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俺の友達が強過ぎるんだが。  作者: 日向 渡
ユニオンとの戦い
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舞台裏

 真っ白な、いや、ただ、白い壁紙が貼られただけの、味気ない部屋。

 例えるならば、机も椅子も、何一つ置かれていないオフィス。

 …………だったのだが。プラネタリウムで星空を映しているかのように、壁紙にも、天井にも、床にも青空が広がっている。ここに立っていると、空中を歩いているようにさえ錯覚するだろう。

 そこに、少女が二人と、少年が一人。

「だいすけ、おきて、だいすけ」

「大丈夫、大丈夫。きっとすぐ目を覚ますよ。シエルちゃん、あんまり揺らすと……ああ、倒れちゃった……」

 壁に寄りかかって座っていた大輔の身体が、シエルに揺さぶられ、そのまま力なく倒れた。

「…………ふぇ」

 シエルが涙目になる。

「わあああ待って待って! 寝てるだけ! 寝てるだけだから!」

「…………わかった」

 まさか、自我を失っているだなんて言えない。……言ったところで、この年齢の子にわかるかどうかもわからないけれど。

 飛鳥は少し気になった。どうしてそこまで鹿沼大輔に懐いているのか。



「ねえ、鹿沼くんのこと、好き?」

 好奇心から、飛鳥はそんなことを聞いた。緊張感の無い質問だな、と思ったが、辛気臭いよりはいいだろう。

「…………すき」

 言って、シエルは微笑んだ。飛鳥は、悶えた。彼女は心中叫ぶ。

 なんだこの可愛い生き物。

「どういうところが?」

 掘り下げてみる。

「んー……いっぱい」

「例えば?」

「ごはんがおいしい」

「料理するんだ……」

「あとねー、たすけてくれるの」

「鹿沼くんが?」

 そういうの、鹿沼くんは面倒臭がりそうだけど……と飛鳥は思った。彼女の中のイメージだと、人助けの類はどちらかと言えば悠人の方が担当しているのだ。

「へんなひとたちにね、とじこめられてたらね、だいすけがきてくれたの」

「そんなことが……」

 飛鳥は意外そうに頷いている。彼女の中の大輔へのイメージが変わりつつあった。



「んー……」

 次はどんなことを聞こうか……と飛鳥が悩んでいると、突然、部屋の扉が開いた。

「誰ッ!?」

 飛鳥はシエルを守るように身を乗り出し、扉の方を睨みつける。

 そこには、疑心のサードが立っていた。

「よう、嬢ちゃんたち? 悪いな、こんな場所に詰め込んじまってよ?」

「……なんの用?」

 サードは肩をすくめた。

「嫌われたもんだな? ま、当然だろうけどな? ……用があるのは嬢ちゃんたちじゃないぜ? そこに寝っ転がってる間抜けなヤツに用があって来たのさ?」

「魂が魔力(エナ)として消費されて、今は抜け殻みたいなもの……なんでしょう? そんな彼に、一体何を?」

「いつ目覚めるのかは俺にもわかんねえからよ? 今すぐ目覚めるかもしれねえじゃねえか? そうなっちまうと、ここから逃げ出されるかもしんねーだろ? だから別の部屋に移動させんのさ?」

 言いながら、サードは悠々と歩いて部屋の奥――飛鳥とシエル、そして大輔に近付く。

「そう睨んでくれるなよ? 俺はこいつを別室のベッドにでも転がしとくために来たんだぜ? 誓って危害は加えねえよ?」

「……本当なの?」

「こいつには利用価値がまだあるもんでな? ここでどうこうしても仕方ねえのさ?」

「……そう」

 サードは、大輔を担ぎ上げる。

「じゃ、また後でな?」



 その姿が掻き消える。

「…………鹿沼くん、大丈夫かなあ……」

「だいすけ……」

 震えるシエルを、飛鳥は抱きしめた。

「きっと大丈夫。また会えるよ」

 飛鳥には、そんな言葉をかけることしか出来なかった。


      ~~~~~~~~~~


 オフィスビルの、屋上。

 高めのフェンスに囲まれているだけの、何もない場所。

 少し見上げれば、透明の膜のようなものがうっすらと見える。それこそが、ここを覆っている結界だ。

 そこに、サードが転移してきた。

「ふう……さて、こんなところかね? なあ、鹿沼?」

 サードは俺の身体を乱雑に降ろす。

 ぐえ、という声と共に床に叩きつけられた俺は、ゆっくりと(丶丶丶丶丶)立ち上がった(丶丶丶丶丶丶)

「こんなところもクソもねえよ。話が違うじゃねえか」

 そう、俺は言った。

「迫真の演技だったじゃねえか? 死体役、向いてるんじゃねえか?」



「死んだフリに演技力もクソもあるか。……魔導士とドンパチやって貰ってる隙にシエルと白鷺さんを逃がして俺らも脱出っつー至極簡単な話だったろ? こんなとこに連れて来るのは話が違うぜ」

「仕方ねえだろ? 状況がややこしいことになっちまったんだからよ? 俺だけで考えるのもなんだ、お前の意見も聞いておこうと思ってな?」

「それは構わねえけどよ。さっきの口実はともかく、お前はこんなとこにいて大丈夫なのかよ?」

「平気さ? なんでだか知らねえが、どうにも俺ァあいつに無駄に信頼されてるらしいからな? 言われた通りに魂を捕まえるビンとか作ったり転移とかしてやってるだけなんだがなァ……」

「うん、それだと思うナ」

 言った仕事をキチンとこなすヤツで、特に何も言わず社会的に悪とされる組織に属しているのならそりゃあ信用されるだろう。出来るヤツだと思われるだろう。

「そんで、ややこしい状況ってなァなんだよ? 魔導士が全滅したとか言うんじゃねえだろうな」

「お前のダチ御一行様が来たんだぜ? いや、呼んだのは俺だけどな? 夢想が連れて来いって言うもんだからな? 逆らったらどうなるかわかったもんじゃねえし?」

 それはややこしい。……しかし、悠人までこっちに来ているのか。なんだかなんとかなりそうな気がしてくるまである。



「どうも夢想サマはキミザキ……とやらに因縁があるらしいからな? 他にも何人かこっちに転移させたが、そっちは蠱惑やら叛逆やらが相手してるな?」

「叛逆っつーと……」

「俺とは逆の立場の裏切り者さ?」

「黒鳥か……」

 どんな事情があるのか知らないが、エルゼラシュルドを裏切って魔導犯罪組織にいるのだから退学はまず免れないだろう。

「どうしたもんかね……悠人の勝敗で俺たちも動きを変えなきゃならんかもしれねえぞ」

「俺らがやることは、シエル……だったか? あのガキとシラサギの脱出を補助しつつ夢想を魔導士共に逮捕させることだな?」

「ああ、そうなるな。加えて、お前をどうにかして逮捕させないようにするってのもある。それが今回の取引だからな」

「高校生とは思えねえぐらいズルいヤツだな?」

「取引をふっかけてきたのはお前だろうよ」

 言って、二人は不敵な笑みを浮かべる。



「俺ァこんなとこはもう散々なんだわ? 魔科学の研究がしてぇもんでな? そういう場所さえありゃあいいんだわ? なんで全部終わったら口利きよろしく?」

「俺もこういう面倒事は散々だ。とっとと終わらせて家に帰って死ぬほど寝たい。なんで全部終わらせるために協力よろしく」

 これはもうほぼほぼ利害が一致していると言っても過言ではない。

「じゃ、場を出来るだけ掻き乱さずに、無駄なく効率的に済ませちまおう?」

「ああ。俺終わるまでほとんどやることないけどな」

 ともかく。

 表舞台の状況は全くもってわからないが、舞台裏での動きはこんな感じでいいだろう。

 全部上手く行けばいいのだけれど。


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