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第二話 異世界での贈り物

昨日のうちに投稿しようとしていたのに、いつの間にか日を跨いでいました。

どうして時間が過ぎるのはこんなに早いんでしょうね?

 意識がいつ覚醒したのかと聞かれれば、たった今と答えるだろう。でも、いつからそこにいたんだと問いかけられると、答えを返すことはできない。

 俺こと、隠岐織徒(かくれぎおりと)はそんな不思議な状態を実際に体験していた。

 周りを見渡すと、水平線の彼方までとは言わないが、木の生い茂ってるような場所を抜かせば、街や村などに該当する場所が一切ないただの平原。俺が元いた地球では見ることのできなさそうな、大平原だ。


「うーむ……? というか、ここは異世界で、俺はここに転生してきたんで合ってるよな……?」


 とりあえず、記憶を確認しよう。俺は、隠岐織徒。性別は男、歳は今年で二十歳、大学二年だ。土地柄のお陰でかなり大きい大学があることくらいしか、取り柄のない街とも呼びづらい、日本の町出身のファンタジー研究会の副会長。俺の体感時間においては、ついさっき村が全滅して、俺も神様らしき奴に従った天使らしき女の人に殺されて、気づいたらここにいた。

 俺の目的は、村をあんなことにした“敵”を“識る”こと。なんとかできれば、何とかしてやりたいがここはファンタジーの世界だ。日本で平和に暮らしてた俺程度は、軽くひねり潰されると考えておいたほうがいいだろう。


「よし、記憶は大丈夫そうだけど……なんか周りにあるものが全部大きく見えるのは、ここがそういう生態系を築いてきたからなのか?」


 周りにあるもの、身近なのはすぐ傍にある木と持ち運べそうもない岩だな。俺が日本で見ていたものより三回りくらい大きく見える。

 ふと、地面を見たときに俺の着ている服の裾が大幅に余ってることに気づいた。ここに来る前までと同じ、黒のジーパン。有名企業の高級品の中で手が出せそうな十四万円という、大学二年の俺にとっては、まさに勿体無いくらい高い物だ。もちろん自分で買ったわけではなく、贈られた物なのだが……俺の身長と靴に合わせて、いい感じに地面に擦らない程度の裾の長さにしてもらった一品。それが、普通に立っている状態で余っているのだ。


「いや、もしかして……ありえないとは思うけど……」


 一つの仮説が頭の中で浮かび、恐る恐る、しかし迅速に自分の体を確かめるとショックを受けた。小説やおとぎ話では、定番の身体年齢の後退。わかりやすく言ってしまえば、体が縮んでしまっていたのだ。

 いや、おいおい、ここはおとぎ話の世界じゃないぞ……って、そういえば転生してきたから、今はファンタジーワールドの中なんだっけ? あまりにも、周りの木とか地面とかが普通だから、今まで憧れとか仮定の上に仲間と話し合ってきた世界にいる実感がないんだけど。


「ん……? 何か、向こうの方に見えるな」


 遠目で詳しくはわからないが、荷馬車の様なモノが隊列を組んで走っている。どうやら地面の草が禿げている様で、道があるようだ。


「取り敢えず、今すぐに合流することもない気はするが……せめて服をどうにかするのと、俺がどういった立ち位置なのかぐらいは把握しておきたいな……」


 これからの動き方に大なり小なり、確実に影響の出る問題だ。鏡がないからわからないが、恐らく中学生ぐらいまで背が縮んでしまっている気がする。そして、魔法の世界ということは、恐らく俺の今の格好は目立ってしまうだろう。

 情報を仕入れるまでは、少なくとも目立った行動は取りたくないものだ。もし、誰かに自分がこの世界の人間ではないと知られてしまったら、何が起こるか想像もつかないのだから。


《やぁやぁ、無事に異世界に到着できたようで何よりだ。何か困っていることがあれば、出来ることを教えることくらいはしてやってもいいぜ?》


 そんな感じに俺が衣服をどうやって調達するかを考えていると、急に頭の中で声が響いた。


「この声は……ついさっき俺を殺してくれやがった、神様か」


《随分な言い方だな。俺はお前に希望を与えただけだぜ? まぁ、あの状況じゃ何言っても、信じなかったかもしれないから無理矢理に移動させたわけだが……あ、この会話だけど念話ってやつだ。そのうち覚えるといろいろ楽になるだろうぜ》


 口調は俺を殺した時と、なんら変わりない陽気な声だ。しかし、口調は若干だが砕けている印象を受けた。


《あと、これから頑張る若者に特別に贈り物だ。天使を見た事から、俺を神だと認識したご褒美とでも思っておけ》


 そんな事を神がのたまうと、目の前に不思議な光の膜に包まれ青い指輪が出現した。


「うお、魔法か? まだ、この世界について全く知らないが、この指輪は何か特殊な機能でもついてるのか?」


 突然の不思議現象に驚きながらも指輪を見ながら、俺は神に聞いた。


《魔法とは少し違うが、その世界で暮らしていくんだ。そのうち分かるさ。その指輪のことだけどな。それを説明する前に、お前に宿った“能力”について説明してやる。といっても、俺は使い方を教えるだけだ。それがどういうものかはお前が考えろ。その指輪に対して“識りたい”と強く意識してみろ》


 俺は取り敢えず、言うとおりにしてみた。今話している、この神に殺されたとはいえ、何故、村があんなことになったのかを識る事ができる、手がかりを与えてくれたことには変わりないのだ。私怨だけで動けば識る事もできなくなってしまう事を、頭のどこかで理解していた。


《まだ、足りてねぇぞ。もっと集中してみろ》


 その声をきっかけとして、俺の意識は一気に集中した。周りからの雑音は全て消え、目の前にある“モノ”のみに、全ての感覚が凝縮されると、頭の中に大量の情報が入ってきた。


「ぁぐっ……!?」


 強烈な頭痛によって、意識が引き戻される。


《阿呆が……そこまで集中しなくても大丈夫だ。それより、どうだ? “識る”事は出来たか?》


「あ、あぁ……」


 神の言う通り、“識った”――――理解できたのだ、この指輪の性能を。同時に意識の集中をしすぎたせいか、その時視界にあった全てのモノを“識って”してしまった。

 神造世界アステルバーベナ。この魔法世界の名前である。そして、そこに存在する大地を作る構成物質と、その上に生えてる雑草の構成物質。その他、空気など視界にあった全ての情報が一気に頭の中を駆け巡ったのだ。意識を保てているのが不思議なくらいの情報量を、俺は酷い頭痛という症状だけで済んでいた。


「んで、この指輪はあんたが作った特別性で、これを身につけたもののスペックを詳細に表示するものだってか? まるで今の状況を見越したかの様な用意だな」


《あくまで可能性の一つとして考えてただけだ。もっとも、何故かは知らんがお前さんの能力は俺でも視れない部分があるからな。そこはお前さん自身で把握していくこった。最低限として、一番利便性の高そうなものだけは教えるんだから、あとは頑張れや》


 そこで言葉を区切ると、神は急に真剣な声になった。


《お前が得た能力は、体感したからわかったとは思うが“識る力”――――この世界に存在する万物の情報を“視る”ことで“理解する事ができる”っていう、バカみたいにチートな能力だ……》


 説明の途中から、真剣な声が呆れた声に変わってきた。ちなみにそれを聞いてる側の俺も、表情がどんどんと呆れたものに変わっていっていただろう。


「あー、なんだ。神のあんたも俺の世界の事、しっかり知ってるんだな……。いや、それよりも、自分が特別とは思わないけど、何なんだよその能力は……」


《俺が知るわけ無いだろう、極稀に転生者や異能力者が目覚める後天的な能力ってことは分かってるんだが、それが発現する条件に関しては、能力発現時に本人の意思が関係してる事くらいしか知らねえんだよ》


 俺が呆れながら聞くと、微妙に苛立ったような声が帰ってくる。その言葉を聞いて、俺は“識る”という事しか考えていない状況で死んだ為に、この能力を手に入れたのだと判断した。


「分かった、あんたでも知らないことならいいや」


《そうか? まぁ、俺から伝えるのはここまでなんだがな。これから先、苦労するだろうがその能力があれば大抵はなんとかなる。あと体の方だけど、この世界に一番馴染み易い年齢にしといたから二度目の人生とでも思って、気軽に生きてみろ。検討を祈るぜ》


「お、おい!? こっちはまだ聞きたいことが残ってるんだっての!」


 神の一方的な言葉と行為に文句をつけたかったり、この世界の人間の常識を知りたかったりしたが、あくまでもあの神は、極力干渉しないつもりらしく、俺の声を聞いてるのかもわからないが返事が返ってくることはなかった。

 俺の手元に残ったのは、神から贈られた、俺自身のステータスを確認できる指輪と、転生したままの状態で放置された俺自身。これからのことを考えると本気で頭が痛くなってくるのだった。


「はぁ……取り敢えず、何ができるか確認だけでもしておくか……」


織徒君ですが、かなり落ち着いているように見えますよね。

後のお話で書くつもりですが、それなりの理由があります。読者の方に考察してもらって、アタリかハズレか聞いてみたいものですね。

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