涙の代価は、幻想の終わり -after scene-
がちゃりと突然鳴った音に心臓が思い切り跳ねた。あまりに驚きすぎて、座っていた椅子ががたりと傾くほど。
「あれ、ルディにリーヤ、起き」くらいまで聞いたあたりでがたんどたんばたんと想像しい音が覆い被さってしかも再びの激痛に襲われた。たまらずに言葉もなくうずくまる。
「おいリーヤ! ……ってお前起きたと思ったら何でそこで椅子から落ちるんだよ!? 大丈夫か!?」
「リオ君、あんまり揺すらない方が……」
「えっ!? あっ、悪い! って言うか泣くほど痛いくせに起き上がろうとするなよお前……」
「肋骨にヒビ入れて涙程度で済むなら放っておいても死なないんじゃないですかねぇ」
「おいこら、いくらリーヤ相手でも縁起でもないこと言うもんじゃねぇぞヒノ」
倒れた姿勢から声も上げないリーヤに慌てて駆け寄ったリオが助け起こそうとしつつ振り返ると、ヒノはさっくりとこちらを無視してルディに笑顔を向けていた。
「ルディさんはどこか痛むところはないですか? 外傷はこれといって無さそうでしたけど」
「あ、うん。私はどこも……」
「熱が出るとしたらこれからですよ。だいぶ無理をしたでしょうから、あったかくして十分気をつけて下さいね」
「あ、ありがとうヒノ君……。えっと、悪いんだけど、あんまりだからそろそろリーヤのことベッドに戻してあげてくれる……?」
「あぁそういえばそうでしたね……。―――ミトさんソラさーん! リーヤさんのバ……リーヤさんが椅子から落ちてコケたのでお二人でちょっと運んで貰えませんかー?」
「ちょっと待てヒノ! オレいるのに何でミトもソラも二人呼ぶんだよ!?」
「えーだってリオさんちっさいからどうせ使えないでしょう?」
「ちっさい言うな! つーかヒノに言われたくねぇよオレよりちっさいくせして!!」
「ヒノはちっさい誰かさんと違ってこれから成長期ですから?」
「よしその喧嘩買った表出ろ!!」
「クラナさーん! リオさんがヒノのこと虐めようとしてますー!!」
「逃げんなヒノてめー!!」
小台風のような二人のやり取りを呆気に取られて見送ったルディは未だベッドサイドに転がったままのリーヤを上から覗き込んだ。文句のひとつも出ないのがそろそろ心配になる。
「……リーヤ、生きてる?」
「…………まだ生きてる……」