3.日常
遅くなって申し訳ありません。
眩しい朝日が瞼を刺激し、目が覚める。俺は自室のベッドから起き上がり、朝食の支度を始める。そして、いつものように朝食をとり、着替えをし、日課を済ませ、家を出た。
「じーちゃん、行ってきます」
いつもの登校風景。そんな中を歩いているからこそ、昨日の非現実的な出来事を否応なく思い出してしまう。
昨日の夜、呀這髑髏を”封印”した俺は、おそらく気を失ったのだろう、いつの間にか家にいた。そして眠気に身を任せ爆睡した。
そもそも昨日のこと自体夢なのかどうか分からない。まあ、今日にでも土御門さんに聞いてみればいいや、と思いながら通学路を歩いた。
「おはっようさ~ん!」
「おう、おはよう」
教室に入るなり我が親友の根元が話しかけてくる。
「なあなあ知ってっか?」
「何をだよ?」
「昨日聞いた七不思議あっただろ?その1つの”動くガイコツ”を見たヤツがいるんだってよ!」
「へ、へぇ・・・」
”動くガイコツ”ってまさか昨日のアレじゃないよな・・・。
「へぇってお前・・・土御門さんに興味がないというのか!」
「何でそこで土御門さんが出てくんだよ?」
「なんかな、そいつが言うには、そのガイコツと一緒に土御門さんを見たらしいんだよ」
おいおい、昨日の状況に似てきましたよ。それじゃ本当に昨日の出来事は俺の夢なんかじゃないのか?
「おっ・・・来たぜ」
教室の入り口に目を向けると、ちょうど土御門さんが入ってきた。
「土御門さん、おはよー」
「纏ちゃん、おっはー」
クラスの連中に挨拶をしながら、土御門さんは自分の席・・・ではなくこちらに向かってくる。ただならぬオーラを放ちながら。
「土御門さん!おはよーございます!今日もいい天気で―――」
「おはよう芦原くん」
「お、おはよう土御門さん」
「昨日のことは、今日あなたの家に行って説明するから」
いきなり来たと思ったら用件だけ伝えて土御門さんは戻って行った。び、びっくりした。
「おい、あァぁはァぁらァぁ!」
華麗にスルーされた根元が涙を流さんばかりの勢いで俺の方をがっくんがっくんゆする。
「どぉゆぅこぉとぉだぁァぁ!お前、すでに土御門さんとお知り合いなのか?それとも男と女の関係になっちまってるのか?」
「違ぇよ。ちょっと昨日いろいろあってな・・・」
「いろいろって・・・いろいろってなんじゃぁぁぁ!」
「はいうるさい」
「ヒンドゥッ!」
いつのまにか教室に入ってきていた担任が出欠名簿で根元の頭を思いっきりはたいた。うわ、痛そ。
「じゃあ朝のホームルーム始めるぞー」
特にこれといった連絡事項も無くホームルームが終了し、そのまま午前の授業に突入する。昼休みもいつも通り根元と騒いで終わり。午後は睡魔の猛攻に耐えきれず沈没した。なんのことはない、いつものことだ。
「ただいまー」
つつがなく本日の過程は終了し、さっさと俺は帰宅した。そのうち土御門さんも来るだろうし。
シャワーを浴びて、着替え終わる頃に、土御門さんが来た。なぜか、根元を連れて。
「なんでお前が?」
「いやー、土御門さんに案内頼まれちゃってさ!やっぱり俺ってホラ、もてちゃうか―――」
「おじゃまします」
「はい、どうぞ」
なんか1人で喋ってる根元を置いて、俺は土御門さんをリビングへ案内した。
「ちょ、俺を置いてくなよ」
「なんだよ。お前はとっとと帰れ」
「ひどっ!」
「いいのよ。彼も今からの話に関係あるから」
「え・・・?」
ずず、と俺が淹れた親戚自慢の静岡産緑茶を飲みながら、土御門さんは言った。
「それじゃ、説明しましょう。あなたが昨日体験した、非現実な出来事と、この世の裏について」
空は、昼間、日本を照らしていた太陽が紅蓮に染まり、暗い夜が訪れ始めていた。