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俺の友達が強過ぎるんだが。  作者: 日向 渡
騒乱の夏休み
129/208

みんなで泳ごう、おきのとり健康ランド。

「わあ、すごいねえ」

 悠人が感心したように言う。

 ここはおきのとり健康ランド。温泉だとかプールがある施設だ。

 温泉も水着を着用して入れるので、ゆっくりしたいなら温泉、遊びたいならプールに行けばいい。今日は屋内にあるプールで遊びまくる予定だ。

「さて……悠人! 水着パラダイスだぞ!」

「ははは、楽しそうだね」

 この野郎、自分は興味ないですみたいな顔しやがって!

「そういや、エリーは?」

 というか、康太も更衣室で見かけなかったんだけど?

「ああ、彼らは更衣室の個室を使っているらしいよ」

 なるほどな……。



「お待たせ~」

 これは康太の声だな。振り返ると、胸部だけを隠す上半身用の水着と、半ズボン型の水着を着ている康太がこちらに駆け寄っていた。

「……なんというか、結局そうなったんだな」

「言わないで……ぶっちゃけ、この水着のせいで余計に女の子に見えてる気がするんだよね……」

 逆に上半身を顕にしていれば男に見えたかもしれんが……少し前にプールでボーイッシュ女子が男のフリして露出プレイしてた事件があったからなあ……。

「まあ、安全といえば安全なんだよね。ナンパされなけりゃ、だけど」

 康太が溜め息をついた。そういう経験があるんだろうか。

 ひとまず、これで俺と悠人、康太が揃った。あとはシエルにレッセリア兄妹、幽ヶ峰、アルカニアに、白鷺さんに黒鳥さん、そして旅原さんがまだ来ていない。

 旅原さんは昨日まで実家に帰っていたらしい。

「大輔、なに考えてんの?」

「いやあ、旅原さんに会うのも久しぶりだなって思ってさ」

「林間学校ぶりだね」

 しかし……制服の上からでもわかる、あのダイナマイトボディ……水着なんか着たらどんなことになってしまうのやら……。



「やあ、待たせたね。……っと、まだあんまり集まってないみたいだ」

 そこで、エリーが来た。上半身を隠すラッシュガードに、ゆったりとした水着を着ている。今日は服装もあって、顔さえ見なければちゃんと男に見えるな。コーデって大事。

「おや、シエルちゃんは?」

「女子たちに預かってもらってる。流石に男子更衣室には連れていけないからなー」

 ひとまず、これで男子は揃った。あとは残り全員女子だ。12人まで呼べるチケットで集まったのは11人なのだが、そのうち7人が女の子である。わあいパラダイスだあと喜びもしたが、冷静になって考えたらこのうち4人は公崎ハーレムである。

 俺は激怒した。必ず、かの我恥覇愛麗夢(がちはあれむ)の友をボコらねばならぬと決意した。俺には実力の差がわからぬ。駄目だこりゃ。

 自らの男としての尊厳のズタボロ感にやや絶望しながら、しかし自らの中に眠る男としての本能に敗北しプールで遊ぶ女性たちの水着に思いを馳せていると、快活な声が俺たちに降り掛かった。

「待たせたかしら」

 それは王女様である。赤いホルターネックビキニを着ている。少女らしさも兼ね備えつつ、しかしバストサイズもそこそこなので、まさに成長途中の高校生らしいコーデと言ったところか。

「…………うふーん」

 続いて幽ヶ峰が出てきた。だいぶ小柄かつスレンダーな体型をしている幽ヶ峰だが、胸元にフリルが付いているビキニをチョイスすることによってバストサイズをごまかしつつ、体型相応の可愛らしさを出せている。ちなみに色は髪色と同じ青である。



「ごめんね、時間かかっちゃった」

 クラス1……どころか、クラス外でも人気を得ている白鷺さんの水着姿を拝める日が来るとは思わなかった。清楚な白いタンキニである。まるで天使のようである。時折覗かせる悠人への熱い視線が殴りたいほど妬ましい。

「……あんまり見ないでよね」

 ブラックスワン、もとい黒鳥はその称号に恥じぬ黒い水着だ。バンドゥビキニ(ブラの部分が三角ではなく横長になっているものらしいヨ!)を着ている。スポーツが得意で、実は女子サッカー部だったことを最近知ったのだが、それらしいほっそりとした肉体にはピッタリだろう。

「おまたせー!」

 シエルは昨日見た通りの子供らしい水色のワンピース型水着である。この子に関してなんだかんだと思考するとなんか法的にマズそうなので一言、クッソ可愛い。

 さて……残るはエミリアと旅原さんか。しかしエミリアは昨日見せてもらったからな。

「お、お待たせしましたわ」

 おずおずと、遅れてエミリアがやってきた。エミリアの着るワンピース風パレオはゆったりとしていて、なんというか……お嬢様っぽい。漠然とそう思わせるような余裕みたいなものがある。お淑やかな感じもとても良いなあ。

 と、勝手に心の中でレビューをしてうんうん頷いている俺の前に、とんでもない存在感が現れた。



 それは、まさにダイナマイト。

 デブ、だなんて口が裂けても言えない、程よいマシュマロボディ。

 理想的なぽっちゃり女子、である。寸胴体型ではない。うっすらとくびれが見えるからだ。

 そして何より、着ているのは競泳水着である。というかまあ、ウチの高校の指定水着だな。

 色気もないような水着のはずなのに、そのボディが絶妙に……いかん、これ以上は思考を巡らせないほうがよかろう。

 というか、この中で一番バストサイズが大きいんじゃないか? 下手するとアルカニアの倍ぐらいあるかもしれんぞ……。

「お待たせしました~。うう、買い換えなかったせいでちょっとキツいんですよね~」

 なん……だと……? 締め付けた上であのサイズだと言うのか……ッ!

 驚愕している俺を他所に悠人が仕切る。

「さて、全員揃ったことだし、さっそく泳ぎに行こうか!」

 そういうことになった。



      ~~~~~公崎悠人の場合~~~~~



「…………悠人」

「うん?」

 みんなで連れ立って歩いている中、相変わらず小さい声で葵が話し掛けてきた。

「…………あれに乗ろう」

 葵が指さしたのは、巨大なウォータースライダーだ。たしか昨日確認したパンフレットだと、二人乗りまでできるって書いてあったなあ。

「じゃあ皆で行こうか」

「…………仕方ない」

 というわけで、さっそくその旨を伝えた。

「おいおい、入ってすぐウォータースライダー行く気か?」

「ダメかな?」

「いや、ダメってわけじゃねえけどよう。泳ぐなりして身体を水に慣らしとかないと、着水のときが辛いと思うぜ?」

「ああ、なるほどね」



 軽く泳いでから行くことにしよう。

「ちなみに泳げない人とかって、いる?」

 皆を見渡すけれど、特にカナヅチらしい人はいなさそうだ。

「シエル、泳げるか?」

「んー? やったことない!」

「だそうだ。まあ俺が教えとくよ、気にしなくていい」

 大輔はそう言ったあと「そういうことだから、まず子供用のプールに行ってくるわ。また後でなー」と続けて、シエルちゃんの手を引いて浅いプールの方へ行った。

「ボクも様子を見てこようかな。ある程度泳げるようになったら成果を見せるから、楽しみにしててね!」

 康太も着いていく。



「僕も泳ぎは得意でね。見てくるよ」

「あら、素直に大輔さんと一緒にいたいと言えばよろしいのに」

「う、うるさい! ……じゃあ、また後で」

 エリオットくんとエミリアさんも大輔の方へ行った。

 僕もシエルちゃんの特訓を見たいけど……楽しみにしててと言われたし……待っておくのが正解かな?

 しかし、本当にシエルちゃんの保護者って感じだなあ。

「悠人、どうする?」

「待っててって言われたからね、泳ぎながら待ってよう」

「わかったわ。じゃあ、流れるプールとやらに行きたいのだけど……」

「いいね。浮き輪をレンタルしてこようか」

「…………脱力して流されるのが賢い遊び方」



 僕らは流れるプールのプールサイドへ向かうことにした。



      〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「…………悠人、お願いしたいことがある」

「うん?」

「…………私は、流れるプールは浮き輪の上でぷかぷか浮くのが好き」

「うん」

「…………なので、浮かぶ前に日焼け止めを塗って欲しい」

「ここ屋内だけど!?」

 雨の日でも遊べるプールだ。まあ確かに、天井はガラス張りだけどさ……。

「…………私は少し肌が弱い。……しかし背中には手が届かない」

「なるほどね、そういうことなら……白鷺さん、頼めるかい?」

「ええ、もちろん」



「…………ケチ」

 付き合ってない女の子の身体を触るなんてことはあまり良くないと思うんだよね。今でこそ僕と仲良くしてくれているけれど、いつか彼氏とかができたら疎遠になっちゃうんだろうな。

「ああ、アタシがやるわよ。この……日焼け止め? とやらにも興味あるしね。先に泳いでて」

「そうかい? じゃあ頼むよ」

 ミオが立候補した。しかし葵とミオは仲がいいなあ。

「じゃ、向こうの休憩エリアにいるわね」

「私も手伝います〜」

「……桃華、視線が売店に向いてるのバレてるわよ」

「あっ、バレました〜……」

「…………うう、世は理不尽」



 葵もミオと旅原さんを連れ立って、ビーチ椅子が沢山置いてある休憩場所へ向かった。

「……じゃあ、泳ごうか?」

「せっかく来たもんね」

 僕と白鷺さんは準備体操を始める。

「団体行動なのに、みんな割と自由よね……」

 黒鳥さんは、そうぽつりと呟くのだった。

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