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第三話 織徒君、初めてのファンタジー体験

4話目です。

この調子で今日も三話くらい書きたいと思います。

 指輪を右手の中指に嵌めて見ると、体の中から何かが吸い出されるように吸収されるのがわかった。


(これが魔力なのか……?)


 吸い出しは、すぐに終わりを告げ、俺の目の前に半透明で後ろにある風景が透ける、ホログラフィックを使用した、ブルーのウィンドウらしきものが、宙に浮いて出現した。


「まるで、ゲームの世界みたいだな」


 言ってはみるものの、肌で感じる空気感や視界に入る木々は極めて現実的だ。いや、地球とは違う感触があるが、自然で現実のものだと判る質を持っていた。

 その中で、異質なものとして出現したウィンドウには、様々な情報が書かれていた。地球で友人とよく遊んでいたオンラインゲームのステータス表記が一番近いものになるのだろうか。それらをざっと見て、分かった。意味がわからないということがわかった。

 書いてある言語は、俺のよく知る日本語だが、まず俺の種族だ。そこにはクエスチョンマーク、つまりは“?”の一文字のみが書かれていた。俺は生粋の日本人……というか、生粋の人間だ。この世界の出身でも無い、混じり気のない人間である。決して別種族の血が混ざっているなんてことはないはずなんだが……。


「俺の母さんがエルフだった……なんて、ありえないな」


 自嘲気味に笑うが、確かに母は年齢に合わず若い頃のまま、歳を取っても綺麗な容姿には、衰えという言葉がないのではというほど変わりがなかったのだ。


(まぁ、身内補正が入って誇張が入ってる可能性もないとは言えないけどな)


 心の中でつぶやいてみるが、そんなことを思ってみても、目の前のステータス表示が変わる訳ではないのだ。


(そういえば、神の奴が体はこの世界に馴染み易い物に年齢にしたとか言ってたけど、その時に何かミスったとかじゃないだろうな? ……いや、無いな。そこまで話したわけじゃないけど、そんな失敗をするような奴じゃない気がする。分からないなら“識る”為に動いていけばいいだけだ)


 ひとまず種族のことは、この世界で情報を集めながら考えていくことにして別の項目を見た。この指輪から出される情報は、実にわかりやすいように纏められていた。ところどころ情報不足な項目もあるが、基本的には見やすいように、かつ正確な情報を与えてくれるようだ。

 ゲームとは違って自分の能力などは数値化されていないが、体力、魔力、筋力、俊敏性、知性、器用、意志力と、詳しく分ければ本当にゲームのそれと変わらない基礎ステータスの欄が表示されている。

 そして残念なことに、どの項目もランクが“F”となっている。この指輪の情報を識った時に、理解した内容だとFを一番下としてE、D、C、B、Aと上がってきて、Sランクがある。そして、特別な例外扱いとなるEXというランクがあるらしい。つまりは、俺は全てのステータスにおいて最低ランクということになるようだ。

 年齢の部分が十四歳と表示されているから、平均的な子供は全てランクFに該当するのだろうか。もし、平均以下だとすれば少しばかり、ショックな話だ。

 それ以外にも、ステータスとは別の括りとして、剣術や魔術、銃術。他にも格闘術や、戦闘に使えそうなモノ。料理、演奏、採鉱、錬金術など通常の生活で使えるようなモノが、まさにここはゲームの世界だと言うかのように“スキル”という項目の場所にページの隅々まで記載されているのだ。

 もちろんこちらも、ステータスと同じように自分の成長度合いが確認できる要素があった。スキルはステータスと違い、レベルという表記方法になっていた。こちらにはアルファベットでの表示ではなく、数字によるレベルが付けられているようだ。

 当然のことだが、スキル欄に表示されている技能も、一つの例外を除き、おしなべて“Lv.1”と表示されている。剣や銃、ましてや魔法なんて使ったことがないのだから当然だろう。しかし、スキル群の中で一番上に表示されている、“識者”というスキルだけはレベル10まで上昇していた。恐らくは、先ほどこの世界の構造を識った為。この事から考えると、ある一定の条件を満たしていけばレベルが上がっていくということなんだろう。

 指輪から得た情報によると、スキルの最大値はレベル100らしい。だが、その分野を極めた者は、ステータスと同じく例外として、レベルEXとなるようだ。その局地に辿り着くには、どれほどの努力が必要なのかと考えてみるが、俺の目的を達するために必要なのは、あくまでも情報だ。強さを目的としている訳ではないが、しかしながら男として、強い力に興味を惹かれるのも、また仕方のないことだろう。

 なんにせよ、低いのであれば、これから高くしていけばいいのだ。大事な者を護れない事が無い様に。情報を手に入れられないことがないように。


「うわ、最低ランクに最低レベルか……まぁ、一度も剣を触ったこともなければ、魔法を使ったこともないし当たり前だな。流石に、平凡な人間の俺が特殊な能力なんて、持ってるはずもないし、この眼を神から貰えただけでも十分すぎると思っておかないとな」


 この、ホログラフィックを利用したような、ゲーム地味たウィンドウの存在はこの世界においては異質だ。しかし、確実に俺の立っているこの場所は現実だ。この指輪の存在だけがこの世界から浮いたものとなっているのは、恐らくだが、神がワザとそういう風になるように作ったからだろう。

 

「遊び心は大いに共感できるところがあるが、現実にゲームみたいなものを作り出すのはどうなんだ……?」


 問いかけのようなものを、天に向けて行ってみるも返事はない。もしかしたら、地球のように直接的な“観察”はできないのだろうか。どちらにしろ、俺に対して便利なものを与えてくれたことに変わりはない。多少は感謝してもいいだろう。


「まだ、情報が足りなさすぎる。この指輪に表示されてるステータスも、ゲームを始めたばかりの最弱状態みたいだし、種族と同じく“?”で表示されてる部分も少なくない。あの神のことだから、自分のことは自分で“識るべき”とか言いそうだな」


 穴だらけの情報と、それを探し歩く自分。全てを“識る”事のできる眼を、神から与えられ、復讐とは少しばかり趣の違う目的を持った人間。そんな俺に対し、神がどんな期待を俺に寄せているのかはわからない。いかにもお調子者じみた口調で話す神のことだ。本当に気まぐれの可能性もあるし、逆に何らかの策の中に俺というピースを紛れ込ませているのかもしれない。だが、どんな状況であろうと、俺は俺の望むままに事実を求め、“誰が町を壊したのか”を“識る”。その為に動き続けるのだ。


「まずは、安全の確保か。さっき馬車みたいなのも見えてたし、そっちの方に行けばそのうち人にも会えるだろう」


 呟きながら俺は、ズボンをなるべく地面に擦らないように、かつ腰から落ちないようにベルトをきつく締め、裾を折る。


(そういえば、馬車ってことは前の世界で言うところの中世ヨーロッパのような文化なのか?)


 ふと浮かんだ疑問について考えながら歩き始めた。


最弱とも言えるステータスを持つ織徒君。

異世界転生のチート主人公が活躍するストーリーですが、織徒君がこれからどう強くなるのか、早く成長して欲しいものですね。

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