#3 勝負解禁編2
「いやー、いつ見てもカワイコちゃんだよねー、仁枝っちは」
三田は相変わらず手はキーボードを連打しながらも顔をニヘラとさせている。
「オヤジみたいなこと言ってないでしっかり作業してください。はい、俺の分終りました」
少年はそう言って書類を印刷し、三田に渡す。
「おおー、でけたか。安心しろ、俺様もあと368秒で完了するぜ!」
「素直に五分くらいと言ってください」
少年は相変わらずな三田に頭を抱えた。
「ところでアタック、仁枝っちって家が隣の幼なじみなんだろ? てゆーことはアレだ、毎日朝起こしに来てくれたり」
「しません」
「毎日、今日作りすぎちゃったのー、とかいってお弁当くれちゃってたり」
「しません」
「じゃあアレだ、夜アタックが勉強してたら窓が急に開いて仁枝っちが入ってきて、遊びにきちゃった、なーんてことも」
「し、ま、せ、ん! そもそも俺の部屋もヒトエちゃんの部屋も南向きだからそのシチュエーションあり得ないです!」
「あらま、ざーんねん」
三田は少年をからかいながらも書類のまとめに入っているようだった。
少年は仕方ないので三田の話に付き合ってやることにした。どうせ話してても作業スピード変わらないからこの人は、と。
「ま、部長にはヒトエちゃんは無理っすよ。なんたって2年の間では一番人気の娘ですから」
「うるへー! うるへー!」
三田は口をこれでもかというほど尖らせる。
「埼玉に住んでる古いダチがさ、パソ部って案外女子入るぜーってゆーから期待してたら結局ウチには二人しかいねーじゃねーかよ!」
「二人いればいい方なんじゃないですか?」
少年があきれ顔で言う。
「しかもその二人のうち一人は幽霊みたいな女でもう一人は幽霊部員ときたもんだ!」
幽霊みたいな女とは2年の夏目、幽霊部員とは同じく2年の与謝野のことだが、三田のその言葉に少年は首をかしげた。
「あのー部長、与謝野は男なんですけど」
「いーや認めん、あんなかーわいい顔しといて男子とは勿体無さすぎるわー!」
確かに与謝野は女子とみまごうほどの綺麗な顔立ちをしていたが、まさかこのバカは本気で与謝野を女だと思いこんでいるらしい。
「くっくっく、いつか暴いてみせる…、あの制服を脱いだら鼻血もののナイスバデーが」
「ないない、絶対ない。ああ見えて与謝野ってかなり喧嘩強いっすよ」「いやん、暴力反対」
暴力以上に危険なこと言ってる人に言われたくない、と少年は思った。
「あれ、それじゃ副部長の有島さんは?」
副部長で3年の有島こそれっきとした女子のはずだが。
「ああ、あんなゴリラでドンキーコングな奴は女子から除外」
「ひでえ。有島さんも美人じゃないですか」
「ちょっとぐらい顔良くたってあんな暴力者じゃだめー。奴こそ制服脱いだらぴくぴく動く胸筋と六つに割れた腹筋と鬼の顔の様な背筋が―」
その瞬間、教室のドアが派手に勢いよく開け放たれた。有島だった。
「三田くーん? 今、何の話をしていたのかなぁ…?」
顔は笑っているが目が笑っていない。そして、彼女の背後にはよく分からないがもの凄いオーラが燃え盛っているようだった。
有島は三田にゆらり、と近づく。
「ひ、ひいいいー!」三田が悲鳴を上げる。
有島は笑顔のまま、三田を無言で殴打し始める。
「痛い痛い痛い痛い、やーめーてー!」
少年は、殴られまくっている三田に言った。
「部長ー、もうすぐ368秒経ちますよー」




