VS蠱惑のフィザン
「死になさいッ! 炎よッ!」
木々が焼け、蟲は空を飛び回る。
「おいおい、ちったァ容赦しやがれ。どンだけの蟲が死んだと思ってやがる」
「知ったことじゃないわよ! 炎よ、強く爆ぜろ!」
ミオが詠唱を終えると、赤い魔法陣が光を放つ。それよりも少し早く、蠱惑のフィザンはその場から飛び退いた。大きな爆発が起きるが、フィザンには届かない。
フィザンを睨みつけるミオに、葵が話し掛ける。
「…………気を付けて。……まだ敵は魔法を一度も使ってない。……あの蟲達は、魔法による操作でこっちへ攻撃してきていない」
戦闘が始まって五分ほど経つが、フィザンは一度も詠唱をしていない。にも関わらず、魔導蟲──魔力によって生み出された蟲だ──は一定間隔で、ミオと葵へ襲い掛かっている。それに対し、ミオは低ランクの炎属性の魔法で牽制しているが、蟲たちは一向に減る気配を見せない。それどころか、燃やせば燃やすほど増えている、とさえ葵は感じていた。
「…………蠱惑を倒さない限り、魔導蟲は増え続けると思われる。……全力で行かないと、何時まで経っても悠人の元へ行けない。…………ただでさえ、現在地から向こうへ戻るまで、どれほど掛かるかさえわからない」
「……それもそうね。相手が逃げに徹している以上は、こちらも全力で行かないと埒が明かないわ……来なさい、雲煙」
ミオは魔導武装を顕現させる。それは、一冊の本。その本の装丁のデザインは、実に普遍的だ。朱色の装丁には、タイトル以外の文字が記されていない。もしも図書館の本棚に紛れてしまったら、見付け出すのに骨を折るだろう。
「…………来て、雲海」
葵の手に握られているのは、葵の身長の二倍ほどの諸刃の大剣。それを、片手で軽々と持っている。魔導武装は、所有者が最も扱いやすい重量に最適化されるため、少女であっても大剣を扱えるのである。
「へぇ? ちッたァ楽しくなりそうじゃねェか」
「舐めてかかると叩き潰すわよ!」
ミオは魔導書を開く。中には魔法語が隙間なく書かれていた。魔導書は、記載されている省略魔法語を詠唱することで、短時間で高火力の魔法を使う事ができるという、通常の魔導武装とは異なり物理攻撃よりも魔法攻撃に特化した魔導武装だ。
「炎の化身よ! 我の声に応えよ、その身を現せ!」
詠唱。雲煙に記された文字が光を放つ。炎のように、真っ赤に。
「さあ、行くわよ──アイフリッテン!」
雲煙から、炎が噴き出す。それらは一箇所に集まり始める。
炎は球形になり、少しずつ大きくなっていく。
まるで、殻でも割れたかのように球形は破裂し、火の粉が散る。
現れたのは、一本の角に獣の顔と、人間の上半身、形を成さずゆらゆらと揺れる下半身を持った炎で構成された召喚獣。
右腕には剣を、左手には盾を持っているが、それらも炎である。
「召喚魔法かァ? 珍しいモン見たぜ」
「あら、そう? 案外こっちじゃメジャーじゃないのかしら」
「あン?」
「向こうの世界じゃ、召喚魔法なんてポピュラーもポピュラーなのよ。……ま、いいわ。そこ、通してくれる? 蟲が多すぎて気分悪いのよ」
「こんなに可愛いッてのによォ。もっと数を増やせば慣れるかねェ? もっと来い」
至る所から、無数の羽音。耳元で蚊が飛んでいる時の、不愉快な音が辺り一帯に響き渡る。
「……い、今すっごくゾワッとしたわ」
「綺麗なハーモニー奏でてるじゃねェか」
「……アンタの趣味嗜好にとやかく言うつもりはないけど、全部燃やしてしまっていいのかしら」
「一寸の虫にも五分の魂って言葉を知らねェのかよ?」
「魔導蟲に命なんか無いでしょうが」
「まァ、その通りなンだけどよォ。……で、テメェの連れは何やってンだ?」
「え?」
ミオは隣を見る。そういえば、蟲が増えた辺りから葵は全く喋っていなかったような──。
「………………………………」
震えていた。魔導武装を傍に置いて、両手で両耳を塞いで、屈んでいた。
「……もしかしてアンタ……蟲、嫌いなの……?」
「………………………………」
耳を塞いでいるため、ミオの疑問も届いていない。
『アンタ何やってんの!? 緊迫した状況だったのに台無しじゃないの!』
咄嗟に、魔素を繋いで声を掛けた。だがミオの視線は、フィザンに向けられている。
『…………あの羽音……無理…………マジ無理……』
『アンタがマジ無理とか言ってるの初めて聞いたわよ!?』
『…………誰にも得手不得手はある…………後はよろしく』
『一人で戦えって言うの!?』
『…………出来る限りの援護はする……』
「ああもう! 使えないわね!」
ミオは通話を切って、フィザンに全神経を向ける。
「会議は終わったかよォ?」
「ええ、おかげさまでね。こっちに攻撃してこなくて良かったの?」
「まァ、お前らを殺すのが目的じゃねェからなァ。あくまで足止めだ。それに、この状況で殺しちまうと厄介なンだよなァ」
その言葉に、ミオは引っかかる部分を感じた。
──むしろ、死んで病院へ飛ばした方が都合がいいはずじゃないのかしら。それとも……何かしらの理由で、死んだ場合、面倒なことになるのは確実でしょうね。
「とりあえず……アイフリッテン、前身して斬り伏せなさい!」
炎の召喚獣は真っ直ぐフィザンの元へ飛び、剣を振り下ろしたが、フィザンはこれを余裕の表情で回避する。
「俺も可愛い蟲と踊ろうかねェ。来い、タクト」
フィザンは魔導武装を顕現させる。それは、指揮棒。捻りもクソもないネーミングである。
「蟲よ、蟲よ、喰らえ、惑わせ、殺さない程度にな」
そう詠唱して、フィザンはタクトを振る。蟲は、複雑に動き始めた。
──それぞれの魔法語の、一見意味も無いような動詞に魔導蟲の行動を当てはめている……吟遊詩詠唱だなんて久しぶりに見たわね……。……ともかく、あの魔導蟲は炎が効く。ある程度牽制しつつ、視界を確保しながら動きを見た方がいいでしょう。
吟遊詩詠唱とは、数ある詠唱文法の一つで、主に魔導生物を操る際に用いられる詠唱法だ。
──魔法語の一つの単語それぞれに、複数の種類の魔導蟲への指令が混ざり合ってるわね。それぞれの動きを完全に把握しつつ、均等に魔力を分配する……これはとんでもない使い手に当たっちゃったみたい。ツイてないわ。
ミオは心の中で吐き捨てて、アイフリッテンに魔力を強く流し込む。アイフリッテンの火力が強くなる。
「アイフリッテン! 斬りなさい!」
炎の巨人が手に持っている剣は、10mほどにまで巨大化し、フィザンに向けて──ではなく、ただ、目の前一帯に向けて、横薙ぎにした。
「蟲よ、蟲よ、踊れ、歌え!」
羽音が一際大きくなった。ミオはたまらず耳を塞ぐ。同時に、前方から凄まじい勢いで突風が吹き、ミオの身体は浮いた。耳を塞いだ手も耳から離れ、耳朶を打つ不快感が、ミオの集中力を削いでゆく。
「もう、もう! 蟲なんかほんと大ッ嫌い! アンタ、そんなんじゃ一生モテないわよ! アイフリッテン! この音止めて! 止めてったら!」
それは、詠唱でもなんでもないような悲痛な叫びであった。不愉快な羽音のせいで集中して魔力を召喚獣に送り込むことも出来やしない。
だが、アイフリッテンは動いた。召喚者を守るかのように、左腕の盾を──蟲の群れに向かって投げつけた。
盾を模した炎塊が、魔導蟲を焼いていく。
「あァーッ!? 詠唱もナシに召喚獣動かすたァどういう了見だァてめェ!」
魔導蟲の数が減り、不快な羽音の音量が小さくなる。
「はぁ……はぁ……あー、まだ耳の奥がゾワゾワするぅ……これ、葵が死んでてもおかしく無いんじゃないかしら」
「畜生、畜生、クソッタレめ! 蟲がどんだけ死んだかわかってンのかァ!?」
「アンタの魔力で生まれた非生物でしょうが! いちいちヒス起こしてんじゃ無いわよ!」
「許ッさねェ! 蟲よ、蟲よ、殺さない程度に殺しなァ!」
フィザンは叫んで、タクトを勢い良く振り下ろす。
「そんなんじゃ女にモテないわよ、アンタ! 迎撃しなさい!」
クワガタのような角を持った魔導蟲がミオに襲い掛かるが、アイフリッテンはこれを難なく退ける。
「女になンざ好かれなくても構わねェよォ」
「あら、まさか蟲が恋人だって言わないわよね?」
「大当たりだよォ。少なくともてめェよかは魅力的だぜェ?」
「んなっ……!」
「赤髪ツインテ炎使いとかもう世界にどンだけいるンだッて感じだしィ?」
「アイフリッテン! 燃やして!」
ミオの半ギレの指示でアイフリッテンは炎の剣を振るうが、フィザンはこれを笑いながら回避。加えて、タクトを振りかざした。
「蟲よ、蟲よ、僕の言葉を聞いておくれ。嗚呼、嘆かわしい、在り来りな弱者が君を笑うんだ」
フィザンは詠唱を始める。タクトを、まるでオーケストラの指揮でもしているかのように振る。その周囲には、魔導蟲が大量に渦巻き、とても近付ける状況ではない。
「マズいわね……吟遊詩詠唱、何起こるんだかわかったもんじゃないから大ッ嫌いなのよ! じゃあこっちも新しいの、試そうかしらね!」
ミオはアイフリッテンに魔力をより多く送り込む。
「意思接続……全く、この国の発想はブッ飛んでるわよねえ。まさか、召喚獣と自分の意思を混ぜ合わせて、挙句融合しよう、だなんて……私らみたいに、歴史や伝統に縛られてちゃ思いつきさえしないわ」
アイフリッテンの姿が、虚ろになってゆく。炎は揺れ、陽炎が大きくなる。
そこで、フィザンの蟲の動きが変わった。
「だから、君は怒っていい。君は食い散らかす側の強者なのだから……ってなァ」
フィザンはタクトを振り下ろす。魔導蟲はフィザンの眼前に固まっていき、どんどん形を成してゆく。
「スイミーって絵本が懐かしィなァ。まァ──集まって大きく見せよォッてンじゃなく、集まって別個体になってンだから、キングなスライムが近いかもなァ?」
「やかましいわよ蚊柱! 速攻燃やしてやるから覚悟なさい!」
「ひでェなァ……可愛いのによォ……」
飛んでいたほぼ全ての魔導蟲が、一箇所に固まる。粒のように見える魔導蟲は、カプセル状の塊に集合した途端、他の個体と結合し、別の「個」になってゆく。
それは、蛹。
「これが端ッから出せりゃ楽なンだがなァ」
全ての魔導蟲が、一つの蛹へと変異しきった。それと同時に、ミオの傍らにいた炎の巨人が消える。
「アイフリッテン! その炎、借りるわよ!」
ミオの身体が、炎に包まれる。
──疲れるし、出来れば温存しておきたかったのだけれど……召喚魔法じゃ指示と実行のラグと……指示そのものが聞かれて対応されるせいで、逃げに徹している相手じゃマトモに戦えないし……まあ、ここでこいつと延々と追いかけっこをしてるわけにもいかないし、葵は蟲ダメだし、アタシじゃないとダメねえ。
炎の渦が起きる。ごうごうと燃える炎を、フィザンは面白そうに見つめている。
「う、ぐ。…………ぐううううううう…………!」
苦悶の声をミオは上げた。熱さによるものではなく、召喚獣との同化による、魔力の奔流だ。
──あ、と、どれだけ、かかる、かし、ら……!
慣れないことはするものではない、とミオは思う。だが、こうでもしなければ、悠人の加勢には行けない。
このタイミングで攻撃されれば、ミオは魔力の制御に失敗し、炎に呑み込まれるだろう。その魔力保有量からして、死にはしないだろうが、少なくともしばらくの間、動けなくはなるだろう。しかし、フィザンの目には、自滅したようにしか映らなかった。苦痛に呻く声も聞こえていたため、魔法に失敗したのだろう、と考えた。なので、別のことに少し思考を割いた。
──そういやァ……もう一人はどこ行った?
瞬間、フィザンはただならぬ気配を感じて、思い切り背後に跳んだ。
眼前数センチにまで、漆黒の刃が迫っていた。
「────!」
「…………残念。あと少しで首を落としていたのに」
葵が、大剣を携えて、フィザンと蛹の間に立つ。
「ッたくよォ……躊躇もクソも無ェな?」
「…………殺したって死なないもの」
「肉体が死んだ瞬間に魔素に変換して魂を転移させて、その後に肉体を再構成してるだけだろォが。やれやれ、こんな世の中のせいでゲーム感覚で人を殺せるッてンだから──」
フィザンは一瞬止めて、蛹を見て、微笑んだ。
「──最高だよなァ?」
蛹にヒビが入る。音もなく、だ。
「だが、今回は殺さねェ。いつもなら魔導蟲のエサにしてやッてるところだが……まァ、嘆いても仕方ねェなァ。…………言い忘れてたけどよォ、後ろ、見てみたらいいンじゃねェかァ?」
「…………!?」
葵が慌てて振り向く。
蛹から、大きな鎌のように鋭利な前脚だけが飛び出している。その部分だけでも、葵の身長より大きい。
「さァ、暴れてくれよォ?」
フィザンは不敵に笑う。蛹から、魔導蟲が姿を現す。その姿は、カマキリの鎌にハエの身体、カブトムシの頭に、足はムカデ。それぞれの大きさは統一されているが、見た人間には違和感と不快感を与えるだろう。
しかも、目測で10m近い大きさ。見る人が見れば失神すること安請け合いである。
「……………………気持ち悪すぎる…………」
「可愛いじゃねェか?」
「…………貴方の美的感覚については私は何も言わない……」
葵は振り返って、炎の渦に向けて、声をかけた。普段よりも大きい声で。
「…………いつまでも閉じこもってないで……さっさと出てきて、これを燃やして欲しい……!」
「おいおい、そンな声じゃ聞こえるモンも聞こえねェぞォ? そもそも、ありゃァダメだろォさ。召喚獣を使って妙なことをしよォとしてたみてェだが、失敗してンじゃねェか、あれはよォ?」
「…………簡単に失敗するぐらいの実力なら……私も苦労していない……」
「あァ? なンか言ったかよ?……まァいいさ、どうするよ? 俺ァこのまま駄弁っててもいいゼェ? 時間稼ぎにゃなる」
「…………どうも、その必要はないみたい…………そこ……通してもらうことになった……」
「……なンだと?」
「…………遅い、ツンデレツインテ赤王女……もっとてきぱきやって……」
「うるっっっっ……さいわね!! こっちだって必死なのよ!」
炎の渦が広がり、消える。
「はぁ……ほんっと、これ練習しとかないとダメねえ。三分以上掛かっちゃったじゃない」
そこに立っていたのは、ミオだ。だが、額には炎で出来た一本の角があり、アイフリッテンを模した鎧を着ている。
「トランス、って言うらしいわよ、これ。召喚獣を魔鎧みたいに使うってコンセプトで作られたそうね。なんともまあ、変なことを思いつくものだわ」
「どんなもんだとか知ったこっちゃねェよォ。クソ、妙なことをされちゃあこっちも面倒だなァ。気は乗らねェが、半殺しにしてやるよォ!」
フィザンは一気に距離を取り、巨大な魔導蟲にタクトで指示をして、自らの傍らへ引き寄せた。
「手伝いなさい、葵。あの薄ら笑いの相手、頼むわよ」
「…………ええー……」
「蟲の相手をしたいならそっちでもいいのだけれど」
「…………鬼……悪魔……テンプレツンデレ……」
「人格批判はやめてくれるかしら……別にキャラ作ってるわけじゃないんだしいいじゃないのよ!……まあいいわ。そっちは頼んだわよ」
「…………仕方ない……早く燃やして私に楽をさせて欲しい……」
「鹿沼に似てきたわねアンタ……」
ミオと葵は軽口を叩きながらも、お互いに頷きあった。
「行くわよ!」
「…………おー」
~~~~~~~~~~
「うわあああああっ!」
康太の身体は軽々と吹き飛び、壁に激突した。
「……さっきから、舐めてんの? アタシ、アンタ達を攻撃することに躊躇しないよ? なのに、なんのつもりか、ずっと防御ばっかり。そんなんじゃ、誰だって守れないよ!」
スワンは、自らが吹き飛ばした康太から視線を外し、エリオットとエミリアの方を見る。
その足には、白鳥の羽のような装飾が施された具足がある。これが、スワンの魔導武装だ。
「このっ!」
素早い動きでエリオットに接近し、スワンは踵落としを放つ。
「くっ……!」
エリオットが、蛇腹の盾の形状に変化させた魔導武装、天涯で、スワンの攻撃を受け止める。
「吹き飛べっ!」
盾を軽く蹴って、踵落としの体勢を逆再生するように反転し、地面に着地。そのまま、蹴り上げた。
「ぐっ!?」
天涯が弾かれる。手元から離れた瞬間、エリオットは天涯を魔素に還し、瞬時に再度顕現させようとする。
「遅い!」
スワンは、横薙ぎに蹴りを放つ。エリオットは咄嗟に腕で防いだ。
ゴキリ、という音がした。
「ぐっ……あ、ああああああっ!」
エリオットの華奢な身体は吹き飛ぶ。
「……さて、後はアンタだけか」
スワンは、エミリアの方を見る。エミリアは肩をすくめて、やれやれ、と言いたげな動きを見せた。
「そうみたいですわね。まあでも、簡単にわたくしを倒せるとは思って頂きたくはありませんが」
「へえ? アンタはちゃんとアタシを攻撃しようって?」
「躊躇う理由が御座いまして? 別にわたくしは貴女とあまり交流はありませんし、そもそも、魔導犯罪者相手にどうして躊躇が必要ですの?」
「正論。アンタ、魔導士に向いてんじゃない?」
「この空間の中では一番でしょうけれどね。あと、わたくし、ちょっとイライラしてますのよ」
「へえ?」
エミリアは魔導武装を顕現させた。
「大輔さん、いっつも割を食う側なのですのよ。何かを成しても他の人の手柄になったり、努力しても他の人の才能で埋もれて目立たなかったり……一番辛いはずなのに、ずっと笑っていますのよ。なのにまたこんなくだらない面倒事に巻き込まれて……はあ、本当に、存在自体が迷惑ですわよね、貴女がた」
笑顔で、エミリアは言う。その目は笑っていないが。
「大輔……? ああ、鹿沼の名前ね。あれ、精神やられて、このビルのどっかで倒れてるらしいけど……まあ、どうでもいいか。どうせ、公崎のコバンザメじゃん? 居なくなったって誰も気にしやしないと思うけど」
それは、挑発。断片的にサードから聞かされた程度の情報だが、使うに越したことはなかろう。
「…………今、わたくしの堪忍袋の緒が完全に切れましたわ。もう貴女、死んでも文句、言わないで下さいましね?」
「……! 上等……!」
ミオと葵が別室で戦っている同時刻、また別の戦いが始まる。
5/31
ちょっとだけ詠唱変えました。
2019.5/8
世界観ミスってたのでちょっと修正しました。




