魔法学校
みなもの朝は早い。
質素な朝食を終えるとノート数冊と教科書を詰め込んだ鞄に自分で作った弁当を詰め込み一人暮らしのアパートを飛び出す。
外は水を張った水田があちこちに広がり、その水田の向こう側にポツリポツリと大小さまざまな家が見える。そのまましばらく歩くとやがて家が立ち並ぶ住宅地、そしてまだ早朝のためシャッターがしまった商店街へと出る。その商店街を抜けてさらにしばらく歩くと今度は背の高い木々が見え、やがて林へと変わっていく。
林の中にある舗装された道路をしばらく歩いているうちにやがて行く手に多きな校舎が見えてくる。
その校舎こそ、みなもが目指していた場所である魔法学校なのだ。
ここまで来るのにおよそ一時間かかっている。早く自転車でも買おうかと思いつつ、ついつい先伸ばしにしてもうずいぶんと経つ。
学校自体バイトを禁止しているわけではないが、みなもはどうせバイトするならその時間を勉強に使いたいと思いバイトは一切していない。
そびえ立つ校舎を見上げながらみなもは毎日彼女の身に起こっている日常に憂鬱になりながら校門を通りの抜けていった。
二階の一番奥、そこにみなもが所属するクラスがある。
教室に入ると窓際の一番後ろ、自分の席につき、それから自分の机の中を覗きこんだ。
前日には何も入れずにおいた机の中は紙屑がたくさん、乱雑に入っている。その紙屑に書かれた内容をなるべく見ないように机の中から取り出した。
見ないように取り出したはずの紙屑だったが、みなものそんな思いも空しく、紙屑に書かれた内容はみなもの視界に入ってきた。
「ばか」
「お前、臭い」
「来るんじゃない」
悪意のあるその言葉達はみなもの心に突き刺さり、重くのしかかってくる。
泣きそうになるのを我慢してみなもはその紙屑をすべて丸めて自分の鞄へ詰め込んだ。
あとで他の場所で捨てるためだ。
彼女がどうしてこのような境遇にあるのか。
この学校に入るまでろくろく字が読めず、資産家や名家の子息達がいるなかで裕福ではない平民の者達がいる。
そして、彼女自身が引っ込み思案で人と話すのが苦手となれば他の者達のストレスの捌け口となるのは必然だったのかもしれない。
本来ならそれを止めるはずの先生も生徒達の顔色をうかがうばかりでむしろみなもにつらく当たるばかり。
そんな境遇でそれでもみなもがここで魔法の授業を受けていたのはひとえに自分の住む村のためだった。