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歓迎戦3 ランクDの意地

 俺は、ビルからビルへ飛び回る。ビルによって高さがまちまちなので、滞空時間は当然違ってくる。それが長いと魔法が飛んでくるので危険だ。


 顔を下に向け道路の方を見ると、旅原さんが巨大な斧を手にしたまま走って追いかけてきている。怖い。


「もーっ! 逃げてばっかりじゃないですかぁ!」


 そう微かに聞こえた。そうは言われても、正々堂々戦えば負けるに決まっているのに止まる人間はいない。俺は勝てない戦いはしない主義なのだ。あと、走っていると旅原さんの胸が暴れて、なんだかもう、なんだかもう。


 俺は空中を飛び続けながら、遠方へ視線を向けた。街の至る所で戦闘が起こっているらしく、煙が上がっていたり、あるいはビルが倒壊していたりと、まるで世紀末である。そして一瞬、強い輝きが発生したと思うと、大爆発と、それに続く水の柱、そして火柱が遠くで発生した。恐らくあそこで悠人とランクSが戦っているのだろう。


 俺はその地点と真反対の方向へ移動を始める。俺に与えられた役目は彼女を倒すことではなく、あくまで時間稼ぎなのだ。悠人が赤髪のランクSを倒すまでの。


 ただ、彼女が俺をランクSだと勘違いしているのは色々と不都合だ。この戦闘はここで終わるにしろ、学校生活はこれからも続くのだ。後でネタバラしをせねばなるまい。


「ひゃうっ!」


 甲高い声がビル街に響く。ビルの屋上から見下ろすと、旅原さんは倒れていた。


「あうう……」


 転んだらしい。何故だか罪悪感が込み上げてきた。ごめんね、逃げ回って。


「う、ううう」


 呻きながら立ち上がり、手で制服に付いたホコリを払って、落とした斧を拾って、辺りを見回し始めた。あー大丈夫、誰も見てない誰も見てない。俺以外は。


 そしてビルの屋上から見下ろしている俺の姿を認めると顔を真っ赤にして俯いた。猛烈に謝りたい。


 でも時間稼ぎという目的は問題なく進められている。今すぐにでもビルから飛び降りて世話を焼いてあげたいが、残念ながらここは戦場なのだ。


 旅原さんを見て和みつつ休憩をしていると、彼女は何かを決意したような表情をしていた。すると、突然こちらを向き、斧を構えながら、俺目掛けて跳躍した。


「忘れてくださーいっ!」


「ひいいいいいいいいいいいいっ!?」


 どうやら頭を強く攻撃して記憶を抹消させようという算段らしい。それも斧で。


「やめてください死んでしまいます!」


「えええーいっ!」


 俺は後方に大きく跳躍する。旅原さんが勢いよく振り下ろした斧はビルの屋上に突き刺さった……かと思いきや、斧を中心にヒビが入り、屋上は瓦礫へと化した。更にヒビは続き、ビルの上半分を破壊した。ホコリや砂らしき粒子の煙が上がる。物理法則など完全に無視か。


 俺は「限りなく(アルアラ)弱き(ウェンテ)風よ(ウィール)!」と即座に詠唱し、風を起こし、ホコリを旅原さんに飛ばした。目眩ましにしようということだ。


「げほっ、げほっ……もう!」


 旅原さんは空中で斧を振り回す。ホコリは霧散する、のだが……。


「やあああ! とーまーりーまーせーんー!」


 旅原さんの身体ごと、斧はあらぬ方向へ飛んでいった。空中で斧を振ればそうなるに決まっている。


「…………ええー」


 まあ、ある程度のドジを踏むだろうとは予想していた。魔導士候補生である俺たちは、魔導士になるため、加えて戦闘技術を学ぶためにこの学校に来ている。つまりそれは、入学すぐはほぼ全員が素人同然であるということ。


 俺は幼少期から凄爺ちゃんに、軽い訓練を付けて貰っていた。だからそれなりに動けるわけだが、一般的な学生はせいぜい中学時代に魔導士志望コースの体育の授業で自らの魔導武装を少し振り回した程度だろう。


 たとえランクSであったとしても、入学してすぐで、しかもまだ授業すら行われていないこの状況では、詠唱に使える魔法語もせいぜい中学で習ったか、入学時に配布されたガイドに載っている程度のものだろうし、魔導武装も使いこなすなんてことは出来ないだろう。家がその武器種の道場でもない限りは。


 旅原さんは斧の遠心力に引っ張られて、回転しながらビルに激突……するかと思われたが、斧がビルの壁を崩し、旅原さんはビルの中へ消えていった。


 あの様子では大したダメージも入っていないだろう。それどころか、こちらから彼女を視認出来なくなってしまったのはとても痛い。こちらからは見えないのに、相手は屋上に立つ俺を視認出来るのだから。


 逃げ出したくはあるのだが、彼女の視界から消えるわけにはいかない。赤髪の少女の援軍として、悠人の方向へ行ってしまう可能性がある。それは避けなければならない。


 とにかく、今は旅原さんが消えていったビルの方角に神経を集中させることにする。俺は体内の魔力(エナ)保有量が少ないので、いくら魔導士候補生の初歩魔法とは言え、ランクSと判定された人間の魔法なんて当たってしまえばひとたまりもない。


 専門的ではあるが一応説明しておこう。魔法は魔素(マナ)によって精製されるものであるため、体内にある魔力が多ければ、魔法内の魔素に対して『中和反応』が起きるのだ。逆に魔力保有量が少なければ中和される魔素も少なく、魔法のダメージを多く受けることになる。要するに『ランクが高い=魔法に強い』ということだ。


 数分か、数十分か。付近では誰も戦闘していないらしく、ほぼ静寂が支配していた。相手はチャンスを伺っているのか、あるいはビル内を移動しているのか?


 神経を集中するのに疲れた俺の脳内に、小さな疑問が生じ始めた。移動しながらでも魔法は撃てるはずだ。むしろそうして居場所を撹乱させることも出来る。何故それをしないのか。素人だから? いや、素人ならばむしろ魔法を乱射する可能性のほうが高い。


 ここで一度、現在の状況を整理しよう。俺は現在、1組所属のランクSの少女を足止め、もとい時間稼ぎをしている。これは悠人が1組のもう1人のランクSを倒すためだ。だがこの事実を旅原さんは知らないはずだ。


 現在、悠人たちは俺の背後にあたる方向で交戦していると俺は予想している。むしろ、そうなるように俺が逃げつつ誘導していたのだ。そうなってもらわなければ困る。


 では旅原さんはどうして姿を現さないのか? 先程考えた2つ以外で、だ。しかし、そうなると、とんと思いつかなくなる。何か見落としていることは。


 考えている内に、俺の脳内に声が響く。


『聞こえていますかな、鹿沼氏! 生きているようで安心しましたぞ!』


「と、時野か! お前も無事で何よりだ。それよりも、この魔素の回線が探知される可能性はないのか?」


『ええ、普通回線……つまり思念会話魔法を用いない遠距離会話を数回にわたって行いましたが、付近に感知型はいないようです。それよりも、こちらの居場所は確認できますか?』


 そう言われて、俺は旅原さんの動向に注意しつつ、ここで始めて自分に繋がった魔素の糸を感じた。これはチャンネルによるものではなく糸による会話……つまり、思念会話魔法を用いたものであるらしい。これならば傍受される危険性はほぼないと言っていいだろう。


「……。よし、発見した」


『現在、我々は3組の生徒たちと交戦中です。こちらの増援に来られますか?』


「あー……それは無理な相談だな……」


 俺がそう言った途端、旅原さんがいるであろうビルの壁が勢い良く崩壊した。瓦礫が周辺に吹き飛ぶ。そして、直径3メートルほどの、ゴツゴツとした岩が、物理法則や重力を一切無視して飛んできた。それも、かなりのスピードだ。


 俺はそれを目視した瞬間、咄嗟に上空に跳躍した。先程まで立っていたビルに直撃し、音と砂煙を上げながら崩落していく。


「今ランクSと交戦中! むしろ助けてください! お願いします! なんでもしますから!」


『ん? ……って何ですと!?』


 空中を二度蹴って、別のビルの屋上に着地する。矢先にその場に岩が飛んできた。土属性の弾丸系魔法はホーミングが出来ないというのは知っているので、落ち着いてそれを回避する。


 着地と回避を繰り返す。気付けば、悠人たちの推定戦闘エリアからかなり離れてしまっていた。俺は旅原さんのいるビルを中心に円形に移動するように誘導され、先程とは位置が逆転……つまり、旅原さんの方が悠人たちに近くなっている!


 気付けば、思念会話魔法は切れていた。射程距離から離れてしまったのだろう。しかし、今はそんなことを気にしている暇はない。


 俺は少し考え、そして先ほど彼女が一切の動きを見せなかった理由に行き着いた。彼女は他の誰か……戦闘中であろう赤髪のランクSか、あるいは1組の誰かと魔素による会話をしていたのだろう、と結論付けた。


 ならば、俺をここまで引き付けたのは何故か、そしてこの後どうするつもりなのか。理由は1つだ。悠人との戦闘に参戦するため、だろう。赤髪が交戦している、という情報はランクSである旅原さんの耳にはいち早く届けられるに違いない。


 そして、攻撃は止んだ。向こうへの移動を始めた、ということだろう。俺の、やるべきことは。


 追いかけて足止めをするか。しかし彼女は土属性。当然、陸路を使うだろう。そうなれば俺が完全に不利になる。蒼空は、空中戦に長けた魔導武装だからだ。


 ならばここで見逃し、クラスメイトの援軍となるか。いや、悠人が負けてしまった場合、俺たちは他クラスのランクSに対するカードを失ってしまう。俺が切るべき手札は。



     ~~~~~~~~~~



「もう騙されませんよ。そこを、どいて下さい」


 俺は、直接足止めをすることにした。


「クラスメイトから連絡があったんです。聞いたこともない詠唱をするランクDと水のランクSがミオちゃんを二人掛かりで苦戦に追い込んでいるって。鹿沼くんは、ランクSではなかったんですね」


 ミオちゃん……とは恐らく、あの赤髪のことだろう。誤解も解けているようで何よりだ。ただ問題は、旅原さんが怒っているように見えることだ。ランクSはキレると何をやらかすかわからないからなあ……。


「ああ、そうだ。俺はランクDだ。向こうで戦ってるヒーロー様もランクDだ。書類上は、な。だが、これだけは言わせて貰おう。俺は別に君を騙しちゃいない」


「何故ですか! 鹿沼くんは……!」


「一度もランクSです、とは名乗っちゃいない。まあ、それでいいや、とは言ったが……ご想像にお任せします、ってこったな」


「……。それもそうですね」


 聞き分けのいい人だった。普段は素直な子なのだろうか。


「な、なら、なおさらそこを通してください。怪我をしちゃいますよ。死んじゃうんですよ」


「傷も残らねえし、死んだってこの空間じゃノーカンだ。知ってるだろ?」


「それでも、痛いじゃないですか……」


 旅原さんは、本気で相手を心配しているような表情で、そう言った。保育園の先生が、転びそうな子供を見ているような、そんな表情で。


 母性に溢れた素晴らしい女性だ。だが、その表情が俺に向けられているのが、酷く気に食わなかった。


 何故なら、彼女の言っていることは、「どうせ負けるのにどうして前に立ちはだかるのか」とも取れるからで。そして俺は、どうしてもそうとしか聞こえないのだ。だから、気に食わない。


 見下されているように感じて気に食わない。そして何より……旅原さんが、ただ純粋な善意で言っている、と考えられなかった自分が、気に食わない。


「確かに、ここじゃ誰だって怪我はするだろう。でも、それは君だってそうだ。そうだろ?」


「そ、そうですけど……でも、鹿沼くんはランクD……私はランクSなんですよ?」


 そう彼女は言った。オドオドと、遠慮がちに。


「ランクDの雑魚じゃ相手にならないから、時間を無駄にさせるな……ということで、イイんだな?」


「えっ、あっ、いやっ、そ、そんなつもりじゃ……」


 旅原さんは、必死に否定する。きっと彼女は、本心から俺を心配しているのだろう。それも、気に食わなかった。


 生まれつき、魔力保有量が少ないというだけで心配される、という事実に、俺は心底腹を立てた。


「……悪いけどよ、ここを通すわけにはいかないんだわ。2組が勝つためには、1人でも強力なライバルは少ない方がいい。……個人的な問題も抱えてるようだし、な」


「個人的な問題……ですか?」


「裸覗かれたって怒ってただろう。それ、うちの悠人がやったんだわ。だからこう……二人の戦闘を邪魔しちゃ悪いじゃん?」


 まあ、厳密に言えば三人だけども。いや、幽ヶ峰さんは悠人のスタンド、もといペルソナのような物だから問題は……ないことにしておこう、うん。


「悠人くん……ですか。その人がミオちゃんの着替えを覗いたんですね! 懲らしめてあげないと、です!」


 旅原さんが走り出そうとするが、俺は蒼空の穂を彼女に向けて、それを制止する。


「だから通さないって言ってるだろ。旅原さんが俺と戦いたくなくても、俺は戦わなくちゃならないんだよ。あそこでドンパチやってるヒーロー様に頼まれてるんだわ。だからよ、君が嫌だっつっても俺は襲い掛かるぜ。それに……」


 俺は、蒼空を構える。爺ちゃんに教え込まれた構えで。


「ここまでやる気になってんだ。消化不良になんかさせねえぜ?」


「……そう、ですか……戦うんですね……」


 旅原さんは曇天を、その大きな斧を構える。勿論、型にはまったものではなく、本人が最も良しとする構えで。


「なら、容赦はしません。鹿沼くんを倒して、その上でミオちゃんを助けます!」


 目の前の少女の目つきが変わった。小動物のそれから、戦いに赴く戦士のものに。


「やれるもんならやってみな。言っておくが俺は弱いぜ?」


「な、何故それを誇らしげに……?」


 旅原さんは困惑しているようだ。まあ、無理もなかろう。


「弱いってことはな」


 だから、教えてやることにした。


「どこまでも卑怯になれるってこった……風よ(ウィール)土を(ルーグ)舞い上げ(パーサル)降り注がせよ(テオリ)


 俺は、簡単な詠唱を済ませる。すると、周囲の瓦礫は風の力によって浮き上がり、そしてそれらは勢い良く旅原さんに降り注いだ。


「えっ!? あ、あわわ、土の(ルーグラ)盾よ(ルスィ)!」


 続いて旅原さんも詠唱する。すると、コンクリートは生き物のように動き、彼女を守るように隆起、ドーム上になって瓦礫を防いだ。隙間なく、完全に少女の身体を包み込んだ。


 俺はその隙を好機と見て、地面を思い切り蹴った。蒼空を真っ直ぐ旅原さんに向け、突進する。まるで弾丸のように。


「ランクSに勝てないことなんかわかりきってる! でも、ランクDでだって一矢報いることは出来るんだよおおおおッ!」


 蒼空の穂はコンクリートのドームを砕いて、貫通した。深々と突き刺さる。


しかし、まるで手ごたえがなかった。まるで、中が空洞であるかのように!



 ──中で回避した!? いや、違う、これは───!!




  衝撃。



           暗転。




     ~~~~~~~~~~



「…………ぐっ……」


 一体どれだけの間、気絶していたのだろう。俺は、仮初のビルの中で目を覚ました。保健室とは違う天井が視界いっぱいに広がる。顔だけ動かしてみると、ビルの窓と壁が砕けており、外が見える。


 コンクリートのドームが見えるところを見ると、単純に吹き飛ばされただけらしい。戦死は免れたようだ。かなり荒れていて一瞬わからなかったが、よく見るとメイドカフェらしい。椅子が多いので隠れるにはうってつけだろう。幸い、魔力保有量が少ない俺は魔力を感知されにくいのだし。


 全身に痛みはあるが、鋭い、というよりは鈍い痛みだ。恐らく、旅原さんは俺を切らなかった。峰打ちをしたのだ……斧で。


 まあ、普通の人間であれば、人を切るなんて出来やしない。当然といえば、当然なのだろう。


「あーあ……こりゃ後でどやされるな……痛っ」


 起き上がろうとして、左腕に力が入らないことに気付いた。折れている可能性が高い。脇腹なども同じような痛みがあるので、アバラも数本イカれているだろう。俺は少し時間をかけてなんとか起き上がり、蒼空を顕現させ、それを杖代わりにして立つ。


 次に、魔素による会話を試みた。こうなってしまえば仲間との合流が最優先だ。下手に旅原さんの後を追えば、ランクS同士の戦いに巻き込まれて戦死するのがオチだ。通信傍受のリスクなど考えている暇はない。


「……はぁ、はぁ……おい……誰か…………聞こえないか……つっ」


 左腕と左脇腹が痛むが、泣き言も言ってられない。とにかく、魔素通話の範囲をとにかく広げ、2組の人間のチャンネルに合わせる。


『もっ、もしもし! だ、大輔!? 大丈夫!?』


 聞こえてきたのは、康太の声だった。泣きそうな声で返事をしてくれた。……いや、しかし、女の子のような声だな、本当に。


「大丈夫に、聞こえるか……? いや、それよりも……そっちの状況を……教えてくれ……」


『えっ、あっ、うん! さっき3組が撤退していって、とりあえずみんな休憩してる! 田村くんと女子数人が戦死しちゃったけどね……』


 戦死したのか。お前のロン毛は忘れないぞ田村。


「そっちに……回復魔法を、使える人間はいるか……?」


 それがいれば、俺の左腕も治るのだが。しかし、疲労と痛みは回復せず、自然回復しかないのが回復魔法の欠点だ。傷だけ(丶丶)が治る、とは不便なものだ。


『えーと……回復魔法を使える人っている!? ……あ、いた! ……白鳥さんが使えるって!』


「そうか……。白鳥さんなら……一目見ただけで回復しちまいそうだもんな……はは」


『馬鹿言ってる場合じゃないでしょう! とにかく、こっちに来て!』


「そう言われてもな……場所がわかんねえよ……」


『……そっか、そうだよね。僕は魔素の流れで大輔の居場所を感知したから、すぐに迎えに行くよ! ちょっと待ってて!』


「……ああ…………利口にして待ってるよ……」


 通信が切れる。俺はヨロヨロと歩いて、メイドカフェの奥の席に座って休むことにした。とにかく今は体力を回復するに越したことはない。回復魔法をかけてもらった後に即戦力となれるようにするためだ。


「ああ……いってえ……やっぱつええなあ……ランクSってやつは……」


 先ほどの死角からの攻撃。あれは恐らく、ドームに隠れた瞬間にコンクリートの中に潜り、モグラよろしく地面の中を移動して俺の背後に移動してきたのだろうと考えられる。土属性の魔導士なら不可能ではないし、俺は彼女の魔導武装の能力もわからず終いだ。


「おや? こんなところに人がいる?」


 声が、した。


 メイドカフェに大きく空いた穴。吹き飛ばされた俺が空けたものだが、そこに一人の男子生徒が立っていた。


「魔素の糸を見付けたから来てみれば……ボロボロの生徒しかいないじゃないか。おかしいなあ、魔力(エナ)はちゃんと残ってるんだけどなあ」


 俺の救世主には、ならなさそうだ。

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