにはあるということだ。


 『魔力武装使徒』―――通称、魔装使い。


 そう呼称される連中がいる。


 そいつらは魔力を使って犯罪を行う者に対して設立された、警察と同等の権利を持つ特殊警察だ。


 その特警を養成する機関として建設された学校が日本に九つしかない『魔力武装高等学校』。正式名称は魔力武装使徒養成高等学校である。物騒な名前としか思えん。もうちょい優しい感じにすればいいと俺は考えますぞ。


 ちなみに、本格的な養成は高校からで、中学で適性の確認をしてからどうするかを自分で決められる。


 平穏な日常か、血塗れの戦場か。


 つまり、この高校に来た連中は皆、血塗れの戦場を選んだ酔狂なバカなのだ。


 俺は、まあ家系というか目的というか色んな理由があるから酔狂な連中と一緒にされたくはない。仕事は最大の悪で敵だからな。ニートになりたいですっ。


 校門を抜け少し歩くと大きな掲示板があった。そこには、大きく『クラス分け試験は校庭で行う』と書かれている紙と地図がのっていた。


 こういうときは人の流れに沿っていけば着くので流れている方に向かう。自分で道を探すとかかったりぃので。


 流れに沿っていくと大きなグラウンドに出る。

 そこではメガホンで呼びかけをしている先生らしき人がいる。白衣をジャージの上から着ている髪がボサボサの二十代の男性。その姿はひ弱そうに見える。


 「はい、みなさーん。受験番号順に並んでくださーい。先生の手を煩わせないでくださいねー」


 いかにも、この仕事したくないオーラがプンプン漂ってくる。


 とりあえず指示に従うためにウロウロしていたところで肩を掴まれた。


 「幻装(げんそう)!」

 「なんだ、歳高かよ……」


 長く真っ黒な髪の毛を無造作に後ろに束ねたイケメンの部類に入る男。

 総華の幼なじみだ。ちなみに、総華は俺の幼なじみではない。期待させてごめんね?


 「なんだとは失礼だな。それとも呼び方がマズかったか?大将の方がいいか?それとも婿様?」

 「絶対やめろ。俺はお前らの大将になった覚えも婿になる予定もねぇ。それよりも、総華のとこに行かなくてよかったのか?」


 こいつらは仲間意識が強い。総華が倒れたことを聞いたら何をしてでも行くはずだ。


 「心配だが、蔚沙夜が任せろって言ったから大丈夫だろ」

 「蔚沙夜が行ったなら大丈夫か」


 それを聞いて安心する。これでも心配していたのだ。


 歳高と喋りながら自分たちの列を探していると、ある一帯が騒がしくなり始めた。どうやら、凄い人物がいるらしい。


 まあ、俺には関係のないこと―――


 「聞いた聞いた?あそこにいるのってあの有名な人たちらしいよ!」

 「まじかよ!?今年はそんな有名な奴らが来てんのか!?」

 「そうそう!あの『円卓』が来てるって!」


 前言撤回。急いであの場所に行かねば!

 

 駆け出そうとして羽交い締めにされる。犯人はもちろん歳高だ。


 「離せ歳高!俺は行かなきゃなんねぇ!」

 「落ち着け、幻装!興奮するな!」


 これが落ち着いてられるか。早く視界に映したい。


 「無理に決まってんだろッ、俺が何のためにこの学校に来たと思ってやがるッッ」

 「幻装が来た理由ぐらい知ってるわ!けど、急に行ったら迷惑だろ!」

 「アホか!円卓だぞ!?いつか本物を見ようと外国に行くと決めていた奴らが来てるんだぞ!もしかしたらアーサー王の直系がいるかもしれないぞ?絶対見る。そして………触る!!」

 「バカだろ!?それは犯罪だ!」


 クソッ、歳高め力強いなぁおい!


 しょうがない最終手段だ。あまり使いたくなかったが背に腹はかえられない。


 「分かった、歳高」

 「そ、そうか……」


 俺が暴れるのを辞めて落ち着いた雰囲気を出す。勿論、内心は暴れまくっている。

 それなのに歳高は離してくれない。完全に信用してないな。


 マジで使うか。


 「そういえば歳高、聞いてくれよ」

 「離せとかいう戯れ言なら聞く気は無い」

 「いや、違う。そんな妄言は吐かない」

 「お前が妄言と言い切るのか……じゃあなんだ?」 

 「実は明日な」

 「おう」

 「俺と総華の式があr」

 「何てことだ!?早く教えろよ!?こんなとこに居る暇ないじゃないか!!急いで蔚沙夜に報告と結婚祝いの品を買ってこなければ!」


 そう言うと、土煙をあげながらどこかへ走り去っていく歳高。

 いってらっしゃ~い、と手を振って見送る。実際、あいつの配属クラスは決まっているのでクラス分け試験に参加する意味は無い。学校側からもどちらでもOKという指示は得ていた。


 ちなみに、さっきの俺の発言に嘘はない。だって、俺は入学『式』、総華は始業『式』があるからね。勝手に結婚式だと考えた歳高が悪い。


 『あーそこの黒髪のツンツン生徒、走ってた人はどこ行った?』


 誰がツンツン生徒か。そう言われるとデレが無いツンデレ生徒みたいじゃねぇか。


 「あー、何か急用思い出したらしいです」

 『困るよ~怒られるのは僕なんだから勝手なことされると~』

 「いや、あいつ配属クラスもう決まっている生徒ですから気にしなくていいと思いますよ」

 『ふーん?あのクラスの生徒……か。それならいいや。じゃあパッパッと並んでねー、黒ツン』


 何でこの先生は変なあだ名付けてきやがるのかしら。ぶちのめしてぇ。

 いや、まずその前に円卓を見ないと。


 自分の列を探す振りをしながら輪の中心へ向かっていく。


 そこで、ポケットに入れていた携帯から俺の好きなEGOISMの曲が流れてくる。この曲なら着信があった方だ。


 「はい、もしも―――」

 『先輩先輩!とうとう明日は総華さんたちの結婚式ですね!どっちなんでしょう、総華さんが嫁ぐのか、先輩が婿に来るのか!総華さんたち的には婿の方が嬉し』

 「信じるなよ……。歳高に言っとけ、それは歳高を離すための言葉だったって」

 『そんなッ、総華さんの純情を弄んだのですか!?』

 「歳高がウザかったからつい。詫びとして今日の夕飯作ってやるよ、何がいい?」

 『先輩が……!?ちなみに人数はどの程度いいです……?』

 「うん?別に何人でも構わないぞ?」

 『蔚沙夜!今日の夕飯先輩が作ってくれるそうです!!あ、総華さんは甘い物がいいです』


 電話の向こうから「謀ったなァァァァァァ!!ハンバーグがいいです!!」という叫びが聞こえてきたところで電話を切る。俺は結婚式だと言ったかな歳高よ。仕方ないハンバーグは大きいのにしてやろう。

 甘い物か、夕飯のデザートで構わないか。簡単なデザートとならプリンあたりかな。材料あったかね。


 人垣をかき分けやっとの思いで中心を視認することが出来る。


 「―――」


 鮮やかな金色の髪が靡いている。背丈は思ったよりは高くないが佇まいからその気品溢れるオーラが滲み出ていた。

 背負うものは持ち主の傷を癒すと言われている鞘に収まった一振りの長剣。


 飛び出てきた俺の方に注意が向いた。


 翡翠(エメラルド)の瞳と視線が交わる。


 そして、心から俺は歓喜の声を上げた。


 「おおおおおおおおお!!本物の円卓だ!」


 勢い良く掛けまずは周りの騎士から詰め寄ってく。


 「あなたはガウェインの子孫?もしかして、その腰の剣が星剣の姉妹剣のガラディーン!?それに今なら午前中だから通常の3倍の力出せるの!?」

 「な、卿は―――」

 「あ、そのこけた頬。ならアグラヴェインだな!いや、戦闘に向かなそうな体がそっくりだ!」

 「む、無礼な―――」

 「その弓!トリスタンだな!?剣も使えるけどやっぱり弓の方がいいのか。姿は微妙に似てないな、髪伸ばしたら似るかも」

 「ああ、私はかな―――」

 「んん?その剣……アロンダイト?てことは、その女性がランスロットの子孫か!うわぁ、めちゃくちゃ美人!やっぱりランスロットがイケメンだったからかな?」

 「…えっと」


 そして、大本命。あまりの出来事に目をまん丸にしてあっけにとられているかの騎士王の系譜。


 女性らしい手を取って顔を近づける。

 見れば見るほど『あの人』とそっくりだ。なぜか、顔が赤くなってきている。熱中症か?


 「………」

 「………」


 至近距離で見つめ合う。俺は目に焼き付けるため一度たりとも逸らしはしない。


 「姉上から―――」


 だが、この邂逅はすぐに邪魔が入った。


 「―――離れろ!!」


 剣が振るわれ繋いだ手を強制的に離すことになる。

 追撃のせいで距離を取らされる。くそっ、もう少し触っていたかった!


 制服の上から真っ赤なジャージを着ている女性。金髪を無造作に後ろで結っている。


 「この淫獣が!姉上になにしやがる!?」

 「姉上……?つまり、騎士王の系譜?それなら、なんかわかるもんがあるんだが。あれ、それもしかして」


 俺はその女生徒が手に持つ剣の持ち手を見て思い出す。

 紅き雷を柄に刻まれている。その剣が示す特徴と合致するのは一振りしか俺は知らない。


 「モルドレッド?」

 「ああ?なんだかやけに詳しいと思ったらオレ様のことも知ってんのかよ、気色悪ぃ」

 「てことは、それが騎士王殺しの(クレラントブレイクアーサー)?」

 「詳しすぎんだろ、この変態」


 変態?


 「馬鹿な変態がこんな所に出たのか、通報したか?」

 「手前ぇだよ!」


 あり得ん。俺はただの野次馬だぞ。


 「姉上に恥辱を味会わせやがって殺すぞ」


 なんか近場から「ち、恥辱……!?」っていう言葉が聞こえるが、俺はケンカをふっかけられてる理由が分からず困惑する。


 「待て。盛大なすれ違いが発生してる。モーさんは何か勘違いをしているぞ」

 「誰がモーさんだ!気安いあだ名つけんじゃねぇよ!!」

 「可愛いだろ?」

 「そういう問題じゃねえ!!それに勘違いも何も手前ぇが姉上に変なことしたのは事実だろ!?」

 「そうなの?」


 俺なんか変なことしたっけ?自分の行動を振り返る。まず手を取って顔を近づけた、そのまま見続けただけだよなぁ。どこも変なとこなくね?

 総華に「先輩は無意識に変なことするんですから気を付けてください!」と顔を真っ赤にして言われているが、全然変じゃないと思うんだが。


 「はいはい、いい加減に並んでなぁ」


 割って入ってきたのはボサボサ先生。勝手に黒ツンなんてつけたんだこっちも変なあだ名つけてやるわ。


 「君たち特待生の子たちだろ?別に今日来なくてもよかったんだから問題起こさないでほしいなぁ」

 「全く入学式もしてないのに問題起こすとか何考えてるんだか」

 「君のせいだろう黒ツン」


 何で皆、俺のせいにしたがるかな!?


 「こっちはさっさと終わらせたいんだけどねぇ」


 ぼやきつつこの場で拡声器で指示を出すボサボサ。


 「はい、じゃあ組み合わせを言うから呼ばれた人たちはグラウンド中央に来てね~」


 そう言えば、クラス分け試験があるんだった。円卓騒動で忘れてたぜ。


 「おい、手前ぇ」


 呼び止められる。もちろん相手はモルドレッドの直系。


 「俺と()れ」

 「そんな、急に誘われても僕たち出会ったばっかですよ?僕、恥ずかしい……!(///)」

 「おい、何悶えてんだ。やめろ!体をくねらすな!へ、変な意味にとられるじゃねえか!」


 ごめん、総華。先輩は汚れちゃうよ……。


 「い、いや、さっきのは違くてっ」


 モルドレッドの直系はわたふたと慌てて頬を赤くしている。そして、地団駄を踏み始めた。


 「だから!俺とこの試験闘えって意味だよ!」

 「いや、それ学校側が決めてるから無理じゃね?」

 「急にまともな返事するんじゃねぇよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


 おかしい、至極真っ当なこと言っただけなのに。


 「辞めなさい、モルドレッド」

 「あ、姉上……」

 「こ、コホン」


 近づいてきたのはアーサー王の直系。どこか、恥ずかしそうにしている。


 「円卓の一人が申し訳ありません。モルドレッドの戯言は聞き流していただけると助かります」


 どこか、卑屈さを感じさせる声音だ。自分に自信が無い、そんな印象。


 「けど、姉上!」

 「モルドレッド、あなたは円卓の一席でしょう。常に平静を保ちなさい」


 叱られて、しょんぼりしたモルドレッド。可哀想に、誰のせいだか。


 「別に構わないよ~」


 いつの間に近くにいたボサボサが許可を出す。なんの?


 「そこの生徒たちはもうクラス決まってるけど、やっちゃいけないってルールは無いからねぇ。もともと相手は決まっていないし」

 「本当か!?」

 「ほんとほんとー」


 え、じゃあ俺の元の相手はどうなるんだろ。


 なんでも、今回の入学者は特別クラスを除くと奇数だったらしい。もともと俺の相手はいなかったそうだ。もう学校側からハブられてるよ。イジメよくないと思います!


 「俺の意思は無視なパティーン?」

 「そりゃあ、学校始まってないのに問題起こすからねぇ、自業自得だよ」


 返す言葉が無いな。


 「よし、話が分かる先生でよかったぜ。手前ぇ覚悟しろよ」

 「まあ、いいか。確かめたいこともあるし」


 気になっていることがある。それを確認するための手間が省けたと考えた方がいい。


 モルドレッドに向かって右手を差し出す。

 改めて、自己紹介しよう。


 「幻装(げんそう)英二(えいじ)だ、よろしく」

 「ふん。円卓の一席モルドレッドだ。ぶっ飛ばしてやるよ」

読んでくださりありがとうございます!

やっと主人公の名前を出せた気がする……。なぜ、私は今まで主人公の名前を出していなかったか不思議でしかたないですよ。

こちらの作品もぜひとも楽しんでいただけると幸いです。

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