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俺の友達が強過ぎるんだが。  作者: 日向 渡
戦慄の林間学校
95/210

林間学校、終幕。

      ~~~~~鹿沼大輔の場合~~~~~



 結局、林間学校は一週間も行われた。俺は一番乗りだったし、罰ゲームも早期に終わったのでかなり羽を伸ばすことが出来た。

「いやー、まさか餓死者が出るとは」

「……それが途中ではぐれた桃華だとは思わないわよ」

 アルカニアがそう言った。見かけないと思ったらはぐれてたのか……。

「桃華の魔導武装の能力はかなり強いんだけど、代わりに使いすぎるとエネルギーが異常に消費されてお腹が空くらしいのよ。だからいっぱい食べるようになったらしいわ」



 あのマシュマロボディは本当の意味での蓄えだったのか……。

「でも脂肪は燃えないから痩せたりはしないとも言ってたわね。ダイエット、大変みたいよ」

「……難儀なもんだな……」

 強さにはやはり代償がつきものなのだろうか。

 俺とアルカニアが話しているところに、幽ヶ峰が現れた。

「…………その節は申し訳なかった」

 そう、俺に謝ってくる。会う度に謝られるのでこっちの気が滅入るというものだ。

「いーよ気にしなくて。……そうだ、お前に渡したい物があったんだ」

 そう、それは俺の密かな復讐計画。やり返すことでチャラにしてやろうという魂胆だ。



 自室に一人籠もり、ねちねちむちむちと作っていた特製ドリンク!

 原料は唐辛子とタバスコとわさびに胡椒! デスソース使うとそれ以外が全部負けるので今回は未使用だ!

 流石に原料がもったいないのでお猪口一杯分しか用意してないけどネ!

「丹精込めて俺が作ったドリンクだ。お前に真の料理ってやつを見せてやろうと思ってな」

 今世紀最大の嘘を真顔で吹聴しながら俺はお猪口を取り出し、ごく少量の特製激辛ドリンクを注いで幽ヶ峰に手渡す。

「さささ、ぐいっと、ぐいーーっと」

「……鹿沼、それ、エグい色してるんだけど」

 隣で俺を見ていたアルカニアが呆れたような声を上げる。だまらっしゃい。

「料理に対する情熱の赤です♡」

 自分でもしたことがないような笑顔が出た。



「…………いーっき」

 幽ヶ峰は居酒屋のおっさん特有の呪文を小声で唱えたあとに、特製ドリンクを一気に飲み干した。

 計画通り。ニヤリ。

「…………!」

 幽ヶ峰の目が見開かれる。かかった! 馬鹿めェーッ!

「…………美味しい! ……鹿沼はやはり料理上手」

「馬鹿なァァァァァァァーーーッ!」

 俺はその場に膝から崩れ落ちた。嘘だろ……まさかここまで味音痴だったとは……。

「…………舌への程よい刺激……旨辛とはまさにこのこと……」

 そう語りながら、幽ヶ峰はうっとりしている。



 ……まさか、マジで美味しいのか?

 俺はその疑念を打ち払うことが出来ずにいた。料理には結構な自信を持つ俺の特製配合だし、もしかしてもしかすると美味いのかもかものかも?

 悠人に飲ませ……いや間違えた、念のために用意していたもう一杯を飲んでみるか……?

 ただ、失敗して少し薄まってしまったものだからなあ。

「……これ、いちごとかの赤いフルーツを練り練りして一杯に凝縮したドリンク」

 やっぱり怖いので、人柱を立てることにした。アルカニアにプレゼントする。

「へえ、甘いのね。アタシも甘いものは好きよ」

 お猪口を受け取り、一気に飲み干す。



「………………」

 そのままアルカニアは俺の方へ寄ってくると、俺の服の襟を掴んで引っ張ってゆく。

 手には魔導武装、身体能力は強化済というわけだ。

 そして、訓練室に投げ込まれる。

吼えよ(タウレス)喰らえよ(エティア)炎の(フェルイグ)巨人よ(ガリナル)!」

「あ、マジでごめんなさ────ぎゃあああああああああああああああああッ!」



 普通に燃やされて死んだ。



      ~~~~~公崎悠人の場合~~~~~



「まだ身体の節々が熱い……」

 そう言いながら、大輔が自室から出てきたところに鉢合わせた。ちょうど用事があったので運がいい。

「嫌な関節痛だね?」

「お前の彼女に燃やされましたァーッ!」

「……彼女?」

「アルカニアだよ、アルカニア。いい加減付き合ってんだろ?」

 そんなことを言う。まあ、確かに一緒にいる時間は長いけどさ。



「やだな、僕なんかとミオが付き合うだなんて。彼女、一国の王女だよ? 僕なんかじゃとても」

「……お前、そのうち馬に蹴られるんじゃねえかな」

 馬? たまに大輔は僕にわからないことを言うなあ。

「で、なんか俺に用があるんだろ? そういう顔してるぜ」

「あ、わかるかい? ……じゃ、ちょっといいかい、これは真剣な話でね」

 大輔の顔も少し強ばる。

「ここじゃなんだ、部屋に入れよ」

「そうさせてもらうよ」

 コソコソと、大輔の部屋に入れてもらった。



「さて……」

 僕は部屋に備え付けられた椅子に座る。ちなみに、大輔はベッドに腰掛けている。

「実はね」

「……おう」

 大輔もいつになく真剣な表情で僕の言葉を待っている。

「女の子に告白されたんだ。どうすればいいと思う?」

 ガキィ! と甲高い音が部屋に鳴り響く。

「死ねーばいいとおもーうNA☆」

「待って! 本気だったよね今!? 本気で僕の心臓を貫きに来たよねっ?」



「チクショウ……ファッキン美形め……マジファッキン……」

「ご、語彙力を欧米にもっていかれている……そこまでの怒りを……」

 ジョークのつもりで言いはしたけど、つい先ほど他クラスの女の子に告白されたのは本当だ。

 そこはまあ中学の頃からよくあったことだし、やんわりと断ることに成功している。

 本題は別のことなんだけど……今の大輔は洋画に出てくるブチ切れたアメリカ人みたいな言葉で僕を罵ってきている。会話が成立する気がしない。

「いやさ、まあそういう冗談はさておきさ」

「ケツにコンプレッサーを突っ込むぜベイビーッ!」

「殺害予告!?」

 ダメだ、会話が成り立たない!



「疑心のサードのことさ」

「……お前を蝋人形にしてやろうか」

「急に真面目な話になったのは謝るけど、だからって欧米から地獄に行くのはどうかと思うよ」

「……ったく。笑えねえ冗談は程々にしてくれ」

 冗談ではなかったというか、緊張感をほぐすために言ったんだけど……逆効果だったみたいだ……。

「あいつは逮捕……っつか、自首したじゃねえか。あいつに関してはそれで終わりだろ?」

「君が結構な頻度で会いに行ってることを知ってるって言ったら?」

「…………」

 大輔の表情は、変わらない。



「魔導犯罪者は僕らの敵だ。君がわかってないはずがない」

「そりゃあそうだとも」

「ならどうして!」

「どうして……と言われてもな」

 僕には、大輔が何を考えているのかがわからない。

 魔導犯罪者は社会の敵なんだ。それは揺るぎないものだ。

「一体、何を考えてるんだ!?」



 僕の問いに、大輔はバツが悪そうに後頭部を掻く仕草をした。

「何を考えてるのか……ってぇと、何も考えてねえとしか返せねえな」

「ふざけてるのか?」

「ちげえよ。あいつは魔導犯罪者にしては悪人じゃねえ。言っちまえば、享楽主義の研究者さ。俺たちには協力的でな、なにせ研究場所を提供してる。あいつにとっての享楽ってのは、研究のことだからな」

 そう答える大輔の顔は、まさにいつもの大輔、というべきか。どこか大人びていて、そして、なんというか……諦観している? いや、違う。

 きっと。

 見ているモノが(丶丶丶丶丶丶丶)モノの見方が違うのだ(丶丶丶丶丶丶丶丶丶丶)

「強いて言うなら……俺は考えるために(丶丶丶丶丶丶)アイツに会ってる」



「それは……どういう」

 考えるために、何も考えずに? 僕には、大輔の言っている意味が少しわかりかねた。

「さっきも言ったが、アイツは協力的でな。俺はサードの作った魔導科学実験製品のモニターをする代わりにアイツは……まあ色々と俺に知恵やらを貸してくれてるってわけだ。ウィン・ウィンだろ?」

「…………」

 僕は押し黙る。きっと、大輔は僕の知らないところで……ずっとそういう綱渡りをしてきていたのだ。

「何かがあった時、俺はきっと考える。その時の選択肢を増やすために、アイツに会ってるのさ。だから……考えるためなんだよ」

「……わかった、これ以上は聞かないよ。僕が心配してたのは……大輔がユニオンに靡かないか、ってことだったからさ」

「冗談。年収一千万コースを無駄にするほど馬鹿に見えるかよ」

「それもそうだね」



 そうだ。彼は今までリスクマネージメントをしてきたじゃないか。

 一瞬でも疑ってしまった僕が恥ずかしい。

「じゃ、真面目な話はこれくらいにしとこうか」

「ほとんどお前が告白されたジョークに持ってかれたけどな」

「……まあ、それは申し訳なかったよ。ところで、だけど。この林間学校が終わったら何があるかは覚えてるかい?」

「おう、学校だな」

「そうじゃなくて」

「授業だな」

「テストだよ!」



 そう、実は現時点でテスト三週間前なのだ。

「嫌なことを……思い出させるな……」

「大輔、別に成績悪くなかったじゃないか」

「普通の教科はそれなりにな。問題は魔法実技なんだよ。中間試験では赤点ギリギリでしたチクショウ☆」

「ああ……でも今度の期末は大丈夫だと思うよ。でさ、実は勉強会なんかを考えてるんだけど、どうだい?」

「俺は構わねえぜ。ついでに康太とエリー兄妹も誘っとくよ」

 大輔も康太やエリオット君たちと一緒にいることが多くなってきた。少し寂しいくらいだ。

「さて、僕の用事っていうのはこれで全部だ。時間を取らせて悪かったね」



「いいや、気にすんな。抱いて当然の疑問だったさ。黙ってて悪かったな」

「こっちこそ、ちゃんと話が聞けて良かった。じゃあ、僕はこれで」

「ああ、こっちから一つだけ聞きたいことがあるんだ」

「? なんだい?」

「大事なことさ……」

 大輔は、僕を見つめる。



「告られた話は事実か?」



 いつになく、顔が怖かった。

「……あー、まあ、うん、本当のことだよ」

「そうか……そりゃよかった(丶丶丶丶丶丶丶)

「え?」

 ……大輔の手には、携帯端末。

 その画面は……通話画面だ。

「だそうだ」

「え? え?」

 程なくして、大輔の部屋にクラスメイトの男子たちが現れた。



「大輔!?」

「ゴートゥヘェェェェェェェェル……」

「断ったって言ってるだろ!?」

「告白されることそのものが……ギルティなんだよォォォォーッ!」



 その後。全員を苦労して倒したのちに馬鹿騒ぎを須崎先生に咎められる運びになった。

 僕は悪くないのに……。



 そんなこんなで。



 僕たちの林間学校は幕を下ろした。

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