作戦開始
〜〜〜〜〜公崎悠人の場合〜〜〜〜〜
「召喚士の魔鎧が見付かった!?」
朝。生徒会室に呼び出された僕は、佐村先輩からそう聞かされた。
「ええ。えーと、届いた手紙によるとですね。『この島に強い魔力を発する物が入ってきたのに気付いたんで、調べてみたら召喚士の魔鎧だった。ただ罠とかだと思われても仕方ねーので、罪狩りだけで取りに行って、その後魔導士に渡すつもりだ。けどまあ前回トーレスの件を横取りしたような形になったし、日付と住所だけは記しておく。奪取作戦に参加したいなら別に来てもいいぞ』とのことです」
「……ふざけてるんですか?」
「原文そのままです。最後に凡百のカルダ、と書かれてますから、彼が書いたんでしょう」
「なんやよう縁あるなぁ」
「橋渡し役なンだろ。それで? 魔導士協会はどうするッて?」
「魔導士を派遣することはしないそうです。ただ、生徒会の方は好きにするといいと」
協会は静観を決め込む形かな。確かに、放っておいても魔鎧は渡すと言っているのだし、わざわざ魔導士を派遣する理由もない……のか?
「罪狩りが独自の情報網を持っていることはまず間違いありません。魔鎧の情報を掴んでいることからもそれは伺えます。ですが……何故、魔導士の味方をするようなことをするのでしょう」
佐村先輩はそう言って首を傾げていた。
そもそも罪狩りが何を考えているのかがわからない。僕らの信用を得るために動いているとしても……彼らになんのメリットがあるというのか?
「で、会長はどうなさるおつもりで?」
佐村先輩が会長にそう聞くと、会長は不敵に笑う。
「そんなもん行くに決まってんヨ」
「そう言う思とったわあ」
「それに、放っておいてもテメェは行くつもりだったろォ? 公崎ィ」
「……はい」
罪狩りの真意を確かめたい。僕らに与してなんの得があるのか、何を企んでいるのかを。
「それで、日付はいつなんですか?」
「今日です」
「……今日?」
「はい、今日です。時間は昼からだそうなので、移動しましょうか」
なんともまあ突然の話だ。
僕らは、書かれている住所の近隣へ向かうこととなったのだった。
〜〜〜〜〜鹿沼大輔の場合〜〜〜〜〜
「で、結局アイツら来たのか」
「そのようじゃのう」
異様に大きい魔力が幾つか近くにスタンバイしている。
俺達も決行時間に備え、近くで待機していたのだが……。
「なあ、多くない?」
俺とエスト、リジーがいて、他にも10人ほど罪狩りのメンバーがいた。
「敵は4人なんだろ?」
「うむ。じゃが、突入するのは吾とカルダとリジットだけじゃ」
「……じゃあなんで大量に引き連れて来たんだ?」
「二平連が途中で乱入してくる可能性を考慮した結果じゃよ」
二平連って言うと……平和平等連合という犯罪者組織のことだ。
人類の平和と平等を訴えながら、同時に暴力による革命を目指す集団。かつて存在したという思想の置き土産と呼ばれている。メンバーの平均年齢は高く、7割近くが60以上だとか。
「奴ら、負晶刀を手にしておっての。殆どの参加者が半魔となり、肉体変化による若さを手に入れたようじゃ」
「負晶刀で半魔に? でも、それじゃ自我は……」
「奴らのように、自らの罪悪感に折り合いを付けているような連中は増幅された悪意にも向き合えるからのう。まあ、何人かは暴走した故、殺したがな」
負晶刀で半魔となっても、絶対に暴走する訳では無いのか。
「さて、そろそろ時間じゃな。行くぞ」
懸念は多いが……考えていても仕方ないだろう。
反転し魔装を纏い、目標に向かうことにした。
向こうにも半魔がいるのであれば俺たちの動きは察知されているだろうが……どうなるやら。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ビルに入った途端、大きな魔力を感じる。人間が発するそれとは違う異質なものだ。これが魔鎧の……召喚士の魔力なのだろうか。
しかし、ここまでの魔力ならば外からでも感知できたはずである。それなのに、何故ビル内に……。
「カルダ、気を付けてね」
「リジー?」
「ここ……心象世界になってる」
「な……」
心象世界と言うと……魔物の持つ固有の世界。だが。
「ビルが心象世界になるって、どういうことだ?」
イェルヴァさんは入口が絵画で、中に入ると心象世界が広がっているタイプだった。
予習段階で学んだのもそのタイプであるはずだ。
つまり、何かのきっかけで入ることのできる異空間であると。
「この建物に限定した範囲を心象世界に作り替えたのねー。魔力を放出して……塗り替えたんだわ」
「見た感じは何も変わってないが……」
心象世界って持ち主の心を象った世界であるはずだからな。わ
「この世界の所有者に近付くにつれて変わるんじゃろう。……さて、早速厄介じゃぞ」
「どうした?」
エストが何やら立ち止まっている。表情は鎧で見えないが……。
「魔素が止まっておる。これでは人間は魔法を使えんぞ」
「……それがこの心象世界の効果か?」
「恐らくの。万が一、魔導士が来た場合の保険じゃろう」
魔素が空気中で固定されていると、人間は魔法が使えない。
一発撃つだけでも空気中の魔素を使う上、体内の魔力を回復するのにもまた空気中の魔力が必要だ。
あとは禁呪を使った場合だが、魔法の発動に使う魔力は体内のものが100%だ。しかし……魔法は魔素を介して空気中を進むため、その動きが阻害されてしまう。真空状態では炎は燃えられない、という話である。
なんだったらこの空間の中では魔導武装を顕現することさえ困難だろう。
恐らく来ているであろう生徒会の連中が顕現してから突入してくれることを願うが……。
なお、俺たち半魔もまた魔法は使えない。だが魔物武装なら話は別だ。空気中の魔素を使用しないからな。
「……ともかく、進むとするかのう」
「ああ。……あ、俺真ん中でいい?」
「じゃ、私は一番後ろにいようかな」
ナチュラルに守られる形を取ったが、仕方ない。俺弱いもん。
「……というかなんで俺が突入組なワケ?」
「魔導士との交渉役じゃ。なに、戦えと言うわけではないから安心せい」
良かった〜。どうせ敵も殆ど半魔とかだろ? 絶対死ぬぜ。
「とは言え、汝れの魔力保有量は出会った時の倍以上になっておるはずであろう?」
「ああ、まあ……そうなんだがな」
あの日、見知らぬ女性の核を取り込んだ時から少しばかり魔力保有量が増えた。まあランクC分ぐらいはあるんじゃなかろうか。
加えて俺の保有魔力と同程度の魔力を保有しているが……魔物としての魔力なので、迂闊には使えないんだよなあ。
全部足しても多分ランクB相当ぐらいだろうけどな!
「そんな話はいいんだよ、俺が悲しくなるだけだからな。とにかくさっさと召喚士奪って帰ろうぜ」
「そうだね。一筋縄でいけばいいけど」
やめろ、そういうことを言うな。




