妖精ピアニストII
先に言っておきますけどハッピーエンドなんて期待するなよ
第2話 妖精ピアニストII
もう一度引き上げて今度はこちらから距離をとった。彼女はもう一度謝罪をしてくれたが、自分が何も来てない事を思い出して顔を真っ赤にしながら服を着た。
「着替え終わりました」
私はその言葉を聞いて振り向いた。
白い服はよく見るとフリフリが付いてることがわかったが、ファッションという物に無頓着な私には可愛いぐらいの感想しか出なかった。
「え、えっと。あなたはどうしてここの森にいるんですか?」
「気がついたら森に倒れてたんだよ。ここはどこなんだ?」
彼女は少し悩んだが、口を開いた。
「えっと、この森は妖精の森と言って妖精族の場所です。結界が貼ってあって人は決して入れないのですが......」
へえ、彼女は妖精なのか。それにしては随分と大きいな。私のイメージした妖精と言うのは手のひらサイズなのだがね。
「妖精の森かぁ。なら、人の街って何処にある?」
「わかりません。外に出たことがないので......」
と消えそうな声で答えてくれた。ちなみに私と彼女の間の距離は5mも離れて会話している。これ以上近づくと彼女は震えてしまうのだ。人見知りなのか、人間が怖いかというと恐らくどちらもなんだろう。
「ありがとう。それだけ聞ければ今後の目標も立てれそうだよ」
少なくとも人の街がある事はわかった。そう言うと彼女は何にかを思い出したかのように顔を上げた。
「あ、そうだ!村長様なら知ってるかもしれない!聞いてくるね!」
さも、名案を閃いたと言う感じで意気揚々と森の中に消えて言った。あの子、馬鹿だから村長に隠さずに話すのだろうけど、まず教えてくれないでしょうね。このまま離れても彼女の好意を無駄にする訳にもいかないし、村長と一緒に来るか、もしくは村長だけが来るか、最悪は集団で来てリンチに会うがここで待つとしよう。
太陽が真上に来たりて昼頃を知らせる。お腹が空いた私はそこら辺の木に実っている木の実を手に取って見た。
それは赤く丸っこくてさくらんぼによく似ているが、触った感じたど中身はぐにゃぐにゃしており、食欲を消し去る。うーん。これはたとえ食べれるとしても食べたいとは思わないな。私はその木の実を近木にいた鳥に上げた。
そんな事をしていたら川の対岸に人影が見えた。2人いて、片方はあの少女でもう片方は皺々の顔に杖をついて歩いているおじいさんだった。あれが村長なんだろうな。羽も艶がなく、見た感じは飛べなさそうだ。
「人よ、いかにしてこの森に足を踏み入れたのか?」
「それが、気がついたらこの森にいたので、特に目的があって森に来たわけではございません」
「ほう。嘘ではないな。で、君は近くの街に行きたいのだな?」
「はい。人の街にでて自分が今何処にいるかを知りたいと思ってます」
とは言ってもここが俺の知っている地球でないことは既にわかった。どうやって地球に帰ろうか。いや、この楽園を捨てるのは惜しいが、まだ読み終わっていない本や聞いてない音楽など、やりたいことはたくさんある。それにこの世界で生きていける気がしないのだ。
「そうか、だが近くの街。いや国は現在、国境を跨ぐことすら出来んぞ。ときにお前の住んでた街の名前を言ってみろ」
「日本です」
「わからんな」
まぁ、そうだろう。今更思ったけど彼等が話ている言語って日本語じゃん!
いや、今はそのことは置いておこう。今後どうすれば良いのかを考えなければならないな。
私が少し考えてるいると少女が話しかけて来た。
「あ、あの。私達の村に来ますか?」
「誘いは嬉しいのだが、いいのか?」
その、人間が妖精の村に行くって大丈夫なのかね?
「問題ないぞ人よ。君は精霊に懐かれておるからな」
うん?精霊?なにやらとっても有難そうなのに懐かれてしまったらしい。だが、辺りを見渡しても精霊らしきものは見えない。
「はっはっは。精霊とは見ることは出来んぞ。ごく少数の者だけがその存在を感じることができるのだ。さぁ、君の名前を教えてくれ。儂の名前はイルムだ。この子の名前はメリーじゃ」
「はい。私の名前は月社 知樹と言います」
メリーにイルムね。メリーちゃんとイルムじいさんで覚えれば良いかな。
「どれ、ついて来い。案内しよう」
私は川を渡ってイルムじいとメリーちゃんについて行く。イルムじいの歩くスピードは遅く、飛べないんですか?と聞いて見たら羽の寿命が来てもう動かせないとのことだ。妖精には羽の体の寿命が違う事がわかったのであった。
「あの、先程は申し訳ありませんでした。助けて頂いたのに距離をとってしまって......」
「気にしなくていいよ。外に出た事ないってことは人間を見たことなかったんだろ?いきなり出会えば怖がりもするさ」
「あ、ありがとうございます」
そんなぎこちない会話しているとイルムじいが笑い始めた。
「まぁ、メリーの人見知りは筋金入りじゃからのう」
そう言われたメリーは村長にしがみついて「そ、そんなことないですよ......」と顔を真っ赤にしてつぶやいていた。これがあの天使だと言うのか。演奏している時とのギャップがすごくて今の彼女は年相応に見えた。と言っても彼女の年は知らないんだけどね。
「メリーは何で琴を引いてたの?」
そう聞いて見るとメリーは答ずらそうに、口を開けたり閉じたりしていた。
「まったく、この子ときたら人前で引くのが恥ずかしくていつも森の外れで一人で引いているのじゃ」
イルムじいが私の疑問に答えてくれた。なるほど、人見知りを極めたらこうなるのかと学んだ。言われた当の本人は少し涙目になっている。
「あんなに素晴らしい演奏を他の人に聴かせられないなんて勿体無いよ!」
私は自分の想いをついつい言葉にして出してしまった。涙目だった彼女は今度は真っ赤になって俯いてしまった。
少し、表情豊かでから......面白いと思ってしまったが表情に出ないように笑いをこらえた。
「メリーちゃん。君の人見知りを治そう!今日から一緒に特訓だ!」
今度は目を思いっきり開いて驚いたかと思うと私の顔をみて俯いてしまった。
「ほう。治してくれるのであれば有難いな。メリーよ、知樹にお前の人見知りを治してもらうのじゃ」
「......はぇ?」
「返事は?」
「ふぁい!」
焦り過ぎて舌を噛んでしまったようだ。メリーは見ていて飽きないねぇ。
私はロリコンでは無いので性的興奮は覚えないが、普通に守ってあげたくはなった。なんていうか、娘のようだよ。あ、私は独身だけどね。