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俺の友達が強過ぎるんだが。  作者: 日向 渡
二学期と魔鎧
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ある日の放課後

 チャイムが鳴った。


「くぅ……やっと終わった」


 俺は大きく伸びをする。


「やあ、お疲れ」


 後ろから悠人が話しかけてきた。俺の後ろには悠人、その更に後ろは康太が座っているのである。名前順的にネ!


 ……正確には川崎ってのがいるんだが、目が悪いとかで前の方に座ってるんだよな。そのおかげでこうして縦に並べているわけだけどな。


「放課後なんだけどさ、訓練に付き合ってくれないかい? 徒手空拳やりたいんだけど」


 こいつ遊びに行くって選択肢が滅多に出てこねーんだよな。ちょっとカフェ行かない? ぐらいのノリで訓練に誘ってくるんだが。まあこの学園の生徒的には模範的なんだけどな。


「悪い、今日は用事があってさ」


「用事かい? それなら仕方ないね」


 ちょっと残念そうだが、俺は昨日もお前と訓練してたんだからな?


「んじゃ、俺は行くよ。また後でな」


「うん」


 康太が俺をジトッとした目で見ていた。視線が痛い。


 いやまあ、なにせ……。



      ~~~~~~~~~~



「うむ、来たな」


「待ってたよ~!」


 女性と、めっちゃ女に見える男と街にくり出すんだからな!


 学園の外で俺を待っていたのはエストとリジーだった。


 用事、というのは2人との外出である。


 以前にリジーと街に言ったという話をしたら、吾も連れて行かんかと拗ねたのである。


 曰く、対ユニオンの活動ばかりで観光はロクにしていなかったとか。


「でも放課後で良かったのかよ? 休日とかでも良かったんだぜ」


「うむ、今日は下見も兼ねておっての、そこまで本格的に回らんでもよいのよ」


「下見?」


「今度の休日にね、来るのよ」


「誰が?」


 妙に勿体ぶるなあ。


「時に汝れ、今週の土日空いとる?」


「え? ああ、まあ今の所は特に予定ねーけど……」


「うむ、予定を空けておいてくれると助かるぞ」


 なんなんだ一体……まさか、俺の歓迎パーティ……的な!?


 ちょっと期待しちゃうぜオイ?


「じゃ、しゅっぱ~つ」


「行く先決めてないのにっ!?」


 ともかく、俺たちは歩き始めた。



      ~~~~~広城康太の場合~~~~~



「怪しい……」


 ボクは木に隠れて3人を見ていた。


 大輔はだいたい用事がある時に、どこに行くか、何をするかを話す。何故相手の誘いを断るのかを明確にするためだ。


 けれど、今日はそれがなかった。そんなの怪しいに決まっているじゃん!


 1人はやけにニヤニヤしている大輔。1人は前に会ったことがある観光客のリナリーさん。そして新たに1人増えている。


 女の人……かな? 黒髪ポニテの、外国人風の人だ。き、綺麗な人だなあ……。


 しかし、これは許せないね。


 普段からやれ女っ気がないだの、やれ悠人のハーレムがどうだのと言っておいて……。


 写真撮ってクラス男子達のグループには送っておくとして、問題は――。


「む、むう……」


「もー帰りませんことー? 絶対に何もないですわよアレー」


 別の木の陰からレッセリア兄妹が見てるってことかな……。


「わ、わからないだろう! 女性が2人だぞう!」


「そんな甲斐性がある人じゃないですわよー」


 エミリアちゃんは引きずられて来たんだろうか、非常に乗り気じゃなさそうだ。


 問題はこれだけではない。


「何よ、やることやってんじゃない!」


「…………鹿沼も男だということ」


 なんで? なんでミオちゃんと葵ちゃんも来てるの?


「あっ動いた」


 大輔たちが歩き出す。


『あっ』


 そして僕らは互いの存在に気付きあったのだった。



      ~~~~~鹿沼大輔の場合~~~~~



 俺がよく行っている精肉店。


「よう兄ちゃん! 今日は女連れかい? それも2人たァやるねェ!」


 店主のオッサンがニヤニヤしながら俺を見ている。


 ていうか片方男なんだけど? やっぱ見えるんだな女に。


「コロッケ3つくれ」


「あいよ!」


 俺は代金を払い、コロッケを受け取る。あと何故か切り落とし肉の詰め合わせをくれた。なんでだよ。


「ふむ、美味いものじゃな」


 サクサクと小気味よい音を奏でながら、俺たち3人は歩く。


「次はサクサクどこに向かうのじゃサクサク」


「勿体ぶってないでサクサク教えてよサクサク」


「食ってから喋れッ」


 めっちゃ急かしてくるこいつら。しかしどこに行ったもんかな。商店街なんて生活に必要なモンを揃える場所であって、観光する場所じゃねーんだよな……。


「ふう、美味かったぞ。後で代金は渡させてもらおうかの」


「あ? いーよそれ前にもらった報酬分で買ってんだし」


「へえ? 前の作戦って言ったら……アレか。幾らもらったの?」


「…………10万」


「そんなに」


 労災下りたみたいな額が振り込まれていてビビった。いや実際死にかけてたんだけどね。


「というかどっからそんな金出てくんの……? 俺こえーよ……」


「こちらや向こうで手広く商売をやっておるからのう。向こうのアルカニリオス以外の国では暗殺稼業なんかもやっておるし、汝れが思うよりも罪狩り(エミルナルタ)は資金豊富なのじゃ」


 確かにラブホとか経営してたけども。


「うーん……そうだ、雑貨屋行くか」


 俺は2人を連れて雑貨屋に入る。アクセサリーから小物系インテリアまで置いてある店だ。


「ほう、良い店じゃの」


 学生向けの店だ。店内は落ち着いた雰囲気で、店の中心には1本の樹が据えられている。天井に枝が伸びており、そこからフックがぶら下がっていて商品が吊るされている。「これ生やしてんスか?」と聞いたところ「それっぽくしてるだけ」と言われたことがある。


「へえ……いいね、私もなにか買って帰ろうかな~」


 リジーも買い物を始めた。俺もなんか買ってこうかなあ。


「吾はともかく……リナリー、汝れは日本円を持ってきておるのか?」


「私がいつまでもそんなヘマを……あっ」


 やったな?


「…………助けてダイスケ~ン」


 猫なで声で俺に抱き着いてきた。


「だァ! くっつくなッ! 買う! 買うからッ!」


「にへへ、ツイてる」


「ち、畜生ッ」


 まあ……金に余裕あるしいいけどさあ! 童貞は女に密着されるともれなく死ぬんだ。悲しい習性だよ。


「ま~ま~、今度ちゃんと返すって」


「いや……もうここはプレゼントするからさ、今度なんか仕事回してくれよ。休日なら動けるし」


「それなら今度の休日の件がある。結構重要な仕事なのでな、報酬には期待してくれてもよいぞ?」


 マジ? 仕事だったのか。まあいいけど。


「じゃあさ、じゃあさ、ダイスケが選んでよ」


「俺がァ? ええ~……選んだことねえよアクセとか……」


「いいから、ほら!」


 ううむ、どうしたもんかなあ……。指輪……は重いよなあ流石に。やっぱシンプルにネックレスか……? いや、せっかくだしペンダント系だな。


 リジ―は褐色肌の女性だ、白っぽい色のものがいいだろう。シンプルな……そう、チェーンの先に小さいハート型のペンダントが付いているものにした。まあ、無難……じゃないか?


 俺は会計を済ませる。5000円ほどした。学生には少しつらい出費だが……罪狩り(エミルナルタ)の仕事があるから大丈夫だろう。死と隣り合わせだけど。


 そして店から出た。


「じゃあ、これ……」


 ネックレスを手渡した。異性への贈り物なんて初めてである。ましてやアクセサリーだ。ハードルが高いったらないぜ。


「いいじゃん! なんか……白くて!」


 語彙。俺の渾身の選択に対して語彙。


「……そうだ」


 なにかを思い付いたらしい。嫌な予感しかしないが……。


「その前に……お茶にしない? 喉乾いちゃった」


「おう、いいのう。喫茶店などはないのか?」


「まあ、あるけど」


 商店街とは言え、メイン客層はエルゼラシュルドの学生だ。ほとんどはモダンで洒落た店なのである。……まあ今から行くとこはチェーン店なんですけどね。


「わかった。次はそこ行くか」



      ~~~~~エミリア・レッセリアの場合~~~~~



「あ、怪しい……」


 康太さんがそう呟きました。現在、わたくし達は5人揃って大輔さんを尾行しているのです。


 コロッケを食べ、雑貨屋に入り……そして出てきました。流石に店内に入ってしまうとバレてしまいますので、中で何があったかはわかりませんでしたが。


「あっ、また移動するわよ」


 わたくし達もまた移動を開始します。


 こんな面白そうな……いえ、姉の危機になりそうな状況は見逃せませんことよ!

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― 新着の感想 ―
[一言] 取り合えず主人公真ヒロインは決めていた方が良いと思うよW そうしないとBLにためらいなく転びそうやW
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