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俺の友達が強過ぎるんだが。  作者: 日向 渡
騒乱の夏休み
117/210

入場、ゴーストタウン。

      〜〜〜〜〜鹿沼大輔の場合〜〜〜〜〜



 待ち時間の短さだけで行き先を決めたことを後悔した。

 目の前にはおどろおどろしい装飾の門。そして、侵入を拒むような高い壁が門の向こうを伺えないようにしている。

 これこそがおきのとりパーク名物『ゴーストタウン』である。

「……どうする?」

 言葉を最初に発したのは悠人であった。

「なんだ、怖いのか?」

 俺はお化けなんて怖くないとも、むしろ見てみたいぐらいだね。……嘘です、見栄張りました。滅茶苦茶こわい。




「大輔くん、なんだいここ?」

 エリーが小首を傾げて聞いてきた。なんでいちいち仕草がそう可愛いんだこいつ。

「お化け屋敷だな」

「おば……?」

 なんだそれ、という顔をしている。……そうか、レナウセムにお化けの概念ないのか?

「こっちでは、死んだ人間の魂が人前に現れることがあるんだ」

「…………え、そんなことあるのかい?」

「ある」

「……魔物(ガルナ)になる訳ではなく?」

「負の感情を持ってるやつが結界の外で死んだらそうなるだろうけどなー」



「つまりどういうことですの?」

 幽霊そのものの代わりに魔物(ガルナ)ってモノがいる異世界人にこっちの幽霊をどう説明すりゃいいんだ。

 そうだ、悠人辺りにぶん投げてやろうかな。

「だ、大輔……」

 向こうから来た。おかしいな? なんとなく次に言いそうなことの予想がつくぞ?

「幽霊ってどう説明するべきかな……?」

 ヤッパリナー。

「……実体のない魔物(ガルナ)みたいなもんなんじゃねえかな」

「未練とか怨念とか、負の感情だったりそれに近いものが残るものだもんね。そう説明するのがやっぱり一番なのかな」

「完璧に説明するのは無理だろうし、それっぽいこと言うしかねえと思うぞ」



 悠人は頷いて、アルカニアに説明しにいった。

 俺たちは基本的にいつも一緒にいることが多いのだが……悠人はアルカニアと幽ヶ峰に囲まれていることが多い。いや別に仲が悪いとかそんなんじゃなくてね?

 要は乙女心というか、独占欲とかなんだろう……自分の手元に置いておきたいみたいな。

「幽霊ってのは肉体のない魔物(ガルナ)……みたいなもんだと思ってくれ。あと大概、自我と知性がある……と思う」

「思う、なのですか?」

「見たことないもんだからさ……」

 ぶっちゃけ、なんとかすれば殺せる魔物(ガルナ)よりも幽霊の方がよっぽど怖い。

 まあ俺、霊感ないから幽霊なんか見えないんだけどな……。



「……そうだ」

 手っ取り早い方法を思い付いた俺は、端末を動画投稿サイトに繋いだ。

「こんなん」

 俺は、とある映像を見せた。

 撮影者が新居を撮影していると窓際に白いワンピースを着た女が立っており、慌ててカメラを逸らすと、逸らした先のクローゼットが少しだけ開いており半透明の子供の顔が映り込んでいた、という映像である。

「「…………………………」」

 エリーとエミリア、そしてシエルがそれを見て……ただ黙りこくっちまった。

 驚かしたろ。

「……わっ!」

「ひゃぁぁぁぁぁぁっ!」

 エリーは仰け反った。

「きゃぁっ!」

 エミリアも上品に仰け反る。

「…………んー?」

 シエルはまるで意に介していなかった。つっよ。



「要はこういう訳の分からん人型の“何か”が驚かしてくるアトラクションなんだよ、お化け屋敷って。まあそっちの感覚で言えば……人型だとランクSか。ランクSの魔物(ガルナ)に追いかけ回されるアトラクションってとこか?」

「悪趣味! 悪趣味だよアーザル!」

 エリーがそう言う。俺もそう思う。

「で、どうしようか」

 悠人がそう言って俺らを見る。

「無理そうな人が多いなら別のアトラクションに行くけど」

 エリーやエミリアの反応から見るに2人は辞退するだろうし次のアトラクションを考え――。

「僕は行ってみたいかな。こっちの魔物(ガルナ)に酷似した文化……怖いけど興味深くてね」

「ええ、わたくしもですわ。恐怖そのものを娯楽にする……なかなか面白いと思いますわ」



 うそん。めっちゃ乗り気じゃん。

「シエルもー!」

 マジかよ。

「ボクはこういうの好きなんだよね」

 康太がホラー好きなのは知ってる。夏だからホラー特集の番組が多いが、康太はいつもそれらを見てるんでな。

「…………ホラーゲームは大好物」

 幽ヶ峰もこういうの好きらしい。

「アタシも行くわよ。そもそも見識を広めるための留学だしね」

 アルカニアも勇んでいる。

「大輔、行こうか」

 悠人がそう言って微笑む。……まあビビリなだけだし、実際俺もこのやたら大規模なアトラクションは気になってはいる。

 行くか……。




      〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 ゴーストタウン。

 普通のお化け屋敷とはだいぶ違い、街そのものを模した作りになっている。

 非常に広い円形の作りになっていて、その広さは4平方キロメートル……端から端まで徒歩でちょうど30分ほどってぐらいの広さだ。入口が東西南北にあり、そこから100人の遭難者と呼ばれる来園者たちが入場する。

 来園者は入場の際にミッションを与えられ、それをこなすことで脱出が可能となる。

 ただし30分で脱出ができない場合、幻覚魔法によって作られた怨霊たちの嵐が壁から現れ、中央に向かって進み始め……それに触れると外に転送される、というアトラクションである。

 また、街中にはこれまた幻覚魔法と転送魔法のハイブリッドで作られた怨霊が闊歩しており、これに5回触れられると外に転送されてしまう。動きは遅いらしいが……。



「よし、じゃあ行こうか」

 俺たちはついに入場する。

 入場ゲートもすごく凝ったもので、4種のゲートすべてが異なる設定を持つ。俺たち含む25人はまず入場すると電車のような場所に出た。窓を模した液晶パネルに映し出された、流れゆく曇り空と農村の景色。そしてやたらリアルに揺れる電車。

 やがて止まると、「ひらさか駅」に到着する。

 そして遭難者たちは脱出を試みる……。なるほど、よくできたアトラクションだ。

 俺たちグループに与えられたミッションは『病院のナースステーションにあるカルテを回収』『中央小学校の5年3組の教室に置かれている携帯を回収』の2つである。本来は1つだけらしいのだが、集団だとミッションが少し増えるようだ。



「うーん……手分けした方がいいかもしれないね」

「そうか? 30分もあるしいけるだろ」

「いや、8人で連れ歩いたら流石に恐怖が薄れる気がするんだよね……」

 その方がありがたいんだけどなー。まあ言わんとしていることはわかる。心霊スポットに数十人でぞろぞろ入っても怖い気しないし。

「つってもな、どう分けるよ?」

「どうせなら4人と4人で分けたいんだけど、どうしようかな」

「悠人くんと大輔くんでいいんじゃないかい? シエルちゃんは大輔くんに着いていくとして、あとはみんなで決めるのがいいだろう」

 エリーがそう言った。ああ、もう手分け確定なのね……。



 結果、悠人チーム(悠人、康太、幽ヶ峰、アルカニア)と俺チーム(俺、シエル、エリー、エミリア)となった。

「こ、康太……」

 たすけて、と言おうとした寸前、康太はなにか違う解釈をしたらしく、

「任せて大輔! 2人が暴走しそうになったらちゃんと止めるから!」

 そう言いつつ満面の笑み+サムズアップしてから悠人の元へ向かってしまった。ちゃうねん……。

「じゃあ僕らも行こうか、大輔くん」

「わたくし達は病院へ向かうのでしたわね。行きましょう」

「おー!」

 …………まあこっちもこっちでみんな心強いし大丈夫かな……。



 なよなよしていても仕方ない、俺も男だ、覚悟決めていくしかねえな!

「あ、大輔くん、後ろ……」

「え?」

 振り向く。すぐ後ろには、生気のない顔。

「ァァァァァァァァ……」

「わ゛ぁ゛ぁ゛ー゛ッ゛!?」

「だ、大輔く……速いッ! 逃げ足が速いよッ!」

「……大輔さん、突然の出来事に弱いタイプなのかしら」

「わー! まてまてー!」

 先が思いやられる。特に俺の精神衛生的な意味で。

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― 新着の感想 ―
[一言] また読み始めたので少しずつ読んでいこうと思います。
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