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俺の友達が強過ぎるんだが。  作者: 日向 渡
ユニオンとの戦い
78/210

VS叛逆のスワン

 火花が散る。エミリアは踊るようにレイピアを振るい、スワンは具足で防ぐ。

「出会って間もない他人のために、よくもまあそこまで怒れるね!」

「そうですわね。自分でも不思議です、わ……よっ!」

 レイピア、魔導武装『朝焼』を、スワンの頭蓋目掛けて振り下ろす。

「チッ……ウザったいから!」

 スワンは、エミリアを蹴り上げる。エミリアは朝焼の腹で受け止めるが、勢いは殺せず、打ち上げられる。

「くっ……」

 飛ばされたエミリアを追い、スワンは跳ぶ。瞬時にエミリアよりも高高度へ辿り着いたスワンはそのままエミリアへ踵落としを放つ。

 エミリアはまたも朝焼で防御するも、そのまま地面へ叩きつけられる。

「がっ……は……!」

「とどめっ!」

 倒れたままのエミリアに、スワンは急降下攻撃を放つ。

「…………!」

 腹部への攻撃だと察したエミリアは、急いで身をよじる。寝返りを打つように回転し、これを回避する。



「……! あともう少しで腹に穴が空くところでしたわよ!」

「顔にしなかった分、有り難く思いなよね」

「ええ、それはどうも! おかげ様で、なおさら貴女を倒すのに精が出ますわね!」

「減らず口!」

 スワンがエミリアに急速接近し、横薙ぎに蹴る。エミリアは防御も反撃も行わず、大きく後方へ跳んで、距離を取る。

「そろそろ終わらせますわよ。無駄な時間を過ごすのは、わたくし、好きじゃありませんの」

 言って、レイピアを床に突き刺す。

虚装増加(スケールアップ)!」

 朝焼と地面の接地点から、魔法陣が広がる。

「やらせるわけないじゃん!」

 スワンはエミリアとの距離を詰めるために、少し屈む。

「いいえ、もう終わりましたわよ──頭上に注意なさったらいかが?」

「…………?」



 瞬間、スワンの耳のすぐ傍を、何かが掠めた。一瞬の風切り音と、甲高い金属音。

 スワンは、視線だけ動かして、金属音の方を見た。そこには、朝焼が床に突き刺さっている。

 ──投げた? いや、現にあそこに刺さってる。魔法じゃないなら、固有魔法(パーソナルスペル)

「あら、その顔は知らない顔ですわね。まあ、比較的マイナーなものですから、仕方ないと言えば仕方ないのですけれど」

 エミリアの周囲には、30本程度の朝焼と同じデザインのレイピア。無造作に空中に浮いてはいるが、その切っ先は全てスワンの方を向いている。

 虚装増加(スケールアップ)は、魔導武装を任意の数だけ生み出すことの出来る固有魔法(パーソナルスペル)だ。ただし、生み出された魔導武装は脆く、数度の使用で破損し、消える。一本作成するだけでもそこそこの魔力(エナ)を消費するため、ランクA以上でなければすぐに気絶するだろう。

「……やっぱり、32本が限界ですわね。まだ、構成に無駄が多いせいで消費魔力(エナ)が半端じゃないですわ……」

 そう呟いて、スワンを強く睨みつける。

「短期決戦で!」

 レイピアが動く。一本、また一本と射出され、スワンへと向かう。

「へえ! 大技じゃん!」

 スワンは最初に飛んできた2本のレイピアを、バク転で回避。その勢いのまま、少しだけ体勢を崩しつつも全力で走り抜ける。スワンの背後の床に、レイピアが次々と突き刺さり、数秒して消える。



 ──コントロールと維持に難がありますわね……。出来れば、外れたモノもそのまま再利用出来れば一番いいのですけれど……再構成にまた魔力(エナ)を消費して、非効率の極みですわね。笑えませんわ。

 エミリアは自嘲し、レイピアを飛ばし続ける。しかしスワンは悉くを回避し、どんどんとエミリアに近付いてゆく。

「ほら、もうすぐアンタをぶっ飛ばせる距離!」

「朝焼ッ!」

 叫ぶと、エミリアとスワンの間に、10本のレイピアが並ぶ。盾代わりだ。

「そらッ!」

 スワンは蹴りを放つ。レイピアを5本ほど破壊したところで、勢いがほんの少しだけ弱くなる。

「このまま吹っ飛ばしてやるからッ!」

「くっ……こ──のっ!」

 勢いが弱まったと言っても、人一人を吹き飛ばすには充分な速度。

 ──駄目、防御が間に合わ、な──!


「天涯ッ!」


 スワンの足が、突然止まる。

「な──」

 具足には、鞭が絡まっていた。

「僕は回復魔法が得意じゃなくてね──折れた腕を治すのにも、骨が折れたよ」

 エリオットが、天涯を手に、立っていた。左腕は痛むのか、あまり動かさないようにしているようだ。

「チッ……なら!」

 天涯が絡まっている足を軸に、身体を捻り回転させ、もう片方の足でエミリアを狙う。

 同時に、乾いた銃声と、金属音。スワンの具足は、突然衝撃を受け、方向を変える。

「忘れてたかも知れないけどさ、ボクもいたんだよね」

 手には、火縄銃。晴天だ。

「ケリを付けましょう、黒鳥さん」

 エミリアは、指を鳴らした。


「終わりですわ」


 全てのレイピアが、スワンに突き刺さる。

「あ、ぎ、あ、ああああああああああああああああ!!!!」

 響く悲鳴。レイピアは致命傷となる部分には刺さってはいないが、その数は、再構成された物も含めて、14本。それは徐々に消えてゆき、また、エリオットも天涯による足の拘束を解いた。

 スワンは、その場に倒れこむ。

「少々、手荒でしたわね。逮捕魔法を詠唱した後、貴女にとどめを刺します。ですが、こちらから一つ、聞きたいことがあるのですわ。まあ、言いたくないのであれば無理に聞きはしませんけれど」

「…………ふん……聞くだけ……聞いたげる……」

「貴女達の目的を知りたいのですけれど」

「…………そん、なこと…………簡単……」

「?」

「世界から……魔素(マナ)を全て消し去る…………それが……夢想一派の目的……」

「そ、んな。そんなことをしたら、全てのバランスが乱れますわよ!」

「夢想の動機なんかは……知ったことじゃない……けどね……」

「……もう、充分ですわ。阻止しなければならないのは確実。貴女を逮捕します、黒鳥夕緋さん。──悪しき(ランヴル)者を(ニンザ)捕らえよ(カフトーラ)

 魔法陣から、光の鎖が現れ、スワンの周囲に漂う。



「無抵抗の敵を殺すのは流石に良心が咎めますわね……」

「なら、保有魔力(エナ)に直接攻撃すればいい。魔力(エナ)に対する攻撃は、身体には傷が付かないからね。逮捕魔法の対象になっている状態で魔力(エナ)が尽きれば、死亡と同じ扱いになる」

 エリオットが言った。エミリアはなるほど、と頷いて、朝焼を、相手の魔力(エナ)へ攻撃するように調整した。

「では、おやすみなさい。後で会いましょう。鉄格子越しですけれど、ね」

 朝焼を、スワンに突き刺した。血は一切出ないが、スワンは呻く。体内の魔力(エナ)が急激に減り、気怠さ、気分の悪さなどの不快感が押し寄せたのだ。



 スワンの身体は徐々に薄れてゆく。魔力(エナ)が切れかけているのだ。

「あ……ご、めん……飛鳥…………」

 そう呟いて、完全にスワンの身体は消えた。逮捕魔法の対象になった人間は、蘇生地点が拘置所になる。

「……急ぎましょう。大輔さんの安否も気になりますし、悠人さんに加勢もしなければ」

「そうだね」

 ──とは言え、余りにも魔力(エナ)の消費が激しすぎますわ……。悠人さんの足手まといになるだけですし、わたくしとしては大輔さんを探したいのですけれど……。

「ともかく、この部屋から出ましょう。あまりに何も無くて、少々気味が悪いですわ……」

 康太とエリオットが頷く。

「うちの訓練施設も、投影前はこんな感じだけどね」

 そんなことを言いながら、歩き出す。

「う……」

 エミリアが、よろめいた。

「だ、大丈夫かい、エミリア!」

 エリオットが駆け寄る。

「す、少し、魔力(エナ)を使いすぎたかもしれませんわ……」

「休憩していくかい?」


「い、いえ。なんとかついていきますわ。ここで一人になって、魔導犯罪者に遭遇したら終わりですもの……」

「せめて、肩を貸そう。康太くんは周辺を警戒してくれるかい? このタイミングで襲われたら少し厄介だ」

 言って、エリオットはエミリアに肩を貸した。

「そうだね。……でも、どうする? 悠人のところへ行くか、大輔を探しに行くか……」

「個人的には、大輔くんのところへ行きたいけれど……」

 エリオットは逡巡する。事の解決を急ぐか、友を救うか。

「……悠人さんの助太刀に行けば……敵の目論見を破れる可能性は上がるでしょうけれど……代わりに大輔さんの身が心配ですわ……しかし、大輔さんを助けても、悠人さんが敵に負ければ全て水の泡ですわ……ここは、悠人さんのところへ行きましょう……」

「……確かに、その通りだね。助けたとしても、彼は今、動けない状態かもしれない。動けないなら、助けてからが大変だ。動けるなら動けるで、なんらかの形で幽閉されている可能性があるね。そうなると、救出そのものが困難になる……」

 康太も、それに頷いた。

「そっちのほうが、楽に終わるんでしょう? 反対する理由はないよ」



「……それでは、この方針で。……しかし、無駄に大きな部屋でしたわね……」

 三人は、白い部屋を出る。普通のオフィスビルの廊下に出た。

「この部屋、転移魔法でどこかに通じてたようだね。この規模のビルに、こんな部屋があるなんておかしな話だったけどさ」

「ともかくさ、悠人のとこまで行かないとだね」

「ああ。このビル内であることは間違いないから、警戒して探そう」

 言って、歩き出す。その時。



「よお? スワンを倒したな? やるじゃねえか?」



「────!」

 何度も聞いた声が、どこからともなく掛けられる。廊下には、三人以外の姿はない。

「疑心の、サード……!」

「覚えられてるようで何よりだぜ?」

 声だけが、廊下に響く。

「いったい、なんの……」

「何の用かって? いや何、お前らが間違った方向へ行きそうだからよ? この俺がちょちょいっと嫌がらせしにきたわけだ?」

「くそ……姿を見せろ!」

「やだよ? 出たら確実に捕まるじゃねえか? 俺ァ戦闘とか嫌いでな? 穏便に行こうぜ、穏便によ?」

 エリオットは唇を噛む。

「貴様……!」

「まあ落ち着け? ……なに、こっちにもやらにゃならんことがあるんでな? お詫びと言っちゃなんだが、これだけは教えておいてやるよ?」

「…………」

 康太は周囲を見渡し、エミリアとエリオットはただ黙って声を聞いている。



「カヌマダイスケは無事だぜ? ……まぁ、消えちまった自我も今月中には治るだろうさ? ……よし、お詫びは伝えたんで、ちょっくらトリップだ? なに、お前らとしても得だろうさ?」

「一体、何を……」

 パチン、と指が鳴る。



 途端に、景色が一変した。


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