トレイントレイン
~~~エリオット~~~
「せいっ!」
草むらから現れた人工魔物に天涯を叩き込む。
特に強くもなく、魔力を纏わせた魔導武装の一撃で人工魔物を倒すことが出来た。
そこまで苦でもないかな、と思いながら、僕はとりあえず誰かと合流するために歩き出す。
ここは森だ。草むらや木の上から敵が襲ってきた時、人数が多いほうが対処しやすいだろう。
同じクラスの人間か、あるいは大輔くんたちか……ともかく、既知の誰かと合流したいところだ。
……逆に、闇雲に歩いてみてもいいんじゃないかな?
ということにして、僕は歩き出した。
~~~康太~~~
「びっっっくりしたぁ……」
突然現れた人工魔物に数発の魔弾を撃ち込んで消滅させた。結構硬かったのでビックリした。
めちゃくちゃキモかった。それはもうすごく。
女の子だったらアレ、卒倒しそうだなあ……。
ともかく、大輔なり悠人なりを探そう。一人だと結構戦いがシビアだ。一体に結構な弾丸を使ったから、これが何体もいると思うと余裕がなくなってくるだろうし。
戦闘音を頼りに歩いていけば、誰なりにとは会えるはずだ。それを繰り返していけばそのうち大輔たちにも会えると思う。
というか、これだと会った人間全員仲間にならない? うーん……。
とりあえず、歩こうか!
~~~悠人~~~
「うーん……」
一撃で消え去る程度の弱い人工魔物ばかりだ。あまり訓練になるとは思えないけど……。
参ったな、最初からこういう訓練だとわかっていれば、探査系禁呪をチューニングしていたのに……もし今使ってしまうと……周囲の動物や人間の位置だけじゃない、山を超えた向こうにまで範囲が広がる可能性があるなあ。
チューニングなしの禁呪は基本的にとんでもない威力だ。そもそも調整が前提のものというか、マイナス補正を加えないとマトモに使えないシロモノなので、状況に応じてチューニングしていないといけない。
今からチューニングするとして……どれくらい掛かるだろう……。
よし、今から始めてしまって、終わるまで歩き回っていれば何かしら状況の変化もあるだろう。
ともかく、早いところ施設に着いてしまいたいね。
~~~大輔~~~
「ひいっ! ひいっ! 死ぬっ! これ死ぬうっ!」
俺は数匹の人工魔物に追いかけ回されていた。半泣きになりながら。
「効かないんですけど! 効かないんですけどォ!」
魔力を纏わせた魔導武装で攻撃を試みたところ、まあ、傷は付いた。付いたんですけど、なんか徐々に治っていきました。
おかしい。絶対におかしい。
すごくカッコつけて、さっき『インパクトの瞬間に魔力を纏わせる……ふっ、俺の魔力コントロール技術も成長したもんだぜ』って一人で呟いてたのに! 目の前でジュワジュワ音を立てて傷が治っていくのを、俺はただ見守ることしか出来なかった。
キシャーと声を上げる人工魔物。ギニャーと声を上げる俺。
その鳴き声と泣き声につられて現れる新手×2。
で、今に至るわけである。
おかしい。歓迎戦の時にはちゃんと倒せていたのに。……これ、魔物そこそこ強いんじゃねえか?
とすると、つまり、だ。
俺の手に負えないってことだよね☆
このまま逃げ回れば誰かしらになすりつけられないだろうか。
魔物は魔力で出来た存在であるが故に、基本的に魔力保有量の多い人間を狙う。人の魂も魔力になりうるので、無魔力者も魔物に狙われる。優先順位は低いが。
ほとんどの生徒は俺よりも魔力保有量が多いんだから、魔物は特性上そっちに行くはずだ。
この人工魔物たちはそこまでスピードの速いタイプでないようだし、大量に引き連れていってやろう。
どうせ俺じゃロクに倒せないし。
~~~エリオット~~~
突然、大量の人工魔物が襲来した。
「う、うわあああああ!?」
多い。あまりに多すぎる。見た目も非常に気味の悪いものなのに、眼前を埋め尽くすほどの量だから視覚的に最悪だ。
「くそっ……!」
僕が得意とする風水魔法は非常に魔力の消費が大きい。ここで使ってしまうと、数日持つかどうか……。
──どうする、どうする、どうする!?
勝てない敵じゃない。魔導武装で一撃だが……纏わせる魔力も馬鹿にならない。ムチ状の魔導武装だから一度に数匹は攻撃できるにしても……攻撃中に囲まれてしまうだろう。
ここは──逃げたほうが確実だ!
僕は逃げることにした。
~~~大輔~~~
一心不乱に逃げていたら、気付いたときには魔物がいなくなっていた。
なんかよくわかんないけど、助かった、うん。
ゴメンネ、見知らぬ人。
~~~康太~~~
なんだか、近くで大量の気配が動いている。人工魔物だろうけど……そんな集団で動くものなのだろうか……。
「……ん?」
こっちに来てない?
「こ、康太くん!? これどうにかしてくれたまえ!」
エリオット君が大量の人口魔物を引き連れて走っている。
「わああああド迷惑うううううう!」
何故、何故一直線にこっちへ走ってきてしまうのか。
結局、エリオット君と並走して逃げることになった。
~~~エミリア~~~
いませんわいませんわ。
どこにも、どっっっこにも知り合いがいませんわ。
せめてお兄様ぐらい見付けられてもいいと思うのですけれど……。
あるけど
あるけど猶わが知人見付からざり
ぢっと森を見る
ですわ。
別に縦読みじゃありませんことよ。
しかし……どれだけ広いのでしょう、この森は。
ずっと景色が変わらないものですから、海外製オンラインゲームの森マップを歩いている気分になりますわ。テクスチャ使い回しみたいな感じですわよね。
そんなことを考えながら歩いていますと、地響きが起こりましたわ。それも、どんどん近付いてきますわね。
「……何事ですの……?」
遠くから、声が聞こえてきます。
「………………ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
叫び声……ですわね……。
というか、とても既視感……いえ、既聴感のある声ですわね。
とりあえず声の方へ向かってみるとしましょう。
~~~康太~~~
「なんでこうなりますのおおおおおおおおおおおおおお!!」
エミリアちゃんが加わった。人工魔物から逃げるメンバーはこれで三人になった。
「ねえ、これ逃げ回ってたらいつものメンバー全員揃うんじゃない?」
「途中で悠人くんが来たら、その時点で逃走劇は終わるだろうね」
「なんで……なんで普通に会話してますの……?」
「そもそもボクとエリオット君が集まった時点で倒そうと思えば魔力も温存しつつ倒せるんだけどさ。なんか逃げてる間に……楽しくなってきちゃって……」
「なんで変な方向にエキサイトしてしまったんですの!?」
「あと、これ結構目立つんだよね。この状況はいかに集団行動を取れるかっていうのもあるだろうから、まあおあつらえ向きってことさ」
「はあ……まあ、魔導武装を顕現したまま走っていれば確かにそこまで疲れませんけれど……」
実際、ボクもこの騒ぎに引っかかった感じではあるし……。
「クラスメイトとかも捕まえられるかもしれないね、うん」
「こういうの、すっごく他の生徒に迷惑だと思うのですけれど?」
「どうせ僕らは高ランクだ。魔物が他所に行くことはないと思うよ」
「それ……絶対に大輔さんの前で言わないでくださいまし……」
「? ああ、うん、わかったよ」
キョトンとしてる! ……絶対わかってないな……。
「で、これいつまで続けますの?」
「あともう一人くらいには合流したいね。こうやって引き連れてれば、後ろの方の魔物はより近い高ランクの生徒に近寄っていくだろうから、それをある程度の距離で追えば、他の高ランク者に会えるだろう、と僕は踏んでいるのだよ!」
「…………」
ああ、エミリアちゃんが『それじゃ少なくとも大輔さんには会えませんわね』って顔をしている……。
「ともかく、もう少し走っていようか」
~~~大輔~~~
静かだ…………。まるで魔物なんていないかのような穏やかさ……。
さっきからほんと何にも遭遇しない。人にも、魔物にも。
こんな状態が……いつまでも続けばいいナ……。




