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Soul Uploaded-RPG

作者: 宮沢弘

 22:00。

「そろそろはじめるか」

 そう思い、キッチンからポテチと炭酸ジュースを持って来た。少しばかり値がはった椅子に身を預けると、袋を開け、栓も開け、机に置く。37インチのディスプレイが縦横に計4枚。右手にはPCが二台。もう一つPCと同じくらいの筐体の人格リーダが並べて置いてある。SU――Soul Uploader――、人格リーダはそう呼ばれている。そして、薄くはあるがプラスチックのヘルメット。内側には柔らかいジェルのようにも思えるものが、これも薄く塗布されている。このヘルメットはSR――Soul Reader――と呼ばれている。SRからは電源用のケーブルと、データ転送用の光ケーブルが数本伸び、SU自体に繋がっている。

 SRをかぶり、SUへのアップロードを始める。


 前回のセッションの動画を観ながら、アップロードが終わるのを待つ。アップロードに1時間から2時間。1回のセッションも2時間程度だし、前回のセッションの復習にもなる。アップロードされたデータに、前回のセッションの記憶が強く表われていて損はない。


 今夜予定されているのは、キャンペーンの5回目のセッションだ。プロのシナリオ・ライターとGM(ゲーム・マスター)が提供するセッションは品質は高いが、安価に楽しめる。書下しのシナリオで、生身のGMがリアルタイムで介入するようなセッションも提供されているが、そんなのはそうそう手がでる値段では遊べない。そんなセッションだと、物理アバター――つまりはアンドロイド――を使うことになる。そうなれば物理的な舞台も必要になる。その動画も配信されていて、それを楽しむのがせいぜいだ。だから、私が参加できるのは既存のシナリオを使い、GM自身もアップロードされた、つまりSUed――Soul Uploaded――なGMが介入する論理空間内でのものだ。


 Soul Uploaded-RPG。これはそう呼ばれている。それを提供しているのは、Dream Park。広大な物理的な敷地も持ち、膨大な論理的な資源も持つ。昔、ニーヴン & バーンズが、そういう名前の小説を発表していた。彼らから使用権を得て、その名前を使っているらしい。


 観ていた前回のセッションは結末を迎え、最後の挨拶をしていた。PC、NPC、GMとも挨拶していた。NPCと言っても、簡単な人工知能から、高度なものまで様々だ。しかも、専属のNPC俳優のSUed-NPCもいる。自分のSUed-NPCが登場したセッションを俳優が観るのかはわからない。おそらく少しは観る程度だろう。だが、少なくとも簡単な人工知能と同じように接っするのはためらわれる。プロのSUedではあっても、そして論理空間内であっても、実際に気分を害してしまうこともあるのだから。それが後のセッションに影響することもある――と聞いている。

 前回のセッションのエンドクレジットが流れはじめた頃、SUから完了の表示がPCを経由してディスプレイに表示された。私はセッション記録を観終わってから、SUed――読み取った人格――の、前回からの差分を求める計算を始める。

 セッションの開始は01:00。だいたいいつも2時間なので、03:00ごろに終わる。2時間程度が1セッションの目安になっている。映画と同じくらいの時間なので、気楽にも緊張しながらでもセッション動画を観れる。もちろん、それが楽しめるかはシナリオ・ライターとGMによるところも大きい。だが、一番大きいのは、自分のSUedがどう行動するかだ。

 差分の計算が終ると、日付けが変わっていた。


「さぁ、楽しんで来いよ。そして楽しませてくれよ」

 そう思いながら、Dream Parkへ差分SUedの送信ボタンを押した。

 セッション後の自動的な編集がされて、閲覧可能になるのがだいたい夕方頃だろう。ちょっと時間があるが、楽しみに私は横になった。


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