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俺の友達が強過ぎるんだが。  作者: 日向 渡
かくも騒がしき美術館
49/210

タキシード美面(イケメン)

     ~~~エリオット・レッセリアの場合~~~



 夕方になったので、僕とエミリアは部屋に戻る。

 学校側に特例として認められている、男女共同の部屋。異世界人だから、何かと融通が効くのだ。僕らは諸事情から、通常通りに寮生活を送るわけにはいかないのである。

 しかし今の僕に大事なのは、それではなく。

 初めて出来た友達と初めてのお出かけ。

「ふ、ふふ、ふふふふふふふふふふふふふふふ」

「……お兄さま、気味の悪い笑みを浮かべないでくださいまし」

「え? ああ、すまない。……ふふふふふふ」

「はあ……大丈夫なのかしらね、これ……」



 こんなに楽しみなことはない。

「大輔さんが好きで好きでたまらないのはいいですけど、ちゃんとわきまえてくださいね」

「すっ、好きな訳無いじゃないか!」

「あら、恋する乙女にしか見えませんわよ。どこからどう見ても」

「し、失礼な! いやもう、ほんともう! 失礼な!」

 乙女でもないし。そもそも恋じゃない。

「お兄さま、もうそろそろ秘密を暴露してしまってはどうです? わたくし、いい加減に窮屈なのですけれど。お兄さまもそうは思いませんの?」

「い、いや、流石に言ってしまうのは駄目だ。折角、男友達になれたのだし……」

「大輔さん、気にしないどころかむしろ面白がりそうだと思うのですけれど……」



「そんなはずは……う、うぐう」

「頑固なのですから……」

 はあ、とエミリアが溜め息をついた。

「心配は無用さ。あんなの、普通じゃわかりはしないよ。じゃあ僕はお風呂に入ってくる」

「お風呂? ええ、どうぞ。…………その手がありましたわね」

 なんだかエミリアがぶつぶつ呟いていたが、聞き取れなかったので気にしないことにした。



     ~~~鹿沼大輔の場合~~~



 特に何もなく、一日が経った。

 本日は日曜日。晴天で絶好のお出かけ日和である。

 メールによると、駅前で待ち合わせだそうだ。

 沖ノ鳥美術館は北部にあるらしい。

 エルゼラシュルドは南部にあるから、かなり遠い。



 この沖ノ鳥島は、珊瑚の島だった沖ノ鳥島を埋め立てまくって……いるのではなく、人工の島を海上に浮かばせているという変な島だ。

 広さは……東京都と群馬県を合わせて少し小さくしたぐらい……らしい。かなり大きい。

 魔法と科学の融合……魔科学とやらの技術を結集して出来た島、だそうだ。海の上に浮いていながら流されたりしないのも魔科学のおかげらしい。まかがくの ちからって すげー!



 それはともかく、冗談抜きでこの島は広い。北部から南部へ移動するには、普通の電車では時間も金もとにかく掛かって仕方がない。

 そこで、魔科学の出番だ。もう魔科学だけでいいんじゃないかな。

 魔法の力で空を飛ぶ電車。それが魔導列車。線路の代わりになるのは宙に浮かぶ誘導灯だ。これにも魔法が使用されている。電車を正しく誘導する魔法だ。

 で。

 今、俺はその魔導列車の駅前……から少し離れたところにいる。



「…………なあ、アレなに」

「ボクが聞きたいよ」

 正に駅前に、不審人物がいる。

 タキシードを着たイケメンが、ものすごくソワソワしている。なんだあれ。

 そしてその隣。カジュアルな格好をした女の子が、とても迷惑そうに、そして恨めしそうに俺たちの方を見ている。

「…………バレてるなあ」

「アレは何故助けてくれないのかと言外に訴えかける目だねえ」



 まあエリオット兄妹なのだが。

「……あ、また逆ナンされてる」

「エミリアちゃんがいよいよ涙目になってるようにボクは見えるよ」

 イケメンが何故かタキシードを着ていたら、そりゃまあ目立つ。

「あれ夜間用の礼服だろ。真っ昼間だぞ、モーニング着ろよ」

「そういうことじゃないと思うな!?」

「わーってるよ。でもどうしよう。すっげえ近付きたくない」

「気持ちはよくわかるよ」



 あれと知り合いだと思われたくねえ……。

「ん? エミリアがこっちに来たよ」

 心なしかイライラしているように見える。いや、心なしかじゃない。あれ怒ってるわ。

「どうして助けてくれませんの!?」

 やっぱり怒ってた。

「いやあ……ははは、やっぱりアレに近付くのは、ねえ?」

「酷いですわ! ずっと隣で他人のフリしてましたのよ! 離れようと思ったらお兄さまが爽やかに『どこに行くんだい?』って言ってきて離れづらいですし! 貴方がたの血は何色ですの!?」



 想像以上のマジギレだった。

「お兄さまにこちらの常識が無いのは知ってましたけど……」

「漫画好きって聞いたぞ? こっちの常識とかわかんなかったのか?」

「少女漫画で……ね? わかりますでしょう?」

「聞いた俺が悪かった。なんでもするから許してくれ」

 マトモな常識が通用する世界じゃない……! 髪に芋けんぴが付いている世界だからな……! 男でも少女漫画の読者は多いしな。しかし、異世界でも流行ってたのか、少女漫画……。

「ん? 今なんでもするって言いましたわね?」

「え? あー……ごめん今の無……」

「わたくし、お兄さまにお花を摘みに行くと行ってこちらに来ましたの。長引き過ぎると流石に怪しまれますわ。とは言え、今戻ると早すぎますし……」

「すまん、話が見えてこねえ」



「ええと、わたくしが戻るまでの場繋ぎをして欲しいのですわ。出来るだけ女性にナンパされないように。お兄さまが困ってしまいますので」

「女と一緒にいても声掛けられるレベルの美形だぜ?」

「必死に他人のフリをしていたの、見ておられたのでしょう? 問題無いですわよ」

「いや俺、男だぞ。女装でもしろってか」

「恋人のフリとか……」

「お前はバカか? というか、バカなのか?」

「冗談ですわよ。面白そうなのですけれどね」



 そんなことをしたら、俺のホモ疑惑がついに確固たるものになってしまう。女の子の方が普通に好きです……。

「はあ……じゃあ行ってくるわ。お前らもさっさと来いよ?」

「ええ、わかっていますわよ」

 というわけで、タキシードイケメンの下に馳せ参じよう。



     ~~~エリオット・レッセリアの場合~~~



「よう美少年。好みの女は引っ掛けたか?」

 突然、声が掛けられた。

 視線を動かすと、大輔くんが立っていた。

 水色のフルジップパーカーと、ジッパーが開けられたパーカーの隙間から、真っ白の無地な白色が顔を覗かせている。なんとも無難なファッションだ。

「だ、大輔くん!? 見ていたのかい!?」

「見てくださいってぐらいにナンパされてたしな」

「わ、忘れてくれたまえ……僕は女性には興味無いんだ」

 そう、あんな顔しか見てこない女には……。

「……すまん、俺ちょっと用事思い出したから帰るわ」

 !?

「待ちたまえ!? なんだい突然!?」

「男が女に興味無いって今お前……」

 …………あ。

「い、いや違うよ! 断じて違う! そう、言葉のあや、言葉のあやだ! 恋愛に興味が無いんだ僕は! いやこれも違う! そう、容姿しか見ない女性に興味がないってことだとも!」



 ……怪しまれている。うう、なんて失言を……。

「まあ、なんだ、そういう好みは人それぞれだと思うし、うん、いいんじゃないかな。同性結婚も認められてるし、俺は否定はせんよ。うん。これからもずっと友達でいような?」

「それ言外に『恋人は無理です』って意味じゃないか!」

「俺は普通に女の子が好きだからな……と言っても、ランクDの俺が恋っつってもなあ。金もないし、夢物語なんだけどさー」

「……なに? 待ちたまえ、何故そうなるのだね」

「あ? あー、顔も悪いし魔力(エナ)もない、そんな俺じゃ、後は金しかねえだろ? はあ、女の子を好きになっても、向こうは俺のこと好きにはなんねえんだ。顔か金さ、結局な。まあ、全員が全員じゃねえだろうが……優しい女の子はもうとっくに他の男ん腕の中だよ。笑っちまうな」

…………少女漫画でも、そういえば出てくる男は金持ちや権力者、美形ばかりだった。

「……結局、どこの世界でも女は変わらないんだね」

「お? お前は逆に顔で苦労してきたクチか。魔力(エナ)もあるし、向こうじゃ貴族だもんな。大変だったんだろうぜ」



 大輔はそう言ってくれた。きっと僕の今までは、君の歩んできた今までとは比べ物にもならない。だってそうだ。いつだって。割りを食うのは持たざる者だ……。今まで祖国でそれを嫌と言うほど見てきたじゃないか。

「へっ、俺の方が結果的には年収が高くなる。ザマーミロ」

 そう言って大輔は笑う。でも、僕には君のその笑顔が虚勢にしか見えない……無理をして笑っているみたいだ。なんとなく、わかる。作り笑いは、わかってしまう。そればかりの世界にいたのだから。

 でも、僕がそれを言うべきじゃない。それがわからないほどバカじゃない。わからなかった前の僕とはもう違う。僕は……変わった。

「……君がそれでいいなら、それでいいさ」

「だろう? ああ、そうそう。あのな、言いたいことあるんだけどいいか? …………大事な話なんだ」



 急に大輔が神妙な面持ちになった。大事な話?

「な、なんだい? 大事な話? ま、まさか……」

 こういう場面、少女漫画では告白シーンか、それともなんでもないことの二択だ。いや、大輔は女の子が好き。今の僕は男だ。つまり後者しかありえない。だけれども……やっぱり期待してしまう……!

「服、買いに行こうぜ、な?」

「…………は、はは、知ってたさ。うん。知ってたさー……」

「おい、行くぞこら。安い服でいいから着替えろ。これじゃ目立って美術館賞どころじゃねえよ」

「ああ……適当に見繕ってくれたまえ……」

 やはり礼服は駄目だったろうか……少女漫画も、アテにならないものだ。

 僕は、大輔についていく。そういえば、他の人達は何故来ないのだろう?



     ~~~シエルの場合~~~



 まてといわれたので、くさむらにかくれていたら、だいすけとエリオットがいちゃいちゃしてどっかいった。

 なにをおはなししているのかわからなかったけど、こうたは「カップルみたいだね」といってた。


 わたしもそうおもった。

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