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俺の友達が強過ぎるんだが。  作者: 日向 渡
騒乱の夏休み
115/210

みんなで遊ぼう!おきのとりパーク!

      〜〜〜〜〜鹿沼大輔の場合〜〜〜〜〜



 おきのとりパーク。

 沖ノ鳥島に唯一存在する遊園地である。

 開演前から行列に並び、ついに入場出来た。

 8人まで呼べるチケットによって集まったのは悠人、幽ヶ峰、アルカニア、俺、康太、シエル、レッセリア兄妹とちょうど8人だ。

「おっきいねえ!」

 シエルはそう言って飛び跳ねた。かわいい。

「身長は昨日計測した。全部乗れるぜやったね」

 平均より少し小さい133cmだが……ここにあるアトラクションの身長制限には引っ掛からないようだ。

 そもそもシエルって何歳なんだろう……本人に聞いてもわからないし、空から降ってきた超絶可愛い天使ってことしか知らないんだよな。

 いつか、この子が何者かを知ることもあるんだろうか。

「だいすけ?」

 シエルが俺の顔を覗き込んできた。

「どしたの?」

「ん……いや、何乗ろうかなと思ってな。シエルは何乗りたい?」

「ジェットコースター!」

 わーおアグレッシブ。



「……そういやレッセリア兄妹は?」

「向こうにいるよ」

 康太が指差した先に二人はいた。

「すごい……これが遊園地なのだね!」

「レナウセムとは根本的に娯楽施設の方向性が違いますわね」

 なんか興味深いこと言ってる。

「おーい、さっさと並ばねえとすぐ行列できるんだから、行くぞー」

「はーいですわ」

 そんなとこにまでお嬢様感出すのこの子。

「で、何から乗るかなんだが……どうするよ?」

 俺は悠人に話し掛け……。



「行きましょ、悠人。アタシ、実は遊園地って初めてなのよ。エスコートしてくれないかしら?」

「…………開幕奥ダッシュは基本。…………ついてきて」

「わ、わ! 引っ張らないで……」

 悠人が大岡裁きみたいになっておる。仕方ねえ、助けてやるか。

「おいおい、その辺にしと」

「黙ってて」「…………悪いけど、引っ込んでて」

「すんませんでした」

 俺は無力だ……ッ!



「でもさっさとしねーと、どんどん並ぶ時間増えちまうぜ? ただでさえ夏休みなんだからよ」

「う……」「…………返す言葉もない」

「奥から回るのがいいってのはマジだな。みんな手前に固まりがちなんだよ」

 そんなわけで、俺たちはだだっ広い園内を歩き、奥の方から攻略してゆくことにした。

 移動中でさえ悠人は幽ヶ峰とレッセリアの熾烈な争いに挟まれていた。悠人が俺に助けを乞う目線を何度か送ってきたが、残念ながら俺は命知らずではないし死に急いでもいないのだ。

 そうして最奥のアトラクションに並んだ。列はそこまで長くはないが、同じようなこと考えてた人たちは少なくなかったようだ。



 さて、突然だが……遊園地で最も必要なものが何かをご存知だろうか。

 金? ああいやまあそうなんだけどそうじゃなくて。

 話題だ。列に並ぶ上で必須と言っていい。

 ただし友達や家族と一緒に来る場合に限るが。1人で来るなら考えなくていいので楽だな。そうなると携帯のモバイルバッテリーの方が大事だろう。

 そんなわけで、俺たちはしばし会話を楽しむことにした。

「そういやよ、さっきレナウセムの娯楽がどうのって話してたよな。遊園地って向こうにないのか?」

「ないですわ。賭けが行われる決闘場や、演劇を楽しむ演劇場、あとは盤上遊戯が主ですわね。こちらで言うところの将棋やチェスのようなものや競技性の薄い娯楽的なものまで様々ですわよ」

「そりゃやってみたいぜ。つまるところ結構アナログなんだな」



「たいがい魔導具ですので、見た目だけはかなり独特ですわよ」

「えっ何それ超見たい」

「今度お部屋に持っていきますわね。アルカニリオス発祥で一番人気のガイナスタって物がありますの。この国で言う将棋みたいな立ち位置ですわ」

「ひゃっほう!」

 わあいそういうボードゲームだいすきー。

 話していると順番が来て、俺たちはアトラクションに乗り込んだ。



      〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「一発目の激しさじゃないよこれは! ……うっ」

 エリーは右に左にと揺れまくる屋内コースターできゃあきゃあ叫びまくり、出てくる頃には動かない地面に違和感を覚えふらついていた。

「次に行くとこも結構激しいけど大丈夫か?」

 俺はふらふらしているエリオットの肩を掴んでやって、安否を聞いてみる。絶叫系が無理なら他のアトラクションもオススメできるのだが……。

「たのしかったねー!」

 シエルは非常に楽しかったらしく、ぴょんぴょこ跳ねまくっている。俺達のグループは全員絶叫系が好きだったらしい。

 とは言え、1人だけ待たせるのも悪いし……。



「い、いや、大丈夫だ。心の準備が出来てなかっただけだか――ら?」

 エリーが固まった。なんだ?

「そ、その、手を離してくれると……」

「あ、悪い」

 肩を掴んだままだった。体勢を崩さないようにと思ったが……痛かったかもしれん。

「おーい、大輔! どうするー?」

 人混みに紛れて悠人が次の行き先を聞いてきた。

「エリー、無理そうなら無理でいいんだぜ」

「大丈夫さ。まあ、次乗ってダメそうだったら辞退するよ」

「ああ、こればっかりはどうしようもねえ、そう気に病まなくていいぜ」

 俺たちは次のアトラクションに並んだ。



      〜〜〜〜〜公崎悠人の場合〜〜〜〜〜



 アトラクションに並んでいる途中、端末にメッセージが送られてきた。

 ――なんだろう?

 送り主は……生徒会!

『やあ、佐村です。今すぐ仕事を、という訳じゃなくて、最近沖ノ鳥島にやってきたユニオンの新たな犯罪者についてわかったことがあるので通達だけしておこうと思いましてね。前の事件現場付近の監視カメラに、とある魔導犯罪者の姿が写っていたんです。それは「天真のトーレス」。本土で半魔(ナルクス)を生み出していたグループの1人です。写真を送っておきますので、見掛けたりしたら連絡をください。では』

 そう書いてあったメールに、写真が添付されていた。

 その写真には、年端もいかない少年が写されていた。その子は本当に楽しそうに、満面の笑みを浮かべていた。

 ――この子が魔導犯罪者だって……!?



 善悪の区別も付いてくるような小学生くらいの子供。特撮ごっこをしていてもおかしくないほどの、子供だった。

「…………」

 そんな子供が、人を半魔(ナルクス)化させている……?

「悠人、列、動いたわよ」

「え? あ、うん」

 慌てて、歩き出す。

 足に、軽い衝撃。

「あいたッ」

 しまった、携帯を見ていたせいで人にぶつかってしまった。

「すみません!」

 僕は慌てて謝る。



「いやいや、いいよ気にしなくてッ! でも次は気を付けてねッ?」

「うん、ちゃんと前を見……て……?」

 そこにいたのは。


 写真に写っていた少年だった。全くおなじ笑顔を浮かべていた。


 ――天真のトーレス!? まさか、なんでこんなところに!

 いや、他人の空似である可能性もある。実は双子がいるのだとか、容姿だけで決め付けるのはよくない。

「? どうしたのかな、お兄ちゃんッ?」

「い、いや、なんでもないんだ、ごめんよ」

 そうだ、こんな小さい子が犯罪なんてやるわけがない。

「あらあら、ウチの子がなにか迷惑をお掛けしましたかしら」

 僕に声が掛けられた。女性の声だ。



 見ると、母親らしき人が困ったように僕を見ていた。隣には父親らしき人もいる。

「いえ、僕がぶつかってしまって。前を見てなかったんです、すみません」

「まあ。気を付けてくださいね、怖い人達にぶつかってしまったら、謝っても許してもらえないかもしれませんもの」

「仰る通りです」

 そう言って僕は軽く頭を下げた。うう、何をやってるんだ僕は。

「……あら、タレスちゃん、あの人…… 」

 少年の母親が、僕の後ろを見て驚いている。

 それに、この少年の名前はタレスと言うらしい。似ているが人違いのようだ。本当に兄弟だったりするのかもしれないが……。



「あッ、前にぼくの邪魔をしたお兄ちゃんがいるッ! ママ、どうしようッ?」

「挨拶だけでもしておいたら? どうせ、あの子じゃ貴方には手も足も出ないもの」

「それもそうだねッ!」

 そんな、よくわからない会話をして。

 少年は僕の傍を「ごめんねッ、ちょっと通るよッ」とすり抜けて、大輔の元へ向かっていった。

 面識があるのだろうか。

「やあッ、久しぶりだねッ」

「うん? ――――ッ!?」

「えへへッ、驚いたかなッ? ぼくだって休みくらいは遊園地に遊びにくるものッ」



 少年が大輔に話しかけた途端、空気が、変わった。僕だけじゃない、葵もミオも……みんな気付いていたようだった。


 それは、大輔が放つ明確な敵意だった。


「ねえッ……ちょっとは強くなったッ?」

「……てめぇが喜ぶようなことにはなってねえよ、残念ながらな」

「なーんだッ、じゃあいいやッ! 今日はぼく、本当に遊びに来ただけだから――」

 少年もまた、不敵な笑みを浮かべて言う。

「誰かに話したり邪魔したり――しないでねッ?」

 殺意が溢れ出る。一般人はきっと気付いていないだろうけど、邪魔すれば殺すと、言外に少年はそう言ったのだ。

 そして、少年は両親の元へ戻る。

「だ、大輔……?」

 康太が恐る恐る、といった具合に聞く。



「……なんでもねぇよ」

 それだけ言って、大輔は押し黙ってしまった。

 手をポケットに突っ込んで、不機嫌そうに。



      〜〜〜〜〜鹿沼大輔の場合〜〜〜〜〜



 震えが、冷や汗が、止まらない。

 未成熟な精神だからこそ人に向けられる、純粋な殺意。

 俺のような貧弱なアリを、いつでも踏み潰してしまえるぞ、と笑うトーレス。

 悠人にも、誰にも話すわけにはいかない、あの夜のことを、トーレスのことを。

 震える手をポケットで隠し、冷や汗は夏のせいにしよう。

 恐怖を隠せ、怒っているように見られてもいい。

 奴が何をしでかすかわからない。一般人が襲われるかもしれないし、康太たちに危害が及ぶかもしれない。



 トーレスの実力は未知だ、何一つわからない。

 無知は、恐怖だ。

 奴がここにいることを忘れてしまえればどれだけいいか。

 しかし、考えなくてはならないこともある。

 何故、奴がわざわざ接触してきたか、ということだ。

 冷静になって考えるしかない、なにか理由があるはずだ。黙っていれば気付かなかったのに、わざわざ自分の存在を誇示した理由が。


 アトラクションの順番になっても、その理由は思い当たらなかった。

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